652.また、品定めされている感じ。
「国王陛下、王妃殿下、ご挨拶させていただきます。セイバーン公爵家のシャリアです」
「ユリアです」
「ミリアです」
セイバーン家の三姉妹が挨拶をした。
「おお、相変わらず惚れ惚れする美人三姉妹だね。三人とも、よく領民を守ったね」
「みんなの活躍も見たわよ。人々を守ってくれてありがとう」
国王陛下と王妃殿下は、笑顔で三姉妹に語りかけた。
「私もご挨拶させてください。ゲンバイン家のドロシーです」
今度はドロシーちゃんが挨拶をした。
「ドロシー、重要な仕事を担ってくれて、ありがとう。その上、『神獣の巫女』にまで選ばれて」
「そうね。ほんとに素晴らしいわ。これからも頼みますね」
国王陛下と王妃殿下は、まだ若いドロシーちゃんを抱き寄せた。
「国王陛下、王妃殿下、改めてご挨拶させていただきます。ピグシード辺境伯領領主となりましたアンナです。正式にご挨拶に行くこともできず、申し訳ありませんでした」
今度は、アンナ辺境伯が挨拶をした。
「いいんだよ、アンナ。ほんとに大変だったね。でも立派に領を立て直しているようで安心したよ」
「そうね、あなたの経験した辛さは、思いやることしかできないけど、できることがあったら力になるわ」
国王陛下と王妃殿下は、アンナ辺境伯に手を差し伸べ、握手した。
「私もご挨拶させて下さい。このたびヘルシング伯爵領の領主となりましたエレナ=ヘルシングです」
今度は、エレナさんが挨拶をした。
「エレナ=ヘルシング伯爵、よくヘルシング伯爵領を救ってくれたね。そして今回の働きも見事だよ。これからも頼みますよ」
「エレナさん、ぜひ素晴らしい領運営をしてください。王家としても支援を惜しみませんわ」
国王陛下と王妃殿下は、アンナ辺境伯の時と同じように、手を握って握手をした。
この後、ヘルシング伯爵領執政官のキャロラインさんや、セイバーン公爵領の『セイリュウ騎士団』団長のマリナさん、『光柱の巫女』の三人が続いて挨拶をしていた。
そしてやっと俺たちの順番が……
「妖精女神様……ニア様、お目にかかれて光栄です。またも我が国を救っていただき、感謝の言葉もありません。本当にありがとうございます。深く感謝申し上げます」
国王陛下と王妃殿下が、ニアに跪いた。
まじかー……国王と王妃まで跪いちゃうわけ……?
「いいのよ。今回はみんながんばったし。魔物化しちゃった人は別として、それ以外の人には死者も出なかったから、何とか結果オーライね!」
ニアは相変わらず、お気楽な感じで答えている。
ほんとこの人にとっては、国王とかそういうのは全く関係ないんだよね。
「お目通りの機会をいただき、恐悦至極に存じます。私はピグシード辺境伯家家臣グリム=シンオベロン名誉騎士爵と申します」
俺は、貴族の礼で挨拶をした。
王妃殿下は優しく俺を見てくれている感じだが……国王陛下がめっちゃ見てる。
この感じ……マリナ騎士団長に舐めるように見られている……あの品定めされている感じと同じなんだけど……。
睨まれているほどではないが、めっちゃガン見されているのだ。
「君がシンオベロン卿か……。此度の活躍は、直接見せてもらった。まずは礼を言う。この国を救ってくれてありがとう。そしておそらく……君が神託にあった救国の英雄なのだろう。これからも、この国を……この世界を守ってほしい。だが……だからと言って、クリスティアの件は別だ。君には、後で個別に話がある……」
今まで見ている限りはソフトな印象の国王だったのだが……何故か俺には、やけに重厚な……厳しい感じのトーンなんだけど……どういうこと?
「ちょっと、あなた、その話は今じゃなくていいでしょ。まずは、感謝して労いだけにしましょう。ごめんなさいね、グリムさん。この人はねぇ、ほんとに娘を溺愛しているしょうがない父親なの。気にしなくていいからね。ほんとにあなたの活躍は、素晴らしかったですわ。私は認めていますからね」
王妃殿下が、優しくそう言ってくれたが……。
この国王陛下の感じは、どういうことだろう?
大事な娘に変な虫がついた的な……そういうこと?
よくわからないが……とにかく国王陛下もビャクライン公爵と同じ溺愛オヤジらしい……。
うーん……溺愛オヤジが面倒くさく感じる今日この頃……。
まぁ俺も子供が大好きだから、溺愛する気持ちは100%わかるんだが……。
自分が溺愛している分にはいいけど、他の溺愛オヤジに遭遇すると……面倒くさい以外の何物でもないと切に感じる今日この頃なのだ……トホホ。
「あんたたち、あんまりグリムをいじめるんじゃないよ」
ユーフェミア公爵が、腕組みしながら国王陛下と王妃殿下に言った。
完全に上から目線だけど……。
「姉様、い、いじめませんよ。私はちょっと、尋ねたいことがあるだけです」
国王陛下が、しどろもどろな感じになっている。
「直接見て……戦っている姿や、こうして話している感じの雰囲気を見て……やっとわかったわ。ユフィが一人の男に肩入れする理由が。あなたが一人の男を娘たちにシェアさせようとするなんて、ありえないと思ってたんだけど……それほどの男だっていうことがよくわかったわ。どうもクリスティアに独占させるのは、難しそうね。私もシェアする方向で考えるしかないみたいね。ほほほ」
王妃殿下が、楽しそうな笑みを浮かべた。
男をシェアする話になってるけど……一体どういうことなんだろう……?
俺の事……?
直接俺に話も来ないし……何か危険を感じるので……ここは聞き流すことにしよう。
一通り挨拶が終わったところで、改めて国王陛下から俺たちに話があった。
「我が国の護国の神獣様方が、古の約束を果たし再び力を貸してくれました。喜ばしいことですが、それは……とりもなおさずこの『コウリュウド王国』ひいては、この世界に危機が訪れたということの証拠でもあります。『光柱の巫女』への神託にもあったように、『魔の時代』へ入ったということでしょう。『正義の爪痕』の背後には、悪魔の存在があったと聞いています。そうであるならば……むしろ本格的な戦いは、これからでしょう。『コウリュウド王国』の建国神話は、悪魔との戦い……悪魔から人々を守る戦いの記録です。『光柱の巫女』『神獣の巫女』『化身獣』、そして我が王国の勇士たち、妖精女神ニア様、救国の英雄シンオベロン卿に、心より願います、どうぞその力で、使命感で、溢れる愛で、この国……この世界を守ってください。王家が……国民が全力で支援します。『魔の時代』を共に乗り越えましょう!」
国王陛下の熱弁に……皆身が引き締まる思いで首肯した。
優しい雰囲気のナイスミドルな国王だが、熱弁を振るうと……やはりカリスマ性がある。
これがもし会議室の中でなく、コロシアムで人々に向けて話していたなら、大熱狂が巻き起こったことだろう。
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