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66.蛇の、願い。

3人称視点です。

『マナ・デスサイズ・マンティス』のカママたちが、『赤の下級悪魔』の牽制をしている間に、ウルルとギンロで一体ずつ各個撃破する狙い通り、 二体が連携して『赤の下級悪魔』を襲う。


 一対一の戦いならば、ウルルやギンロの力をもってすれば十分勝てる戦いだが、スピード決着のため、敢えて二体で連携して一体を仕留める。


 ウルルは種族固有スキル『剣牙』の鋭く伸長した牙を使い、深く噛み付き、その隙を突かれないようにギンロが種族固有スキル『銀狼鎧(ウルフアーマー)』で攻撃を受け止める。

 二体合わせて攻防一体となる連携攻撃であった。


 種族固有スキル『銀狼鎧(ウルフアーマー)』は、銀色の体毛を強固な全身鎧に変化させるもので、抜群の防御力を誇る技であった。


 この鎧は、何箇所か鋭利に突き出した部分があり、そこを使っての切り裂き技もできる攻撃を兼ねた装備でもあった。


 ギンロを殴りつける『赤の悪魔』は、逆に、拳から黒い血を噴きだす。


 この二体のコンビネーションは、既に熟練の域に達していた。


 これは、主人グリムの『絆』スキルに、新たに発生したサブコマンド『飲みニケーション』の効果も大きく影響していたのだった。

 彼らのように、抜群の連携を発揮する仲間たちが相次ぐことになる。




 カママたちは、『赤の下級悪魔』の数がある程度減った時点で、一体の『赤の悪魔』に対して、三体の連携で迫るフォーメーションをとっていた。


 種族固有スキル『死神の鎌(デスサイズ)』を発動すると、両手の鎌が二倍以上の長さに伸びる。

 この鎌は、振り下ろすだけで、空気を切り裂き、衝撃波を相手に飛ばすほどの威力を持っていた。


 多少格上の相手といえど、三対一では負ける理由はなかった。


『赤の下級悪魔』たちは、手足や胴体を切り刻まれ、靄となって次々に消えていった。


 そして当初、劣勢だった戦いは瞬く間に盛り返し、一気に『赤の下級悪魔』を殲滅してしまっていたのだった。





  ◇




 ケニーは焦っていた。


 最終防衛エリアに到達した悪魔たちを糸による攻撃と、飛行型コカトリスたちの攻撃で、半数ほどは地上に引きずり落とした。


 だが、残りをそのまま行かせてしまったのだ。

 予想以上のスピードで、すべては止めきれなかったのだ。


 ケニーは、自身の攻撃を気に止めぬ姿勢と一直線の加速からして、やはり敵の狙いは迷宮であると確信せざるを得なかった。


 だが、こうなっては迷宮前に残してきた仲間たちを信じることしかできない。


 ケニーにできることは、目の前にいる悪魔たちを早々に片付けて、応援に向かい背後から挟撃する。

 それのみだった。


 このことは、ケニーの直属部隊である『マナ・ジャンピング・スパイダー』たちや『コカトリス』たちも即座に理解していた。


 そしてすぐに動き出す……。


 地上に落とすことができたのは、カラスから変化した『緑の下級悪魔』が三十体と『赤の下級悪魔』二十体であった。


 そして、その悪魔たちが運んでいた大きな箱が二つあった。


 落下の衝撃で壊れたその箱から出てきたもの………


 それを見たケニーは、衝撃を受ける。


『ミノタウロス』と『キマイラ』だった。


 彼らは、いずれも『オリジン』と呼ばれる強力な魔物である。


『ミノタウロス』がレベル45、『キマイラ』がレベル50であった。

 ケニーとほぼ同格の『オリジン』である。


 いかにケニーが強くても、一度に二体を相手にするのは危険である。


 そこで『マナ・ジャンピング・スパイダー』三体に『ミノタウロス』の相手を任せ、自分は『キマイラ』を担当することにする。


 この厳しい状況の中にあっても、ケニーは相手が『オリジン』である以上、殺すのではなく無力化して、仲間にする方針で臨む。


 これは彼女の“あるじ殿”であるグリムが明確に指示したわけでは無いのだが、彼女の中では既定事項であった。


