表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

705/1442

696.性能、テスト。

 俺は『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんと、『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のカーミラさんとの話に夢中になっていて気がつかなかったが、夢中で宝石選びをしていたはずの女性陣は、俺とフミナさんたちとのやりとりに見入っていた。


 そりゃそうだよね。

 いきなり装飾品が話し出したんだからね。

 しかも聞き慣れない魔法AIの機械的な妙な話し方だったからね。


 そして『勇者武具シリーズ』なんて言葉が出たもんだから……脳筋もとい勇者好きな男性陣まで、全力集中で俺たちの話を聞いていたようだ。


 もちろんニアさんを始めとした仲間たちや、子供たちもだ。


 女性陣は、ハートの形のペンダントである『魔具 ラブオーナメント』に、興味津々のようだ。

 九人の勇者の一人『愛の勇者』が使っていたもので、『勇者武具シリーズ』中、最強との呼び声が高たったというアイテムだ。


 そしてビャクライン公爵と愉快な脳筋たちを中心とした男性陣は、『突撃の勇者』が使っていたという『魔槍 フタマタ』に憧憬の念を抱いているようだ。

 眼差しが、そう語っている。


 この無言のプレッシャーはなんだろう……。

 じりじりと伝わってくる期待感というか……

 みんな……実際使って見せてほしいってことかな……?


 ここは……実際使って見せてあげるべきだろうか……?

 そうだな……そうしないと収まらないよね。


 やむを得ない……やるか!


 まずは『魔槍 フタマタ』からだ。

 バトル大好きな男たちの視線が、槍を中心に俺にまでまとわりついているからね……。


「それでは皆さん、今回発見した武具を使ってみたいと思います。まずは『突撃の勇者』が使っていたという槍を試しますが、相手をしていただける方いますか?」


 俺がそう提案すると、みんな笑顔になって、一瞬で沸き上がった。


「シンオベロン卿、それは私に任せたまえ!」


 やはり最初に名乗り出たのは、脳筋大将ビャクライン公爵だった。


「ではお願いします。皆さん中庭に出ましょう!」


 俺は皆に声をかけて、中庭に移動した。


「私がこの槍に、アナレオナ夫人を守るように指示しますので、攻撃を加えてみてください」


「あいわかった!」


 ビャクライン公爵は、大剣を構えた。


 俺は、白銀色に煌く『魔槍 フタマタ』を水平に手のひらに乗せた。


「ともに踊れ!」


 俺の発した発動真言(コマンドワード)と同時に、白銀の槍は宙に浮いた!

 そして、縦二つに分裂した!

 二股だった穂先は、それぞれ湾曲気味の一つの穂先になっている。

 そして穂先を正面に向けたかたちで、浮いている。


「アナレオナ夫人を守れ!」


 俺がそう命じると、空中を移動しアナレオナ夫人の前に位置した。

 二本の槍は、そのまま踊るように小刻みに揺れながら、宙に浮いている。


『魔盾 千手盾』の時と同じで、魔法AIが周囲の状況を把握し、個人の識別もしているらしく、アナレオナ夫人を認識し、迷うことなく夫人の前に位置したのだ。


 その状況を確認し、ビャクライン公爵は攻撃を開始した!


 大剣を大上段から振り下ろしたのだ!


 ——バンッ、ズンッ


 これを二本の槍は、互いにクロスするような形で受け止め、そのまま横に薙ぎ払った!


 あのビャクライン公爵の力のこもった斬撃を槍だけの力で受け止め、薙ぎ払うなんて……。

 これだけ見ても、凄い性能なのがわかる。


 そして今度は、一本がアナレオナ夫人を守るように正面に位置し、もう一本がビャクライン公爵に対して攻撃を仕掛けた。


 攻撃は最大の防御ということなのだろうか……?

