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673.第四世代型、人造生命体。

 俺は、屋敷の客間の一室にきた。

 他の仲間たち、ユーフェミア公爵たち、『ビャクライン公爵と愉快な脳筋たち』は、まだ中庭で余興に興じているようだ。


 俺がここにやってきたのは、『魔盾 千手盾』が付喪神化したフミナさんと移動型ダンジョン『シェルター迷宮』の生体コアにされていたニコちゃんの様子を見るためだ。


 フミナさんは、約三千年前に滅んだとされている『マシマグナ第四帝国』の末期に活躍した『九人の勇者』の一人『守りの勇者』フミナ=センジュの残留思念が主人格となって顕現した存在である。

 『九人の勇者』の存在は、『魔法機械帝国と九人の勇者』という英雄譚として広く知られている。


 生体コアから救出して半日経つが、ニコちゃんはまだ目覚めていないようだ。


 顕現状態のフミナさんがつきっきりで、ニコちゃんの様子を見ているのだ。


「どうですか、まだ目覚めませんか?」


「はい、まだ目覚めてくれません。本当に大丈夫でしょうか?」


 フミナさんは、かなり心配そうだ。


「大丈夫と信じましょう。何もできないかもしれませんが、私も少し見てみます」


 俺はニコちゃんの側に行き、頭を撫でてあげる。


 リリイとチャッピーと同じくらいの歳に見える。

 銀髪ショートの可愛い女の子だ。


 改めて、この子のステータスを確認しておこう。


『種族』が『ホムンクルス』となっている。

『正義の爪痕』の首領だった少年と同じように、『人族』ではないようだ。


『ホムンクルス』に焦点を当てて、詳細と念じてみる……


 やはりこの子も、首領だった少年同様、『マシマグナ第四帝国製造 第四世代型人造生命体』と表示された。


 少し気になったので、フミナさんに尋ねてみた。


 それによると『ホムンクルス』とは、『マシマグナ第四帝国』が作り出した人造生命体ということだ。

 人造迷宮を作る過程で、『人造生命体 ホムンクルス』の生産技術を構築したらしい。

 それをもとに、魔物の生産にも成功したという人造迷宮の中核技術の一つだったようだ。


 その後、かなりの期間『ホムンクルス』の製造が中止されていたようだが、フミナさんがいた時代には、再開されていたらしい。

 生産技術を再構築して、一種の強化人間を目指して開発されていたそうだ。


 なんとなくクローン人間のようなものかと思って尋ねてみたが、純粋なクローン人間とは違うようだ。


 フミナさんが言うには、細胞培養とかで生み出された純粋なクローン人間ならば、『種族』はおそらく『人族』になるのではないかとのことだ。


 同じような技術が使われているようだが、その過程で特殊な細胞などが取り込まれているらしい。


 フミナさんはあまり詳しくないそうだが、知っている情報を伝えてくれた。


『ホムンクルス』製造の元々の目的は、『長命で、病気に強く、自己再生能力が高く、戦闘に強い』人間を作ることで、帝国が何百年か研究していたテーマだったらしい。

 だが世代を重ねるごとに目的が変容し、人間の代わりに戦わせるための兵士のような扱いになっていたようだ。

 身体的な能力を強化したり、魔法などが発現しやすくする為に、他の種族の細胞なども組み込んでいたのではないかとのことだ。


『第四世代型人造生命体』というのは、当時の最新型で、より人間に近い成長過程をとるように改良されたものらしい。


 第一世代型から第三世代型までは、クローン人間に非常に近かったようだ。

 細胞培養的な方法で、いきなり大人として誕生し、その外見も維持されるという性質だったらしい。

 ただし細胞の劣化が激しく、定期的なメンテナンスが必要という難点があったそうだ。


 そこで開発されたのが第四世代型で、赤ちゃんからというわけではないが比較的幼い子供の状態で誕生し、人間と同じように成長していくらしい。

 そして十五歳以降は、緩やかに年齢を重ねるという性質を目指して設計されたようだ。


 これによって大きな問題がなければ、メンテナンスをせずに普通の人族と変わらない生活ができる想定だったらしい。


 実際は『マシマグナ第四帝国』が滅びてしまったので、第四世代型が予定通りの性能で長生きするかということについては、検証できなかったということだろう。


 十五歳から歳の取り方が緩やかになるというのは、前に聞いた妖精族の歳の取り方と似ている。

 おそらく妖精族のそういう性質を再現しようとしたのだろう。


 特殊な培養層で生産され、五歳児くらいの外見で生まれてくるらしい。

 そうだとすると、ニコちゃんはリリイたちと同じくらいに見えるから、実際は三年ぐらい生きていたということなのだろうか。


『年齢』を確認すると、『三歳』となっていた。

 やはりそういうことだったようだ。


 そうすると……見た目は八歳児、中身は三歳児ということだろう。


『基本ステータス』の『年齢』のカウントの仕組みがよくわからないが、おそらくコールドスリープで生命活動を中断している間は、年齢としてカウントされないのだろう。


 ニコちゃんが生み出されてからの時間経過からすれば、三千三歳とかになると思うが、『年齢』の表示はあくまで『三歳』となっている。


 フミナさんは、あることがきっかけで、第四世代型と言われている『ホムンクルス』の子供たちと知り合いになったそうだ。

 そして、交流を続けていて、勇者としての役目が終わった後は、褒美としてその当時生き残っていたニト君とニコちゃんの二人を引き取ったのだそうだ。


 フミナさんが最初に出会ったときには、『ホムンクルス』の子供たちが十人くらいいたようだが、戦いに巻き込まれたりして、フミナさんが引き取るときには二人になっていたらしい。


 フミナさんが、当時『ホムンクルス』の子供たちについて、かなり心を痛めていた様子が見てとれる。


 彼女は、『ホムンクルス』の子供たちを守る為に、勇者としての役目が終わった後も、帝国に残ることを決めたのだそうだ。

 帝国に残った勇者は、フミナさんだけだったらしい。

 他の勇者は……命を落とした者もいれば、帝国を去って新天地を求めた者もいれば、元の世界に帰った者もいたようだ。


 フミナさんは、しばらくはニト君とニコちゃんと一緒に、平穏に暮らしていたらしい。


 だが、彼女を妬ましく思う者、『ホムンクルス』を利用しようする帝国の人間によって、陥れられ命を落としたようだ。


 ただ本人も、どういう過程で命を失ったのかという記憶がないらしい。


 ここまで聞いただけでも……彼女は俺など想像もつかない程の苦労や悲しみを経験したのだと思う。


『守りの勇者』フミナ=センジュの魂自体は、成仏して輪廻の輪に戻れているらしいので、転生して新たな人生を得たのではないだろうか。

 新たな人生が、幸せで満たされたものであったように祈りたい。


 そして、彼女の記憶を引き継いで『付喪神 スピリット・シールド』となったフミナさんについては、この世界でこれから幸せになってほしいと思う。


 その手助けを、全力でしたいと思っている。

 彼女は、俺の『眷属』にもなっているしね。


 前にも思ったが『魔盾 千手盾』の付喪神は他には存在しようがないわけだから、一人種族みたいなものだと思う。

 それなのに、なぜ『眷属』となっているのか不思議だ。


 これも考えても答えは出ないので、考えるのはやめよう。


 フミナさんには、辛いことも思い出させているようで申し訳ないが、もう少しだけ訊いておこうと思う。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、23日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] > クローン人間に非常に近かたったようだ。 → クローン人間に非常に近かったようだ。 [一言] > 『ビャクライン公爵と愉快な脳筋たち』  愉快な脳筋(ビャクライン公爵含む)
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