658.救国の英雄と、大勇者。
食事が大体終わって、各自お酒を飲んだりお茶を飲んだりという状態に突入しているが、国王陛下からもう一つ話があった。
『神獣の巫女』と『化身獣』たちの今後についてである。
確かに今後どうするかについては、全く決まってないんだよね。
『化身獣』たちは全て俺の仲間であるが、『化身獣』になったからには、本来的にはそれぞれの対応する巫女と行動を共にした方がいいのかもしれない。
ただ、それぞれに備わっているスキルを見る限り、離れていてもすぐに転移で集まれるので問題ないようにも考えられる。
『神獣の巫女』『化身獣』全員には、『職業固有スキル』として『転移集合』『連携通話』が備わっている。
これによっていつでも連絡ができるし、お互いに転移で集合できるのだ。
今まで通りお互い自由にするのが一番良いのだが……どうしたものか……。
そんな話を始めたところに、『ライジングカープ』のキンちゃんが入ってきた。
キンちゃんは今、こいのぼりサイズから錦鯉サイズに小さくなっているので、部屋に入って来れるのだ。
ただ一般の感覚からすれば、空飛ぶ錦鯉はだいぶ違和感があるけどね。
「なんか、コウリュウ様言ってたけど、一緒にいなくてもいいみたいだし。必要な時はすぐ集まれるって感じだし。ウチは二つのチームの掛け持ちでマジ忙しいし! もうペナントレースは始まってるし! 霊域リーグでも、神獣リーグでもウチのチームが優勝するし、まじまんじ! クリスティアちゃんとはもうマブだけど、一緒にいて楽しいから、しばらく一緒にいるかし? サイズもコンパクトになったことだし、人族の街を楽しむかし。まぁ方針はオーナーが決めればいいって感じだし。ウチら『化身獣』になっても、オーナーとの絆は一生もんだし!」
キンちゃんがそう言った。
キンちゃんの独特の口調に、はじめての人は皆固まっている。
ユーフェミア公爵のように何度目かの人は、慣れたようで少しニヤけている。
「私もキンちゃんと一緒にいたいです」
クリスティアさんが笑顔でそう言った。
どうやら本心のようだ。
あの独特の口調には、もう慣れたんだろうか……。
まぁ慣れるとキンちゃん楽しいからね。
言ってることは、普通の人には訳が分かんないと思うけど。
「キン様、改めてご挨拶させてください。『コウリュウド王国』現国王、オウキング=コウリュウドです。国の危機を救っていただき、ありがとうございます」
国王陛下が、キンちゃんの前に出てきて、跪いた。
コウリュウ様の『化身獣』だから、そうなっちゃうよね。
「国王ちゃん、キン様はNGだから。キンちゃんて呼んでほしいし。クリスティアちゃんのパパちゃんだから、すぐにマブだし。あー、はいはい。なんかコウリュウ様がパパちゃんと話したいって言ってるし。ちょっと待ってだし…………シキの子孫の現在の国王ですね。あなたの役割も重要ですよ。『神獣の巫女』たちのみならず、この世界の守り手と思える者には手を差し伸べなさい。我が名を冠する国の国王として、世界に範を示してください。それから……これは私からの神託と思って聞いてください。救国の英雄は、その称号・職業と共に新たな称号・職業を手にしています。大勇者の称号を得ると共に、職業としても大勇者となっています。大勇者とは、勇者やそれに類する者たちを束ね統率する者、導く者です。勇者シキたちが上級悪魔たちとの死闘の末に、人々を救い建国したことは建国神話でわかっていると思います。今回の災厄の大元もやはり悪魔たちなのです。悪魔との戦いが待っています。みんなができることをしなければなりません。大勇者は導く者でもありますが、大きな力に導かれる者でもあります。何よりも自由な発意が重要です。皆で支えるのです」
コウリュウ様は、キンちゃんの普段の『ライジングカープ』の状態のときでも、憑依して現れられるようで、錦鯉の状態で話している。
すごく厳かな感じなのだが……口がパクパクしていて……微妙に感じたのは俺だけだろうか……いや俺だけだな。
それにしてもキンちゃんの軽い感じから、コウリュウ様に切り替わったときのギャップがすごい。
もちろん“ギャップ萌え”はしないが、慣れないと結構きつい。
そしてキンちゃん……国王陛下を“国王ちゃん”とか“パパちゃん”て呼んだらダメだし!
コウリュウ様は、今回の襲撃の背後にいるのは悪魔だと断定してくれた。
やっぱりそういうことのようだ。
これから悪魔との戦いが待っているのか……のんびり生活をしたいんですけど……トホホ。
そしてコウリュウ様が言っている『救国の英雄』とは……残念ながら俺のようだ。
『称号』の欄に『救国の英雄』と『大勇者』というのが入っているし、『職業』欄は今まで空白だったのに、突然にして『救国の英雄』と『大勇者』という二つの職業が表示されている……。
どうしてよ?
のんびり暮らしたいのに……。
国とか世界を救ったから、ついちゃったんだろうか……?
確かにあの隕石だけでも、落ちていたら大変な被害になっていただろう。
そしてあの機械の殲滅兵は、約三千年前に『マシマグナ第四帝国』を滅ぼした元凶らしいし。
おまけに巨大クラゲという実在するかどうかもわかっていなかった伝説の天災級の魔物も倒したり、仲間にしちゃった。
第三者的な視点で考えれば……確かに『救国の英雄』といえるかもしれないし、『大勇者』の称号がついてもおかしくないかもしれない。
てか……なんで勇者を飛び越えて、いきなり大勇者なわけ?
そしてそもそも『大勇者』ってなに?
賢者の上の大賢者的な……?
コウリュウ様の話を聞くかぎり、そういうことのようだけどね。
勇者の上の存在……上位互換的な職業のようだ。
そう思いつつよく見たら……『職業』欄にはないが『称号』の欄には『勇者』の称号もあった。
通り越していたというよりは、同時に取得していたようだ。
まぁそんなことは、もはや些末なことだが……。
この『称号』と『職業』は、のんびり生活を送りたい俺にとっては……全く以て微妙だ。
でもこの異世界の生活を楽しむためには、邪魔な悪魔は倒さなきゃいけないってことなんだよね。
なんでこうなるのよ……トホホ。
俺の大切な人たちの生活を守るためには、否が応でもやるしかないようだ。
我ながらチートだから耐えられるけど、普通だったら耐えられない感じだわ!
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