629.降り注ぐ、災厄。
五神獣の化身と五神獣の巫女が揃ったようだ。
五神獣の化身……『化身獣』となったのは、『龍馬』のオリョウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・タートル』のタトル、『ライジングカープ』のキンちゃんだ。
神獣の憑依体となって、それぞれ『セイリュウ』『ビャッコ』『スザク』『ゲンブ』『コウリュウ』の姿に変わっている。
そのパートナーとなるのが、『神獣の巫女』のようだ。
『光柱の巫女』と『従者獣』の関係と同じようなものなのだろう。
セイバーン公爵家長女のシャリアさん、ビャクライン公爵家長女で『先天的覚醒転生者』でもある四歳児ハナシルリちゃん、スザリオン公爵家長女のミアカーナさん、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員でもあるドロシーちゃん、第一王女で審問官のクリスティアさんが選ばれたようだ。
彼女たちはそれぞれ、『セイリュウの巫女』『ビャッコの巫女』『スザクの巫女』『ゲンブの巫女』『コウリュウの巫女』になって、かつ戦巫女状態で鎧を装着している。
それぞれの手には、各家に代々伝わっている伝家の宝刀が握られている。
シャリアさんが『セイリュウ槍』、ハナシルリちゃんが『ビャッコ剣』、ミアカーナさんが『スザク弓』、ドロシーちゃんが『ゲンブ盾』、クリスティアさんが『コウリュウ杖』を手にしている。
これらは、『五神器』とも言われているらしい。
「はい、わかりました。すぐに。みんないいですね!?」
クリスティアさんは、コウリュウ様と交信をしつつ、シャリアさんたちに声をかけた。
シャリアさんたちも、それぞれ神獣と会話をしていたようで、意味がわかっているのか力強く頷いた。
「グリムさん、ここに隕石群が飛来します! 私たちが五神獣の力を借りて守ります。できれば、隕石の対処をお願いしたいのですが……」
クリスティアさんが、俺に向かってそう叫んだ。
突然、俺に話が来たので……びっくりした。
よくわからないが……隕石が降ってくるのか……?
それ……滅茶苦茶やばいやつじゃないか!
どのぐらいの大きさの隕石が落下してくるのかわからないが……下手したら星の環境が変わっちゃうんじゃないだろうか……。
そして……隕石の対処ってなに!?
……無茶振りな気がしてしょうがないんですけど……。
まさかこれも、コウリュウ様の指示だったりしないよね……?
でも今は、そんなことを言ってる場合じゃないな。
「わかりました。何とかします!」
「ありがとうございます。今からここに……この『コロシアム村』全体に……できれば『セイセイの街』も含めた範囲に、強力な防御障壁を張ります! 隕石の対処にあたる方は、上空に飛んでください!」
クリスティアさんがそう説明してくれたが……
またも無茶振りと思える指示が来た……。
俺の仲間が飛べるという前提だ……。
まぁ『共有スキル』に『浮遊』があるから、少なくとも全員、宙に浮くことはできるけどさぁ……。
「わかりました。すぐに対処します!」
俺はそう言って、ハイジャンプベルトを起動し空に舞い上がった。
(みんな、今から隕石が降ってくる! 隕石の処理は、俺とナビーでやるから、みんなは引き続き機械の殲滅兵に対処して! あと隕石の破片がもし落ちてくるようなことがあれば、被害が出ないように打ち落としてほしい!)
俺は仲間たちに指示を出し、ナビーと共に上空で待機した。
『聴力強化』スキルと『視力強化』スキルを最大にして、下の様子を窺うと……
クリスティアさんたちが、大掛かりな術を発動するようで、再び光り出している。
「セイリュウの青き輝き!」
「ビャッコの白き輝き!」
「スザクの赤き輝き!」
「ゲンブの黒き輝き!」
「コウリュウの黄金の輝き!」
「「「「「集いて守りの盾となれ! 五神絶対防御陣!」」」」」
五人の戦巫女が発動真言を唱えた。
五人の中央の頭上で光球ができて、それが次第に広がっていく……
どうやらそのまま、ドーム型のバリアを張るようだ。
透明なバリアなので、中の様子が見える。
かなり強固な防御障壁だろう。
それでもどのぐらいの隕石に耐えられるのか分からないので、できるだけ一つも落とさないように対処しようと思う。
そして残念ながら、やはり隕石が来るようだ。
遥か上空に赤い軌道が現れた!
しかも……数が凄い!
これ何の無理ゲーなの!?
これ無理でしょうよ、普通……。
このエリアっていうか……セイバーン公爵領と近隣エリア……なくなっちゃうやつだよね!?
なによ、これ!
これも殲滅兵器の一つなわけ?
数が多すぎて……待ってたら対処しきれない。
こっちから行かないと!
(ナビーはできるだけ上昇して、大きいやつから優先して回収して! 他は俺が引き受ける!)
(了解です! 可能な限り回収します!)
ナビーと役割分担で回収することにした。
ナビーは俺と同じように、『ハイジャンプベルト』を装着している。
『波動複写』でコピーしたものだ。
隕石を二人で同時に回収するよりも、上下でエリアを分けて回収した方が効率が良いと考えたのだ。
そう……この隕石群を『波動収納』で回収してしまおうと思っているのだ。
隕石は、当然ながら魂がないから回収できるはずだ。
そして『目視回収』コマンドを使えば、触れなくても回収できる。
ナビーは、すぐに上昇し隕石を回収し始めた。
数が多いので、ナビーを通り越して、かなりの数が下に降ってくる。
それを俺が、目視でロックオンして回収しまくる!
だが、隕石群には、かなりの数の小隕石が混じっている。
これら全てを回収するのは無理があるので、でかいやつを優先して回収する。
俺が回収できなかった小隕石は、仲間たちが対応してくれるはずだ。
仲間たちの『共有スキル』の『アイテムボックス』では回収が難しいと判断し、破壊するようにと『絆』通信のオープン回線で指示を出した。
『アイテムボックス』は、ある程度近づかないと回収ができないからね。
それにしても……小さな小隕石は燃え尽きても良さそうなのに、燃え尽きる感じじゃないんだよね。
この隕石群の中の隕石自体が、摩擦熱を出してもダメージを受けてない感じなのだ。
何か特殊な石なのだろうか……。
まぁ今は、そんなことを考えてもしょうがないけどね。
——バゴーンッ
——バゴーンッ
——バゴーンッ
——バンッ
——バンッ
——バンッ
防御障壁の外にいる仲間たちが、かなり迎撃してくれているが、それでもいくつかは、クリスティアさんたちが張った防御障壁に当たっている。
そもそも防御障壁の外で待機している仲間の数が少ないし、広範囲に降り注いでいるから全てに対応するのは、やはり無理だった。
でも、あの『五神絶対防御陣』という強固な防御障壁のお陰で、小隕石を防げているので少し安心した。
あの防御障壁がなければ、俺や仲間たちががんばっても、かなりの被害が出たかもしれない。
そして、その防御障壁内では、大量に散布された機械の殲滅兵たちを、他の仲間たちが回収している。
俺は、状況を把握しつつ、隕石の回収を急ぐ——
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