 おそらく……それがこの状況の中で、魔法AIが算出した最適解なのだろう。


 千手盾と違ってフタマタは二本にしかならないから、守りに徹するのは厳しいかもしれない。

 そういう意味では、攻撃して敵を排除するというのは良い作戦だ。


 ——ガキンッ

 ——ガキンッ

 ——ガキンッ

 ——ザバンッ

 ——ザバンッ

 ——ザバンッ


 三連突きからの三連斬りが、ビャクライン公爵を襲った。

 公爵は全て受け流していたが、少し焦ったような顔をしていた。

 かなり鋭い攻撃だ。


 俺は『魔槍 フタマタ』に防衛行動を解除するように指示し、元の状態に戻した。


「さすが古代文明の遺品だ……。油断してたら危ないところだったよ。十分戦力になりそうだ! この槍も、シンオベロン卿の下に集まった『集いし力』なのだろう」


 ビャクライン公爵は、満足そうに頷きながらそう言った。


「ありがとうございました。性能を確かめることができ、助かりました」


 俺は礼を言って、タオルを渡した。


 次は『魔具 ラブオーナメント』だ。


 今度は、ビャクライン公爵一家にお供している近衛兵の一人に協力してもらうことにした。


 ハナシルリちゃんに向かって、パンチで攻撃してもらうことにした。


 俺は、ピンクに輝く可愛いペンダント『魔具 ラブオーナメント』を首から下げた。

 正直、微妙だ……。

 いくら十八歳に若返っているとはいえ、男の俺がつけているのは、我ながら微妙なのだ……。

 そんなやるせない気持ちは一旦置いといて……さぁ始めよう!


「ラブリー起動! ハナシルリちゃんを守れ! 『無償の愛』発動!」


 俺がそう命じると、ピンクのハート型ペンダントトップが、一瞬柔らかな光を発した。


「イエスマスター、セルフオペレーションスタート! アクティベート『無償の愛』!」


 ラブリーは、機械音声らしく無感情に言葉を発すると、ペンダントトップを分離させてハナシルリちゃんの前に急行した。

 そしてハナシルリちゃんの前で停止すると、一瞬強く輝いた。

 おそらく『物理反射』『魔法反射』の障壁のようなものを張ったのだろう。


 俺は近衛兵に目配せして、攻撃を仕掛けてもらった。


 近衛兵がハナシルリちゃんに向かって、パンチを浴びせかける。


 ——バウンッ


 近衛兵のパンチは、途中で目に見えない壁のようなものに遮られ、それとほぼ同時にパンチの威力が反射してきたようで、後ろに飛ばされた。


 近衛兵は、首を振りながら微妙な顔をしている。


 おそらく不思議な感触だったのだろう。

 当たった瞬間に、その衝撃が自分に跳ね返るっていうのは、なかなか体験できない感触だからね。


 目に見えない反射シールドが確実に機能しているようだ。


 今度は、魔法のテストだ。


 ここは魔力調整の超天才児、俺の愛するリリイちゃんに登場してもらうことにした。

 魔力調整で威力を最小限にしてもらった『火魔法——火弾(ファイアショット)』を放ってもらうのだ。


 リリイは早速構えているが、ニアが飛んでいって、何やら耳打ちしている。


 ニアが少し悪い顔をしているが……。

 まぁ相手はハナシルリちゃんだし、変な事はしないだろう。


火弾(ファイアショット)!」


 リリイの指先から、ピンポン玉くらいの火の玉が発射された!


 やはりハナシルリちゃんに近くなったところで弾かれて、リリイに向かってきた。

 ダイレクトに反射して帰ってきているので、物理攻撃の場合と違ってわかりやすい。


 そしてリリイの前にはなんと、突然、ニアが現れた!

跳躍移動(テレポーテーション)』を使ったようだ。

 次の瞬間には、ニアが『如意輪棒』をフルスイングしていた!


 ——カキーンッ


 …………………………パンッ


 魔法反射によって弾かれた火弾(ファイアショット)は、ニアのピクシーホームランよって空高く舞い上がり、花火のように弾けたのだった……なんのこっちゃ!


 てか……何をやってるわけ!?

 遊んじゃってるわけ?

 夜じゃないから、たいして綺麗に見えないから!

 そしてなぜかみんな……パチパチ拍手してるし……。


 まぁ発想自体は面白かったから、いいけどさ……。



 ニアの余興はともかくとして、この『魔具 ラブオーナメント』は、やはりとてつもなく使えるアイテムだったようだ。


 俺は、ラブリーに命じて防御態勢を解いて、元の状態に戻した。



 このアイテムに一つだけ問題があるとすれば……可愛いピンクのハート型ペンダントを俺がつけるのは、微妙すぎるということだ……。


 多分、俺がラブリーに命じて誰かに身に付けさせるということもできると思うが……人選が難しい。


 普通に考えれば、わずか四歳児にして『神獣の巫女』になったハナシルリちゃんが有力候補だが……。

 彼女は、俺の『絆』メンバーなので『共有スキル』も使える。

 実は、他の『神獣の巫女』よりも、防御面でははるかに充実しているのだ。


 やはり『魔槍 フタマタ』と同様に、俺が持っていて、必要な時に誰かを守らせるという使い方にするのが、現時点では最善のようだ。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。


次話の投稿は、16日の予定です。


もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