719.全力で囲い込む、スタイル!
他にも、マリナ騎士団長が興味を示した事業があった。
それは、意外にもサルベージ事業だった。
セイバーン公爵領の近海だけでも、数多くの船が沈没しているので、沈没船を引き上げることができるのなら、お宝を発見できるかもしれないということだった。
古い時代の沈没船などで、状態維持機能のある魔法の宝箱に入っているお宝があるかもしれないというのだ。
そういうレアな物が引き上げられなかったにしても、普通の沈没船の積み荷でも、金貨などの硬貨は使えるから、かなり面白いだろうとのことだった。
そして、沈没船が多くあるだろうと思われるスポットを教えてくれた。
話を聞いて、俺もワクワクしてきてしまった。
やっぱり俺は、サルベージが大好きなのだ。
今回は、川イルカのキューちゃんたちに頼まなくても、ジョージが仲間にしたカジキの浄魔たちに頼んで、見つけてもらえばいいだろう。
かなりの金貨が手に入るんじゃないだろうか!
なにげにサルベージ事業が、一番の高収益事業だったりするのだ!
あと、マリナ騎士団長が興味を示したというか、頼まれたのが精肉事業本部の『フェアリー食肉』を全市町に展開してほしいということだった。
魔物肉の買取を頼みたいというのだ。
セイバーン公爵領内のどこの市町でも、肉は不足気味らしい。
その対策も兼ねて、ピグシード辺境伯領で実施している衛兵の訓練を兼ねた魔物狩りを、セイバーン公爵領でも本格的に実施しようと思っているのだそうだ。
ただ、衛兵隊や正規軍で魔物狩りをするのはいいが、その肉も販売まで行うのは、やはり大変だとのことだ。
そこで、狩った魔物の肉を買い取りを『フェアリー商会』に頼みたいというのだ。
セイバーン公爵領の各市町には、肉を扱う店はいくらでもあると思うので、『フェアリー商会』が買取センターをやらなくてもいいと思うのだが……。
一応そんな話をしてみたが……小さな店だとすべては買い取ってくれないので、何軒かの店を回らなければならないということが想定されるそうなのだ。
それも面倒くさいので、まとめて全量買い取ってくれる大きな買取センターを作ってほしいと頼まれてしまった。
なにか……いいように使われている気がしないでもないが……まぁいろいろ助けてもらっているし、そもそも狩った魔物肉を一括で売ってもらえるのは、ビジネスとしてはありがたいから、文句は無い。
ということで、俺は快く了承した。
それからもう一つ、できれば『フェアリー商会』でやっている乗合馬車事業や長距離乗合馬車事業もセイバーン公爵領内で展開してもらいたいとのことだった。
もしやってくれるなら、人と物の動きがより活発になるので助かるとのことだった。
この事業については、珍しく事実上の強制ではなくお願いベースで頼まれてしまったのだ。
おそらくマリナ騎士団長は、この事業をやるには相当な負担があることと、それに見合うほどの収益が上がらないことを理解しているのだろう。
やっぱりこの人……めっちゃ商売のセンスがあるようだ。
市町の中で乗合馬車を運行するのは、それほど大変ではないのだが、各市町間を運行する長距離乗合馬車は結構大変なのだ。
御者や添乗員に、腕利きの人材を用意しないといけないからね。
セイバーン公爵領は他の所に比べて、はるかに治安は良いみたいだが、それでも突然魔物に遭遇する可能性もあるし、ある程度の危険があるのだ。
これも人材の確保がうまくできれば、やるという話にしておいた。
あとマリナ騎士団長とユーフェミア公爵の二人が指摘してくれたのは、食べ物に関係する事業は、基本的にお店を出すだけで大成功するだろうということだった。
それだけで巨万の富が築けると太鼓判を押されてしまった。
『フェアリー商会』の提供する食べ物や飲み物は、どれも美味しいので、出店すれば必ずヒットするし、人口が多いというだけで数が売れるので、爆発的に儲かるはずだと言われてしまった。
だから食品の販売や飲食物の提供に関する事業は、何の心配もいらないし、努力もいらないだろうとまで言われた。
考えるとすれば……各市町に一店舗とかではなく、人々が利用しやすいように、何店舗も出店するという出店戦略だろうとアドバイスされてしまった。
俺の元いた世界では、多店舗展開にこだわると、不採算店舗が増えたり、店同士でお客さんを食い合ったりして、行き詰まってしまうという事例を結構あった。
だから、無闇に店舗数を増やしたくないと思っているのだが……。
まぁそこだけ気をつけて、やれる範囲で増やしていけばいいんだろうけどね。
それから『フェアリー商会』のアパレルブランド『フェアクオ』についても、間違いなくヒットすると言われた。
衣類を販売しているお店はかなりあるわけだが、デザイン性の良い服でかつ価格もリーズナブルなら、絶対に売れると女性陣がみんなで言ってくれたのだ。
そして貴族向けの高級な服のブランドも、ぜひ作った方がいいとアドバイスしてくれた。
特にピグシード辺境伯領の『ナンネの街』で飼育している虫馬『シルクキャタピラー』が吐き出す『レインボーシルク』は、幻の素材で実に美しいので、高くても貴族が絶対に購入すると貴族女子たちが力説してくれた。
王妃殿下に至っては、「王都の貴族の分は、私が売ってあげてもよくってよ」とまで言ってくれた。
さすがにそういうわけにはいかないので、頼まなかったけどね。
ただかなり目が真剣で、ヒュドラ肉の販売と同じように自分が仲介すると宣言してしまっていた。
なんか……そういうことになりそうな気がする。
まぁいいけどさ。
そして最後に、マリナ騎士団長とユーフェミア公爵が相談して、『フェアリー商会』がセイバーン公爵領への進出を早めるために、領として支援する体制を作ると言われてしまった。
完全に囲いこまれている感じだが……この二人……全力で囲い込んでいくスタイルらしい……。
一商会に肩入れしていいのかと改めて思ってしまったが、産業育成の為の誘致ということで、問題ないということなのだろう。
新しく産業振興執務官という役職を置いて、領内の新しい産業の育成を図る役割を担わせるらしい。
ただ話を聞く限り……それは名目上の話で、事実上、『フェアリー商会』のサポート要員だと思う……。
なんでもアリなのか、この領は……まぁありがたいから、いいけどさ。
産業振興執務官になる予定者は、既に決めているようで、なるべく早めに紹介すると言われた。
ここまでやられると……なるべくこじんまりやろうとか、手を広げすぎないように地道にやろうとか、という俺の発想は、木っ端微塵なのである……。
まぁ『アメイジングシルキー』のサーヤと、『アラクネーロード』のケニーと、俺の『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーが楽しそうだからいいけどね。
そして表立って発言はできないけど、ハナシルリちゃんもめっちゃ乗り気だ。
もう……この人たちに丸投げするしかないだろう……好きなように、やってもらおう。
てか……今までも、ほとんど丸投げだったけどね。
俺は、『魚使い』のジョージと一緒に、のんびりサルベージでもやるかなぁ……。
サルベージとかで、宝物をゲットするのが一番楽しいんだよね。
決して、現実逃避をしているわけではない……楽しいことをするというだけの話なのだ……そこのところは、よろしくご理解いただきたい。オホン。
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