664.共有スキルも、増えてます。
俺のステータスチェックは、まだ続いている。
今度は『固有スキル』だ。
『固有スキル』は、国王陛下に詰められているときに、突然、開放された『鈍感力』という微妙な名前のスキルが増えている。
『嫌なこと、都合が悪いことを自然に認識しなくなる能力で、心穏やかに生きられる。そうしている間に、自然に解決してしまうという事象に干渉する能力でもある』という内容も……微妙だ……。
めっちゃ凄いスキルなような気もするし……嫌なことから目を背けるという情けない感じがしないでもない……。
ただ物事は、捉え方一つ、考え方一つだから、同じ現象でもマイナスに評価するよりは、プラスに考えた方がいい。
嫌なことに意識を向けて沈んだ気持ちになるよりも、好きなこと楽しいことに意識を向けて、ハツラツとした気持ちでいる方がいい。
できなかったことよりも、できたことに目を向けて、プラス思考になった方が人生は好転する。
……俺はそう考えている。
元の世界では、実際そんな自己啓発本も数多くあった。
だがこの考えは、本を読んだだけでなく、俺の実感でもあるのだ。
真面目で一生懸命な人でも、できないことに焦点を当てて生きている人は辛そうだったし、たいした努力をしなくても能天気で良いことだけを考えて生きている人は、すごく幸せそうだった。
会社経営などでも、先々のことを不安に思い神経質に努力している経営者よりも、なんとかなるさ的な能天気な経営者の方が事業が上手く行っているというのを目の当たりにした記憶がある。
もちろん、しっかり緻密な経営をした方が良いのだが、会社のトップである経営者が持っている精神波動みたいなものが、会社の業績に影響しているんじゃないかと思う経験をした記憶があるのだ。
運も実力のうちというが……運を引き寄せる能力が、経営者として一番大事じゃないかという気がしていた。
その運を引き寄せる方法が、プラスの波動なのだろうとも感じていた。
努力した者が必ず成功するわけではなく、どういう物事の捉え方をするかが大事だという考えを受け入れるのに、時間がかかった記憶もある。
努力するだけでなく、考え方もプラス思考でないと運を引き寄せることができないということだと思う。
俺はどちらかというと、元々心配性で、リスク管理という名のもとに悪いことばかりを想定していた時期があり、その時は何をやってもうまくいかなかった気がする。
そして、能天気でプラス思考で生きている人を羨ましいと思っていた。
だからそんな俺の心の願望が『鈍感力』というかたちで、スキルとして現れていたのかもしれない。
それが今回、開放されたということだろう。
そして……いつも思うが……俺の『固有スキル』の名前って……もうちょっと何とかならないのだろうか……。
『鈍感力』とかじゃなくて『プラス思考』とか、もっといい感じの名前にしてほしかったんだけど……トホホ。
今改めて考えて、元の世界にいた時の記憶というか、感じていたことを思い出した。
相変わらず人に関する記憶は思い出せないので、具体的な人の顔とか名前は思い出せないが、経験や感じていたことは思い出せるんだよね。
『共有スキル』についても、今までにかなり増えている。
仲間たちが取得した初登場のスキルは、基本的には『共有スキル』にセットするようにしている。
少しずつだが、それなりには増えているのだ。
追加されている主なものは……
俺が『土の大精霊 ノーム』のノンちゃんのお陰で身につけた『土魔法適性』と『土魔法——土の癒し』。
俺が今日取得した『飛行』『戦術指揮』『拡声』『マルチスコープ』。
同じく今日ヒュドラ肉の効果で取得した『毒耐性』『毒吸収』。
『エンペラースライム』のリンが持つ『種族固有スキル』の『吸収』の『ランダムドレイン』コマンドを使って、『武器の博士』と『薬の博士』から奪い取った『強者看破』と『製薬』『精錬』。
同じくリンちゃんが、悪徳奴隷商人から奪った『契約魔法——奴隷契約』。
ニアが『ロイヤルピクシー』のときに身につけた『薬草検知』『薬草調合』『魔法薬調合』『状態異常反射』。
ビャクライン公爵家長女で、見た目は四歳児、中身は三十五歳のハナシルリちゃんが身につけていた『速読術』。
そして今回の戦いでニアが身に付けた『通常スキル』や、仲間となった『魔盾 千手盾』の顕現精霊『付喪神 スピリット・シールド』のフミナさんの『通常スキル』も、今セットした。
『ライジングカープ』のキンちゃんが、コウリュウ様からもらった『ギフトスキル』もだ。
ニアのスキルは、『跳躍移動』『亜空間検知』という二つだ。
フミナさんのスキルからは、『絵画』『精密画』『火魔法——温熱治癒の蛍火』の三つである。
キンちゃんが、もらった『ギフトスキル』は、『サイズ変更』だ。
ニアの『跳躍移動』は、かなり使えそうだ。
目視できる範囲限定みたいだが、瞬間移動できるから、戦闘時には抜群に使えそうだ。
俺が身に付けた『飛行』スキルよりも、はるかに使い勝手がいいだろう。
このスキルと『浮遊』スキルを組み合わせれば、空中を瞬間移動で動き回ることもできそうだ。
そしてフミナさんのスキルでは、なんといっても『精密画』がありがたい。
写真みたいに精密に描写するので、事実上写真と同じと言える。
プロマイド写真が作れるのだ!
