627.神獣の、巫女。
『龍馬』のオリョウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・タートル』のタトルが、護国の神獣と言われている『セイリュウ』『ビャッコ』『スザク』『ゲンブ』の『化身獣』となり、今まさに化身状態で現れている。
俺もまだ完全には状況を飲み込めていないが、とにかくオリョウたちは選ばれ、特別な使命を担ったようだ。
「きゃっ」
「あわわわ」
「なに!?」
「ええっ」
『聴覚強化』スキルで強化されたされた聴覚が、聞き覚えのある声を拾った。
と思ったら…… 四人の女性が宙に舞っていた!
あれは……セイバーン公爵家長女のシャリアさん、ビャクライン公爵家長女で『先天的覚醒転生者』でもあるハナシルリちゃん、スザリオン公爵家長女のミアカーナさん、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員でもあるドロシーちゃんだ……。
オリョウたちのように、宙に浮かんで移動している。
そして、オリョウたちの前にペアになるように向かい合わせに停止した!
シャリアさんは『セイリュウ』の化身となっているオリョウの前、ハナシルリちゃんは『ビャッコ』の化身となっているトーラの前、ミアカーナさんは『スザク』の化身となっているフウの前、ドロシーちゃんは『ゲンブ』の化身となっているタトルの前だ。
「なんかよくわかんないけど、セイリュウ様が巫女になれって言ってるし! アチシの相棒ってことで、マジよろしくって感じ! シャリアちゃんとマブなんて最高かよ! 極マブになるしかないっしょ!」
オリョウが、シャリアさんに話しかけているが……微妙に意味がわからない……。
シャリアさんも微妙な感じだったが……頭の中で何かが語りかけているようで、しきりに頷いている。
「はい、セイリュウ様。はい、喜んで拝命いたします! では……参ります! 我こそはセイリュウの巫女、戦巫女としてその力を現さん! 化身獣とともに……今覚醒の時! 出でよ! セイリュウ槍!」
シャリアさんが、突然力強く叫んだ!
シャリアさんもどうやら『セイリュウ』様と交信していたようだ。
そして……セイリュウの巫女と聞こえたが……
発動真言を唱えたようでもあった。
え、突然、彼女の前に見事な青い槍が現れた!
転移してきたようにも見えたが……。
あれが『セイリュウ槍』なのか?
セイバーン公爵家に伝家の宝刀として伝わっているという特別な槍。
神器とも言われているようだ。
本来の力を失っているとも言っていたが……
シャリアさんは、その『セイリュウ槍』を手にとると、穂先を上に向けて円を描くような動作をした!
「変化! 戦巫女装束!」
おお、発動真言を唱えたようだ。
槍で描いた頭上の円から光が降り注ぎ……シャリアさんを包み込む。
筒状の光の柱は、やがて丸みを帯びた球状になった。
そして光がやわらいで、中の見える透明なシャボン玉形状になった。
中には……青く輝く鎧に身を包んだシャリアさんの姿がある!
右肩のガードパーツの上には、セイリュウの頭を模したものが乗っている。
左肩のガードパーツの上には、セイリュウの尾を模したものが乗っている。
胸からお腹のあたりに絞り込まれるようなデザインの胴当て、ミニスカートと一体となった腰当て、肘近くまで伸びた小手パーツ、そしてロングブーツ、すべてのパーツが青く煌めいている!
スタイリッシュなデザインだし、メタリックな輝きが、めっちゃかっこいい!