『キマイラ』は、ライオンの頭と前足、ヤギの胴体と後足を持つ。

 ライオン頭のすぐ後には、首が長く伸びたヤギの頭がついていた。

 そして、尻尾は蛇という三つの生物が合成された魔物であった。

 体長も優に三メートルを超える巨体である。


 ケニーは、異様なオーラに気づく。

 ライオン頭もヤギ頭も、目が尋常ではない。

 暴走状態寸前の異常さである。


 以前『コカトリス』たちに対峙した時よりもさらにひどい感じだった。

 ケニーは、ライオンの首とヤギの首に怪しげな首輪が付いていることに目を止める。


 この『キマイラ』はケニーといえども、簡単に拘束できるような相手ではなかった。


 動きが素早いうえに力が強く、前足は強力な爪を持っている。


 絡みついた糸をその爪で切断してしまうのだ。


 切断される前に二重三重に糸を強化するしかないのだが、その隙を与えてもらえない……


 そして、ライオンの口からは“火炎ブレス”を吐き、ヤギの口からは“氷結ブレス”を吐くという厄介な攻撃も持っていた。


 一進一退の攻防が続く………


 ……ケニーは、かすかな違和感を感じる……


 戦ううちに、違和感の正体に気づく………

 尻尾の大蛇からは、一切の攻撃がないのだ………


「俺たちは、操られているだけだ。首輪の力で自由意思を奪われている。貴殿に頼むのは筋違いと思うが、できれば助けてもらえぬか」


 大蛇の違和感に気づいたのを見計らったかのように、当の大蛇が話しかけてくる。

 さらに続ける………


「俺の力だけでは、どうにもできない。この『支配の首輪』さえ破壊できれば良いのだが………簡単には破壊できぬのだ………」


「あいわかった。もとより殺すつもりはない。殺すつもりならもっと違う戦い方がある。拘束するゆえ安心して見ていなさい」


 すべてに合点が行ったケニーは、顔色一つ変えずに答える。


「アラクネ殿、かたじけない。多少の援護はできる。よろしくお願いする」


 ケニーは、改めて戦う構えをとる………





『ミノタウロス』は、すごい勢いで暴れている。

 やはり怪しげな首輪が付いている。


 ボディービルダーのような筋肉を躍動させ、巻き付く『マナ・ジャンピング・スパイダー』たちの糸を、事もなげに振り回す。


 気をつけなければ、糸を巻き付けた『マナ・ジャンピング・スパイダー』たちの方が、逆に引きずられるほどの腕力だった。


 そして『ミノタウロス』は、突然、空間に現れた両刃の大斧を持つと、糸を切り裂きそのまま襲いかかってくる。

 種族固有スキル『大斧爆撃( アックスボンバー)』を使ったようだ。


 通常スキルの『剛腕』も同時に使っているようで、まさに“剛腕無双”の攻撃だ。


『マナ・ジャンピング・スパイダー』たちは、必死で躱す。


 こちらの戦いも、すぐには決着がつかないようだ。


 一進一退の攻防が続く………





 数の多い『緑の下級悪魔』と『赤の下級悪魔』の相手をするのは、『コカトリス』チームと『マナ・ジャンピング・スパイダー』の部下の『マナ・ハンター・スパイダー』たちだ。


 レベル的には、両者ほぼ互角であり、数もほぼ互角である。


 こちらも一進一退の攻防が続き、スピード決着とはいかないようだ。


 むしろ魔物ではなく悪魔相手であることを考えると、五分以上の戦いをしている彼らは驚異的ともいえた。

 ここ数日の訓練の成果が確実に出ていた。





 総じて、ケニーの戦場の決着には、もう少し時間が必要であった………。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、本当にありがとうございます。

評価をいただいた方、ありがとうございました。感謝です。


次話の投稿は、11日の予定です。

本日夜に、ショートストーリーを投稿する予定です。よろしくお願いします。


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