667. スキル交錯で、固有スキル誕生!
俺は、『勇者』の『職業固有スキル』の『無限収納』について、もう少しだけ検証することにした。
『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーが、今日の戦闘中、『アイテムボックス』に回収した機械のヒュドラ首を、イメージの中で『波動収納』に動かすことで移動できたという報告をあげてくれたことを思い出したからだ。
『無限収納』でも同じことができるか、試しておきたかったのだ。
『無限収納』に回収した石を、イメージの中で『波動収納』に動かしてみる……
よし、できた!
これは便利だ。
逆に『波動収納』にあるバッファロー魔物の死骸をイメージの中で、『無限収納』に移してみる……
……これもうまくできた!
『波動収納』から石ではなく、バッファロー魔物を移動させたのにはわけがある。
時間の経過を見るためだ。
『波動収納』は、収納する時点でのその物の波動情報をデータとして保存しているようで、その時の状態が維持されるので肉なども全く腐らないのだ。
これに対して『アイテムボックス』は、非常に緩やかではあるが、一応時間は経過しているのだ。
したがって、理論上は時間の経過とともに、いずれ腐るということになる。
ただ俺の感じだと……高性能の冷蔵庫みたいな感じで、かなり長期間保存できると思う。
だから通常の食べ物の保存は、『アイテムボックス』でも充分できるといえる。
『無限収納』が『アイテムボックス』の上位互換だとすれば、おそらく非常に緩やかではあるが時間は経過すると思うので、死骸になんらかの変化があると思うんだよね。
ただ時間の経過が緩やかすぎて、すぐにはわからないだろうけどね。
時間がかかってもいいから確かめるために、石ではなく魔物の死骸を移したのだ。
————『波動収納』と『無限収納』の交錯により、新たな収納系『固有スキル』を構築することが可能になりました。新たな『固有スキル』を取得しますか?
え! 突然、頭の中に声が響いた。
天声だ!
どういうこと……?
よくわからないけど……新しくスキルを作っちゃうってこと……?
そしてそれが俺の『固有スキル』になるってこと?
『固有スキル』って、魂の願望の表れってことじゃなかったのか……?
いや……魂の願望の表れである可能性が高いというだけで、必ずそうだということではないから、こういうこともありうるのか……。
頭の中で、そんなことを考えてる間に……やっぱりいつものように……俺の返事を待ってはくれなかった。
————固有スキル『絶対収納空間』が構築、発現しました。
うーん、新たな『固有スキル』を手に入れたらしい。
『未開放』となっていたものが、開放されたのではなく、全く新たに取得したらしい。
それも今作り出されたようだ……。
早速、詳細表示を確認してみる。
それによると……容量無限の空間収納と表示されている。
これだけではよくわからないが……技コマンドが二つあるようだ。
『データ収納』コマンドを使うと、個別の物体だけでなく特定の空間そのものをコピーして収納できるらしい。
珍しく、具体例が表示されている。
それによると、里山一つをデータとして処理し、コピーして収納しておくことができるようだ。
これを他の場所に出せば、そこに同じ里山の環境が再現されるらしい。
『亜空間収納』コマンドを使うと、特定の空間そのものを切り取って、回収することができると表示されている。
それを、このスキル内に構築された特別な亜空間に、一時的に保存することができるようだ。
特別な亜空間に、一時的に収容することから、この技コマンドを使う場合は、魂があるものも回収できるらしい。
ただし、魂がある者が強い反対の意思を持っている場合は、レジストされて回収することができなくなるようだ。
なんか……すごい『固有スキル』が発現してくれたみたいだ。
そして俺が予想していた通り、『波動収納』の収納原理はデータ保存みたいな感じだ。
『アイテムボックス』や『無限収納』は、データ化するのではなく、そのものを亜空間に保存するという原理のようだ。
この二つの特徴を活かした技コマンドが『データ収納』と『亜空間収納』なのだろう。
『データ収納』コマンドを使えば、特定の空間の情報をデータとして記録して、コピー&ペーストのように別の空間に再現することができるようだ。
ただ、貼り付ける空間の元の環境は破壊されてしまうから、迂闊にこの貼り付け作業はできない。
だが、もしも隕石が落下するなどして、元々あった環境が破壊されてしまった場合には、神業的に役立つだろう。
