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633.舞空術で、スカイサーフィン!

三人称視点です。

『コロシアム村』と『セイセイの街』を含む周辺領域全体を、巨大な防御障壁『五神絶対防御陣』が包み込んでいる。


 その外側上空では、五人の『神獣の巫女』が魔物の連鎖暴走(スタンピード)に対処する為に動き出そうとしていた。


『コウリュウの巫女』となった第一王女のクリスティア、『セイリュウの巫女』となったセイバーン公爵家長女のシャリア、『ビャッコの巫女』となったビャクライン公爵家長女のハナシルリ、『スザクの巫女』となったスザリオン公爵家長女のミアカーナ、『ゲンブの巫女』となったゲンバイン公爵家長女のドロシーの五人は、戦巫女として魔物を討伐することにより、人々を照らす光となるように、それぞれの神獣からアドバイスをされていた。


 人々を守る『五神絶対防御陣』は、本来五人の『神獣の巫女』と五体の『化身獣』が力を合わせて、発動し、維持するものである。

 その状態で初めて、本来の絶対防御性を発揮できるのだ。


 だが、暴走状態で現れた魔物に対処するために、『神獣の巫女』たちだけが防御障壁をすり抜けて出てきたのだった。

 神獣たちのアドバイスに従い、自ら先陣を切ることで、人々の希望となるために……。

 そして、自らの力で大切な人たちを守るために……。


 それに伴って、『化身獣』たちは、防御障壁の維持を担当することになった。

 本来の強固さは発揮できないものの、魔物の侵入を防ぐ程度の防御力は、維持できているのであった。


 魔物の殲滅だけを考えれば、この『化身獣』に選ばれたグリムの仲間たちを暴れさせた方が早く解決するはずである。

 だが、『化身獣』の役割は、第一に人々を守ることであり、防御障壁の維持が優先されることを『化身獣』たちは十分に理解したいた。

 それは、それぞれに憑依している神獣に指示されたからというだけではなく、彼らのマスターであるグリムの普段からの考えでもあるからだった。


 『コウリュウ』の『化身獣』となり憑依状態になっている『ライジングカープ』のキンちゃん、『セイリュウ』の『化身獣』となり憑依状態となっている『龍馬(たつま)』のオリョウ、『ビャッコ』の『化身獣』となり憑依状態となっている『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スザク』の『化身獣』となり憑依状態となっている『スピリット・オウル』のフウ、『ゲンブ』の『化身獣』となり憑依状態となっている『スピリット・タートル』のタトルは、『五神絶対防御陣』の維持の為に精神を集中させている。

 万が一にも、防御障壁が破られ人々に被害が出ることがないように、『化身獣』として全力を尽くしているのであった。


 そして、人々に希望を与える為に、キンちゃんは引き続き防御障壁の外の戦闘の様子を、投影し人々に届けているのであった。



 クリスティアたち神獣の巫女の側には、『クイーンピクシー』となったニアが、寄り添っていた。

 彼女たちを支え、支援する為である。


「クリスティアちゃん、私の飛行型の仲間たちが、このエリアの周囲に散開してくれているの。魔物たちが他のエリアまで行ってしまわないように、防波堤として食い止めるわ。だからあなたたちは、魔物集団の殲滅に集中しちゃって! 取りこぼしは、私の仲間たちがやるから。それから、ハナシルリちゃんは、私が見るから安心して!」


 ニアはそう言うと、クリスティアたちを安心させるように、親指を突き出して微笑んだのだった。


 『クリーンピクシー』となったニアは、人型サイズになれるようになって、未だにそのサイズを維持していた。

 そして、その体が大きくなったのに比例して、存在の与える安心感も大きくなったようで、クリスティアたちは、ニアがそばにいるだけで、絶対の安心感を得ていた。


「わかりました、ニア様。それでは、我々はできるだけ多くの魔物を倒します! 漏れた魔物の対応をお願いします」


 クリスティアが力強く言うと、他の巫女たちも一緒に頷いた。


 そして、それぞれが動き出す——


 彼女たちは、宙に浮いて、しかも滑るようにスムーズに移動できていた。

 まるでフライングボートにでも乗っているかのように、足を揃えて空を滑る。

 おそらく、彼女たちが思いを寄せるグリムが見たら、「スカイサーフィンか!」とツッコミつつ羨ましがったことだろう。


 実は、これができているのは、『スザクの巫女』ミアカーナが、全員に『職業固有スキル』をかけたからだった。

 彼女が取得している『職業固有スキル』とは、初代スザリオン公爵が使っていたとされる『舞空術』である。


 これは、空中に浮遊して、念の力で滑るように高速移動できる能力なのである。


 今回『スザクの巫女』の『職業固有スキル』として現れた『舞空術』スキルは、実は、『通常スキル』のレアスキルとしても発現する可能性があるものであった。

 ただこの『舞空術』は『職業固有スキル』として発現していることによって、一つの大きな特性を帯びていた。


 それは『スザクの巫女』が指導することで、一般の人に『通常スキル』として発現させられる可能性があるという性質である。

 極めて稀な性質で、指導伝播型のスキルの特性を帯びるのである。


 一般的な『通常スキル』でも、スキルの所持者が指導し訓練しても、必ず取得できるわけではない。

 特にレアスキルと呼ばれるものについては、指導を受け訓練し努力しても、習得することは極めて困難なのである。


 それが『神獣の巫女』の『職業固有スキル』として現れることによって、指導伝搬型の特性を帯びたのだ。

 それによって、指導を受けた者が、『通常スキル』のレアスキルとして取得する確率がかなり上がるのである。


 これが意味するところは……『スザクの巫女』以外の他の巫女でも、ミアカーナの指導を受ければ、個人の『通常スキル』のレアスキルとして習得できる可能性があることを意味していた。

 そして、他の者でも同様でなのである。

 おそらくグリムがこのことを知れば、すぐにでもミアカーナへの弟子入りを考えるに違いない。


 もっとも実際に習得するには、かなりの訓練が必要で簡単ではないのだが。


 各公爵家に伝わっていた『舞空術』などの特別な『念術』が、三代目までしか伝わらなかったのは、初代が指導できたのが三代目までだからということなのであった。


 あくまで『職業固有スキル』としての『舞空術』にだけ、指導伝搬型の特性が備わっているのであって、その指導受けた者が『通常スキル』のレアスキルとして『舞空術』を取得できたとしても、それを誰かに指導し習得させることは不可能に近いことなのであった。




読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、14日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 暫く忙しくて読めなかったのですが、久しぶりに読めました。 すると、まさかの「エウ○カ」!? 相変わらず、楽しい展開。ありがとうございます!
[一言] >  まるでフライングボートにでも乗っているかのように、足を揃えて空を滑る。 > おそらく、彼女たちが思いを寄せるグリムが見たら、「スカイサーフィンか!」とツッコミつつ羨ましがったことだろう…
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