それ以外にも、何らかの情報を仲間たちに伝えるときに、直接見た者がこのスキルを使って再現することができるから、かなり便利だと思う。
写真ほどお手軽ではないが、写真を撮ってくるのと同じようなことができるというわけだ。
キンちゃんの『サイズ変更』は、スキルレベルを10にしたら、10分の1に小さくなれて、2倍に大きくなれることがわかった。
100分の1くらいに小さくなれれば、アリくらいのサイズになって戦うアメコミヒーローのようなことができると思ったのだが、そう甘くはなかったようだ。
ただこのスキルは、大森林や霊域の動物型の仲間たちには非常に便利だろう。
小型になれるので、人族の街に来ても溶け込める可能性が高くなるからね。
今回の『コロシアム村』での作戦のように、警備要員が多く必要な場合もサイズの大きい仲間たちは出動できなかった。
だが今後は、柔軟に出動できるようになる。
実は非常にありがたいスキルというか……仲間の運用を充実させる画期的なスキルなのだ。
他にもスキルを取得している仲間がいるかもしれないが、全てをチェックするのは大変なので、後で分かったときにセットすればいいだろう。
結構使えそうなスキルなら、自己申告で教えてくれるだろうし。
そう思っていたところ……ちょうど『アラクネロード』のケニー人型分体が、俺のところに報告に来た。
ケニーも今回の戦いで、『通常スキル』が発現したらしい。
結構使えそうなスキルということで、直接報告に来てくれたようだ。
ケニーもさっきまで一緒に食事をしていたけど……俺が落ち着くタイミングを待っていたようだ。
なにか嬉しそうに、人差し指をツンツンさせている。
いつもの怜悧な感じの美人姿もいいが、この冷静を装いつつ人差し指をツンツンさせている姿も可愛くていいんだよね。
相変わらず……可愛いやつめ!
そして、ケニーに発現したスキルは、優れものだった!
『マッパー』というスキルで、地図が作れるスキルらしい。
地図作りって、意外と難しいんだよね。
わかりやすく作るのは大変だし、センスみたいなものがいるんだよね。
その難しい地図作りが、スキルの力で効率的にできるようだ。
このスキルもすぐに、『共有スキル』にセットした。
ケニーによれば、このスキルは稀に冒険者などに発現する場合があるらしい。
ただ、その数は少なくレアスキルに近いのではないかとのことだ。
元冒険者で『フェアリー商会』幹部のサリイさんが言っていたらしいが、このスキルを持っている者が作ったダンジョンの地図を販売すると、みんな購入するので一財産作れてしまうらしい。
今回の戦いで、ケニーは自由行動の遊撃要員として、戦場を駆け回っていた。
それが影響して、このスキルが身に付いたのかもしれない。
まぁ今までの幅広い活躍も、蓄積されていたんだろうけどね。
いずれにしろ、素晴らしいスキルをして身に付けてくれた。グッジョブ、ケニー!
俺はそういう労いの言葉をかけながら、ケニーをソフトハグした。
そしたら、色白のケニーが何故か真っ赤になり……常人では見えないほどの速さで、人差し指をツンツンさせていた……。
スピードが速すぎて……残像が残ってるから、もはやツンツンしてないのと同じ感じなんですけど……。
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