708.過保護な、コウリュウ様。
長くなってしまった午前のミーティングを、今度こそ終えようと思ったタイミングで……『ライジングカープ』のキンちゃんがやってきた。
何やらまた長くなりそうな予感が……。
『ライジングカープ』のキンちゃんは、コウリュウ様のお陰で手に入れた『サイズ変更』スキルで、こいのぼりサイズから錦鯉サイズになっているので、自由に動き回れるんだよね。
「あー、皆さん、皆さん、ちょっといいかし? 心配性なコウリュウ様が、今後のことで話をしたいって言ってるし。コウリュウ様ってば、意外に過保護だし。えー、今回は怒られる前に代わるし。ちょっと待つだし…………愛しき子らよ。あなたたちに、悪魔について伝えておかねばなりません。前に話した通り、悪魔が動き出しています。これからは悪魔の存在に、注意を払いなさい。表立って現れるときはもちろんですが、影に潜んでいる可能性を常に考えなければなりません。我々神に類する者……神類は、直接関わることができません。後押しするのみです。その後押しが出来るのも、今回のように、上級悪魔、貴族悪魔、悪魔王、魔王が関わっている時に限定されています。その場合でも、直接戦うことは許されていないのです。それは、この世界が……『魂が多様な体験をする場』として作られているからなのです。その体験の中には、善も悪も含まれているのです。ただ圧倒的な悪に染まった世界は、もはや多様性を維持できないので、その偏りを正すために間接的に介入するだけなのです。すべては、『魂の多様な体験の場』を守るためなのです。今回の一連の襲撃の中で、隕石群の落下や伝説の魔物『イビル・アーマークラゲ』の出現は、おそらく悪魔の手配でしょう。人々を守り、多様性を守り、この世界を維持する為に、もう少しだけ私の力を貸しましょう……」
コウリュウ様はそう言って、話を続けた。
それを要約すると……
一つ目は、『神獣の巫女』たちが『職業固有スキル』としてそれぞれ身に付けている『念術』系のスキルについてであった。
『コウリュウの巫女』である第一王女のクリスティアさんには『治癒術』、『セイリュウの巫女』であるセイバーン公爵家長女のシャリアさんには『幻術』、『ビャッコの巫女』であるビャクライン公爵家長女のハナシルリちゃんには『強化術』、『スザクの巫女』であるスザリオン公爵家長女のミアカーナさんには『舞空術』、『ゲンブの巫女』であるゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃんには『結界術』が身についている。
これらは『神獣の巫女』の『職業固有スキル』として身に付いたものだが、『通常スキル』のレアスキルとしても存在するものなのだそうだ。
そして『神獣の巫女』の『職業固有スキル』として発現した場合には、『指導伝播型』の性質を帯び、巫女の指導教育によって、『通常スキル』として身に付けさせることが可能になるのだそうだ。
普通のスキル習得に比べて、かなりの高確率でスキルが身に付くらしい。
これは、極めて重要な意味を持っているので、意識して活用し、戦える力を養成しなさいと言われた。
確かに、その通りだと思う。
『通常スキル』といっても、レアスキルでほとんど身に付けることができないスキルを、巫女による指導を受けるだけで、かなりの確率で習得できたら、確かに凄いことなのだ。
クリスティアさんの『治癒術』は、怪我の治療や解毒ができるスキルである。
技コマンドの一つである『自動回復』を使うと、『基本ステータス』の『身体力(HP)』『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』の各数値が減少した場合に、即座に回復することもできる。
シャリアさんの『幻術』は、自分の幻影を出現させ敵を惑わせるというスキルである。
スキルレベルが1でも、三体の幻影を出すことができるらしい。
ハナシルリちゃんの『強化術』は、『基本ステータス』の『身体力(HP)』『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』と『サブステータス』の『攻撃力』『防御力』『魔法攻撃力』『魔法防御力』『知力』『器用』『速度』の全ての数値を高めるというスキルである。
ミアカーナさんの『舞空術』は、空中に浮遊して、念の力で滑るように高速移動できるスキルである。
ドロシーちゃんの『結界術』は、物理耐性、魔法耐性の目に見えないエネルギー障壁を体の周りに展開するというスキルである。
これらのスキルを習得する人が増えたら、かなりの戦力になる。
もちろん悪い奴に習得されちゃ困るわけだけど。
そこは指導にあたるのが、『神獣の巫女』だから、変な奴は排除できるから問題ないだろう。
これらのスキルには、もう一つ大きな特徴がある。
『念術』系スキルの特徴である。
それは……スキルの発動に、強い念の練り上げが必要となる代わりに、『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』を消費しないという特別なスキルなのである。
魔力切れなどで追い込まれた場合でも、念じる力さえあれば発動できるという利点があるのだ。
スキルは、通常、『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』のいずれか、もしくは併せて、消費して発動する場合が多い。
その代わりに発動させるときの念も、思う程度の念で良く、また発動真言も唱えるだけで済むのだ。
これに対し『念術』系のスキルは、さらに強い念が必要で、意識して集中しなければならないらしい。
そして、発動真言を唱える場合も、強く念じながら唱える必要があるのだ。
だが、魔力切れなどで追い込まれたときに、念じる力だけで発動できるというのは、非常に大きいと思うんだよね。
いわゆる気合で何とかできるっていうことだからね。
それこそ少年漫画の主人公のように、最後の粘りからの大逆転ができる可能性があるわけだ。
そして、これらのスキルは、いずれも、一定時間効果が持続するスキルであり、自分に効果を及ぼすだけでなく、他者にかけることができるのである。
この特徴も非常に大きいのだ。
全員が身に付けていなくても、チームの中の誰かが身に付けていれば、自分以外の他のメンバーにもかけることができるのだ。
効果が及ぼせる人数は、スキルレベルによるらしいが、スキルレベル1でも数人にかけられるようだ。
この素晴らしいレアスキルが、『神獣の巫女』の指導で身につく可能性が高いという利点を、最大限に活かすべきだろう。
コウリュウ様は、それをわざわざ教えてくれたのだ。
ありがたいことだと思う。
指導を受ければ、スキルが発現しやすいということが明確にわかっているのだから、指導を受ける方もやりがいがあるよね。
今後の予定として、『神獣の巫女』と『化身獣』、『セイリュウ七本槍』と『セイリュウ騎士団』及びビャクライン公爵とシスコン三兄弟が、毎日、午前中の数時間、秘密基地『竜羽基地』に集まって訓練をすることになっていた。
この時に、一緒にこれらのスキルの訓練もすればいいだろう。
そう考えると、その訓練に俺の仲間たちも、できるだけ参加した方がいいかもしれない。
『絆』メンバーの誰かが身に付けてくれれば、『共有スキル』にセットすることもできるだろうからね。
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