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675.移動型ダンジョンの、特殊性。

『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんの知識によって、あの空飛ぶ巨大ヤドカリこと移動型ダンジョン『シェルター迷宮』についても、少しわかったことがある。


『シェルター迷宮』は、成り行き上、俺がダンジョンマスターになっている。

 稼働できるようになった迷宮管理システムに命じて、元々の存在場所に戻ってもらっている。


 今は、そこで特別な復旧モードを行っているはずだ。


 元の場所は、セイバーン公爵領とピグシード辺境伯領の領境にもなっている竜羽山脈の東の端だ。


 近くに棲息している飛竜たちから、無事に元あった場所に戻ったとの念話も入っている。


 特別な復旧モードが終わったら、迷宮管理システムから俺に念話がくることになっている。

 連絡が来次第、調査に行こうと思っている。



 フミナさんが、『マシマグナ第四帝国』の技術者から聞いた知識によれば……


 そもそも人造迷宮は、各種の迷宮機能の維持や魔物の生産で大量の魔素を消費するらしい。

 それ故に、魔素の濃い場所を探して作られたのだそうだ。


 あの空飛ぶヤドカリこと移動型ダンジョン『シェルター迷宮』は、初の移動型ダンジョンとして、魔素を大量に蓄える機能を有しているらしい。


 魔素の濃いエリアを検出し、そこに着陸して魔素を吸い上げることができるとのことだ。

 そして、それを大量に蓄えて移動するということだろう。


 大量に魔素を吸収された場所は、一時的に魔素の濃度が薄くなり、魔物化する生物も減ることになる。

 これによって、人々に被害を与える魔物の数を減らす効果も期待されていたようだ。


 魔素の濃いエリアは、元々魔素が集まってくるところなので、一時的に減っても時間が経てば戻る。

 だが、その減っている間は、魔物化する生物の数が減るから安全性は高まるわけだ。


 『シェルター迷宮』にはもう一つ機能があって、魔素の蓄えが切れた場合の代替エネルギー供給システムがあるそうだ。

 大量の『魔芯核』を使って、エネルギーを作り出す装置が備えられているらしい。


 『魔芯核』は、魔素を大量に浴びることで魔物に変容した生物の心臓の近くに生成されるものである。

 魔法道具を動かす燃料になったり、魔法道具や魔法薬を作る素材になったりするというもので、俺の中では原油とレアメタルを合わせたようなものというイメージだ。


『魔芯核』とは、おそらく魔素が結晶化したようなものだろう。

 そうだとすれば、それをエネルギーとして使えるのは当然なのかもしれない。


 『魔芯核』が魔法道具を動かすエネルギー源になったり、魔法道具や魔法薬を作る素材になったりするのは、おそらく魔素の働きなのではないだろうか。


 魔素が、魔法的なエネルギーのようなものの素というか最小単位で、その魔素が集まって流れるエネルギーになっているのが、魔力なのではないだろうか。

 そして、魔素が結晶化したのが『魔芯核』ということなのではないだろうか。


 ふとそんなことを思いついてしまった。


 もしかしたら魔法って……魔素とその収束した流れである魔力に法則を与えて、変容させることなのかもしれない。

 本来無属性または全属性の魔素に、火になる法則のようなものを付与して、火の属性を帯びさせるとか……そういうことなのかもしれない。

 なんか考えていたら、楽しくなってきた。

 こういう勉強をしてみたいな……。

 大魔法使いとか大賢者とかが登場して、教えてくれないかな……。


 今まで深く考えたことがなかったが、今後機会があったら調べてみよう。



 もう一つ移動型ダンジョン特有の仕組みがあるようだ。


 それは、移動させる仕組みというかプロセスが決まっているらしい。

 ダンジョンマスターが指示し、迷宮管理システムと共同して行わなければならないという仕組みになっているとのことだ。


 強力な武器にもなり得る移動型ダンジョンを、適正に運用するための仕組みだろう。

 ダンジョンマスター以外では、動かすことができないわけだ。

 当然と言えば当然だが、大事なことではないだろうか。

 仮に帝国の皇帝が動かそうとしても、できないということだからね。


 そして実際に動かす場合も、迷宮管理システムと共同して操作をしなければならず、他者に脅されてるような場合は、共同作業を行わないようになっているらしい。

 迷宮管理システムは、ダンジョンマスターの状態を常に把握することになっているようだ。


 一種の安全装置のようなものだろう。


 今回は、俺は迷宮管理システムに元の場所に戻るように命じただけで、共同で操作したということではないが、俺の自由意志での指示が確認できたから、従ったということなのだろう。


 そしてそもそも、ダンジョンマスターの選定には厳しい条件があるようで、誰でもなれるということではないようだ。

 この条件については、フミナさんは知らないらしい。



 フミナさんの知っている知識としては、ここまでのようなのだ。


 フミナさんが亡くなった後、移動型ダンジョン『シェルター迷宮』に生体コアシステムが追加で導入されていたらしいのだ。


 フミナさんの推測では、当時問題になっていた『魔物人』を殲滅するために、当初の目的を変更して『シェルター迷宮』を稼働させる必要があったのだろうとのことだ。


 そしてダンジョンマスターが不在の場合の稼働方法として、生体コアシステムが取り入れられたのだろうとの推測だった。


 その当時『操縦型人工ゴーレム』をより自由に、人間のように稼働させるために、生体コアの研究が盛んに行われていたらしいのだ。


 より生物に近い動きができるように、操縦者の念をダイレクトに行動に変換したり、動きをトレースするというのが生体コア操縦システムらしい。


 これを『シェルター迷宮』に搭載し、ダンジョンマスター不在時の緊急操作方法としたのではないかとのことだ。


 だが一部の人間の暴走により、そのシステムが仇となってダンジョンマスターを未選出のまま、強制的に兵器として稼働させてしまったということなのかもしれない。


 その生体コアとして選ばれてしまったのが、『ホムンクルス』の幼女ニコちゃんなのだろう。


 フミナさんの話によれば、『ホムンクルス』は人族に比べてはるかに強靭な肉体を持っているので、負荷に耐えられるから選ばれたのだろうとのことだ。

 そして、使い捨ての駒とも考えられていたのだろうと言って、唇を噛み締めていた。

 生体コアシステムは、操縦者の動きをトレースするために感覚が拡張されているようで、攻撃を受けると生体コアにも反映され負荷がかかるらしいのだ。


 本来であれば、生体コアとなったニコちゃんの意思で動くはずが、悪魔のハッキングによってニコちゃんの意識は奪われたようだ。

 そして、生体コアシステムが稼働していると迷宮のプログラムに認識させるためだけの存在として、利用されていたのではないかとのことだ。





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次話の投稿は、25日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] >  大魔法使いとか大賢者とかが登場して、教えてくれないかな……。  もしくは大聖女がそのうち発生したりして。
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