破壊される前の状態をデータとして記録しておけば、元通りに再現できるはずだ。
今日、隕石が降ってきたばかりなので、すぐにそんな発想が思いついてしまった。
なんとなくタイムリーなスキルだ。
実際にできる範囲などは、スキルレベルによるらしい。
まだスキルレベル1の状態だから、どこまでのことができるのかは、やってみないとわからない。
『亜空間収納』コマンドを使えば、データ保存ではなく、そのもの自体を保存できるわけだ。
このスキルの中に特別な亜空間が備わっていて、そこに環境丸ごと一時的に保存することができるということなのだ。
そしてそこには、魂のある生き物も一緒に移せるらしい。
これは魔法道具の『箱庭ファーム』と、同じことができるということだろう。
この『絶対収納空間』というスキルに備わっている特別な亜空間というのは、『箱庭ファーム』に備わっている特別な亜空間と同じように、一時的に魂があるものも存在できる亜空間ということだろう。
そして『絶対収納空間』は、容量が無限ということだ。
『箱庭ファーム』は亜空間に収納するというよりも、特別な亜空間にゲートで繋ぐという性質の魔法道具と思われる。
この『絶対収納空間』スキルの『亜空間収納』コマンドも、収納というよりはゲート的な性質なのではないだろうか。
まぁ収納も……収納する場所に、出し入れできるようにゲートで繋げているという言い方もできなくはないので、両者の区別はあまり意味がないのかもしれないけどね。
収納系とか、ゲート系とか、転移系とかの分類自体が、本来的に曖昧なものなのかもしれない。
なんとなくだが……収納系とかゲート系は、亜空間を活用した亜空間系の性質といえる気がする。
転移系は、亜空間ではなく通常空間を跳躍するみたいな感じなので、空間系の性質なのだろう。
魔法やスキルの系統に、亜空間魔法系や空間魔法系というのがあって、いまいち違いがわからなかったが、こういう違いなのだろうと改めて整理できた感じだ。
今まで深く考えたことがなかったからね。
まぁ簡単に割り切れるものではないだろうから、境界線は曖昧かもしれないけどね。
『箱庭ファーム』の魔法道具もそうだが、この『亜空間収納』コマンドで、実際どのぐらいの時間保存しておけるのかは明示されていない。
スキルレベルによるということのようだ。
そして魂のあるものの収納ができるといっても、強い意志で反対されればレジストされてしまうらしい。
戦ってる最中に、敵を収納して閉じ込めるみたいなことができるのではないかと思ったが、そう甘くはなかったようだ。
ニアを閉じ込めた『プリズンキューブ』みたいな使い方ができるのではないかと期待したが、強い相手には難しそうだ。
ただ相手に気づかれないように、不意打ちなら回収できてしまうのかもしれないけどね。
試してみないとわからない。
それともし回収できたとしても……魔王とか上級悪魔みたいな強い敵だったら、自力で脱出するかもしれないよね。
ニアが脱出できちゃったんだからね。
そう考えてみるとニアさんて……やっぱり魔王並みなんだよね……いろんな意味で……。
ダメだ……脳内イメージで、ニアが魔王の衣装を着て、魔王顔で高笑いしている……。
妖精女神と言われているニアさんなのに……俺の中では、女神や勇者よりも魔王が似合うと思ってしまうのはなぜだろう……?
てか……ニアの『猿軍団』のメンバーにとっては……ニアは、すでに魔王以外の何者でもないかもしれない……ご愁傷様……。
思考がそれてしまったが、とにかくかなり凄い『固有スキル』が発現してくれたようだ。
『勇者』の『職業固有スキル』の『無限収納』が被りスキルで、がっかりしたことを『無限収納』さんに謝りたいと思う。ごめんなさい。
冷静に考えると…… 『無限収納』と『波動収納』の間で、物をやり取りしたことによって、交錯が起きてスキルが構築されたようなことを言っていたが……他にも起こりうることなのかもしれない。
ただそうは言っても、今は何も思い浮かばないけどね。
頭の片隅に留めておこう。
もし交互にスキル同士が干渉できるようなものがあれば、新しいスキルを生み出せる可能性があるってことだもんね。
そして今回取得したこの『絶対収納空間』も、ゆっくり考えれば面白い使い方も思いつくかもしれない。
今パッと思いついただけでも、街を丸ごとどこかに引っ越しするようなことも可能になるよね。
今のところ、そんな需要は無いけど……。
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