720.コロシアム村、拡張。
夜になって、俺は予定通り『コロシアム村』の拡張工事をした。
『コロシアム村』は四角い形に作ってあるのだが、それをさらに縦横に大きく広げた四角形に拡張したのだ。
北は、マナゾン大河に注ぐ支流近くまで伸ばし、南は『セイセイの街』へと続く街道と隣接するところまで伸ばした。
東西も長く引き伸ばした。
それによってできたスペースに、いろいろなエリアを配置した。
まずはニアに頼まれた『赤リスザル』たちの生息地となる森を作った。
これは、この近くにある本来の『赤リスザル』の生息地を、俺の『固有スキル』の『絶対収納空間』の『データ収納』コマンドでコピーして、貼り付けたものである。
それから、北側の支流から水を引き込み小さな川を作った。
そしてその先には大きめの池を作ったのである。
この池も近くにあったものを『絶対収納空間』の『データ収納』コマンドでコピーして、貼り付けたものだ。
もちろんコピーで復元できるのは環境だけであって、魂のある生物はコピーできない。
魚たちは、後で捕まえてくればいいだろう。
人々が、釣りを楽しめる場所にしても良いと思っている。
小さな小舟で、恋人たちがデートをするスポットにしてもいいかもしれない。
広大な農地も作った。
農業用水に使える溜池と、養殖用の池もいくつか作った。
『絶対収納空間』の『データ収納』コマンドを使えば、果樹園や水田や畑もデータコピーして貼り付けることができる。
このスキルを使うと、あっという間に街づくりができてしまうのだ。
家などの建物は今まで通り、家魔法を使えば、これまたあっという間に作れてしまう。
なにか……都市づくり系のシミュレーションゲームをやっている感覚で、サクサクできてしまう。
まさに建設チートなのだ!
今回は果樹園を、少しだけ貼り付けておいた。
水田や畑も含めいろいろ貼り付けることはできたが、見た人が驚愕してしまうから、今回はあまり目立たないように、小さめの果樹園を少し貼り付けた程度に自重したのだ。
そもそも、畑を管理する人材もまだいないからね。
もっとも、人目を気にしなければ、畑や水田、果樹園を管理する人間がいなくても育っちゃうんだけどね。
維持管理は、仲間の『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』『猿軍団』たちに頼むこともできるし。
これらを作りながら思ったが、『コロシアム村』は格闘技の殿堂にしようと思っていたが、レジャースポットのようなかたちにしてもいいかもしれない。
周りに綺麗なお花畑などを作ったりして、格闘技で熱く盛り上がりつつも、綺麗な風景で心癒される場所というのもありかもしれない。
まぁあくまでメインは、格闘技だが。
俺は最後に、外壁を作って周囲を囲んだ。
この外壁は、土魔法系の巻物『土壁瞬造』を使って作った。
この巻物は、今までも何度か使っているが、本来的には戦闘のときの小さな戦闘陣地の壁を作るものである。
それを、俺が魔力調整できずに膨大な魔力を流し、巨大な壁ができたというのが始まりだった。
今では、ある程度魔力調整できるようになったので、大体思った通りの大きさの壁が作れるようになったのだ。
この巻物を使わない場合でも、大森林の仲間の『マナ・ホワイト・アント』たちや『土使い』のエリンさんに頼めば、作ることができる。
ただ、多少の時間は必要になるので、壁を作るだけなら俺が巻物を使った方が早いのだ。
外壁の上の巡回通路、戦闘時の陣地、見張り台、休憩所、その他壁内の小部屋、階段などの細かい造作は、この巻物ではできない。
そこで、これらについては『マナ・ホワイト・ アント』たちに来てもらって、加工してもらうことにした。
壁を分厚く作ったので、中をくりぬいて小部屋やある程度の空間を作ることができるのだ。
今のところ使い道はないのだが、大体のイメージ図を作って、あとは『マナ・ホワイト・アント』たちに好きなように作って良いと指示をしておいた。
彼らは、久々の出番に、めっちゃやる気になっていた。
全員集合状態で大量に来てくれたので、夜が明けるまでにはできるだろう。
朝になったら、巨大な外壁が出現しているので、人々がかなり驚くだろうが、いつものように妖精女神の御業で誤魔化そう。
それから……『コロシアム村』の地下には、避難シェルターが作ってあるが、それはただの空間ではなく、地上の『コロシアム村』がそっくりそのまま地下にもあるという構造になっているのだ。
地下シェルターを作るときに、ある程度の深さのところに巨大な空間を作って、そこに地上に作った『コロシアム村』の建物と同じものを作ってしまったのだ。
『正義の爪痕』の襲撃があったときに、人々をこの避難シェルターに誘導する予定でいた。
現にそうしかけたのだが、途中で『死人魔物』や『魔物人』になる人が出てしまったので、誘導するのを中止したのだった。
そしてプランBに変更して、地上の避難エリアの公園に誘導することにしたのだ。
結局、この地下シェルターは使わずじまいで終わってしまった。
今後使う予定もない……そのままにしておくしかないだろう。
実は、この地下街を作るのに、かなりの工夫をしたのである。
一番の問題は、光の問題だった。
地上の光を転送する技術はないので、魔法のランプを各所に配置するというかたちをとった。
そしてこれとは別に、光を発して照明がわりになるものがあるという話を聞いて、それを探し出して設置したのである。
その情報をもたらしてくれたのは、『ドワーフ』のミネちゃんだった。
『ヒカリダケ』『ヒカリゴケ』『ヒカリシダ』というものがあって、地下の空間に植えても、蛍のように光を発し、周囲が明るくなるというのだ。
昼間のような明るさとはいかないが、明け方くらいの柔らかな光の空間になるとのことだった。
それを聞いて、ニアも思い出したらしく、家の中の照明として取り入れている妖精族もいると聞いたことがあったそうだ。
柔らかく暖かい光で、癒しの空間になると言われていたそうだ。
だが珍しいもので、なかなか発見できないらしい。
ミネちゃんたち『ドワーフ』の『ノームド氏族』は、その生息している場所を知っているとのことだった。
そして教えてくれたのだ。
俺はすぐにその場所に行った。
その場所は、ピグシード辺境伯領の北にある不可侵領域の更に北にある魔物の領域と化している山脈の西の端の山の中腹にあった。
この山脈の東の端の方には、『ミノタウロスの小迷宮』があるのだ。
その森は、『白夜の森』と呼ばれている森だった。
魔物の領域の中であるにもかかわらず、魔物がいなかった。
出向いたのは日中だったが、それでもキノコや苔やシダが光っているのがわかり、かなり幻想的な空間だった。
夜になったら、もっと綺麗だろうと思いつつも、時間がなかったので必要な分だけ取ってすぐに帰ってきてしまった。
それを地下街の何カ所かに植えたのだ。
暗いところだと、やはりかなり幻想的で綺麗な光だった。
ミネちゃんの話では、うまくいけばここで増えてくれるかもしれないとのことだった。
もし本当に増えてくれれば、この地下街は魔法のランプを使わずに『ヒカリダケ』『ヒカリゴケ』『ヒカリシダ』だけで照らせる幻想空間になるかもしれない。
それからニアが言っていたが、『白夜の森のお姫様』という童話があるらしく、『白夜の森』は、もしかしたらその舞台かもしれないと言っていた。
いずれにしろ、落ち着いたら夜の時間で、もう一度訪れたいと思っている。
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