そして、手にしている『セイリュウ槍』の穂先は、白だったのが青白く変化し、妖しく揺れるような煌めきを発している。
凄い……思わず見とれてしまった。
少しだけ『波動鑑定』させてもらった。
『職業』欄に、『神獣セイリュウの巫女』と表示されている。
『状態』には、『戦巫女発動状態』との表示があった。
やはりシャリアさんは『神獣の巫女』となり、そして戦巫女の状態になっているようだ。
『光柱の巫女』の神獣版ということなのだろうか……。
「わっかりましたぁ! 了解っす! 待ってました! やっぱり私のターンもありなのね! やっちゃいますとも! えぇ、あ、はいはい、すみません、すぐやります。ああ……えぇ……てす、てす……わ、我こそはビャッコの巫女、戦巫女としてその力を現さん! 化身獣とともに……今覚醒の時! 出でよ! ビャッコ剣!」
今度はハナシルリちゃんが、発動真言を叫んだ。
それはいいけど……発言に、四歳児じゃなく三十五歳が思いっきり出ちゃってますけど!
まぁ普通は聞こえてないだろうけどね。
そして多分だけど……あなた、調子こきすぎて……ビャッコ様に怒られたでしょ!?
「はい。やってみます! 我こそはスザクの巫女、戦巫女としてその力を現さん! 化身獣とともに……今覚醒の時! 出でよ! スザク弓!」
「はい。はい、大丈夫です! ドロシー、行っきまーす! 我こそはゲンブの巫女、戦巫女としてその力を現さん! 化身獣とともに……今覚醒の時! 出でよ! ゲンブ盾!」
ミアカーナさんとドロシーちゃんも続いて、発動真言を叫んだ。
そして、それぞれの前に、呼び出したと思われる武器が現れた。
伝家の宝刀だろう。
ハナシルリちゃんの前に現れた『ビャッコ剣』は、純白の広幅の剣だ。
剣幅が、通常の剣の二倍ぐらいある。
そして、柄だけでなく刀身が真っ白になっている。
ミアカーナさんの前に現れたのは、燃え立つような赤い弓と赤い矢筒に入った紅蓮のごとき赤の矢だ。
これが『スザク弓』だろう。
ドロシーちゃんの前には、亀の甲羅のような形の黒い大盾が現れている。
『ゲンブ盾』のようだ。
三人とも神器を手に取って、念じるような体勢になっている。
四歳児の体のハナシルリちゃんも、あの大きな剣を持てるようだ。
おお、ハナシルリちゃんの持っていた広幅の剣が、縦に二つに分かれた!
二本の剣に分かれる仕様だったようだ。
ハナシルリちゃんは、両手の剣を上に掲げると、それぞれに円を描くような動作をした。
ミアカーナさんは、赤い弓を天に向けて、矢をつがえず弦だけ引き絞って離した。
ドロシーちゃんは、黒き大盾を天に向けて突き上げる動作をした。
「「「変化! 戦巫女装束!」」」
三人は、図ったように、同時に発動真言を唱えた!
すると、それぞれの頭上に光が降り注ぎ、神器から出る光とともに彼女たちを包み込んだ。
そして、シャリアさんの時同様、球状になった。
光が和らぎ透明なシャボン玉のようになると、中には荘厳な鎧をまとった彼女たちの姿が見えた。
基本的なデザインは、『セイリュウの鎧』と同じような感じだ。
ハナシルリちゃんが装着しているのは、純白に輝く鎧だ。少しメタリックな輝きでもある。
『ビャッコの鎧』だろう。
四歳児のハナシルリちゃんのサイズにぴったり合っている。サイズは自動で調整されているようだ。
右肩のガードパーツの上にはビャッコの頭を模したものが乗っていて、左肩には尻尾を模したものが付いている。
手にしている二つに分かれた『ビャッコ剣』は、小さくなっている。
ハナシルリちゃんの使いやすいサイズに変わったようだ。
もともと白かった刀身が、今は少しメタリックな感じが混ざって煌めいている。
ミアカーナさんが装着した『スザクの鎧』は、紅蓮といった感じの燃え立つような赤き鎧だ。
右肩にはスザクの頭を模したものが乗っていて、左肩には長い尾を模したものが付いている。
手にしている『スザク弓』は、もともと燃え立つような赤だったが、今は煌めきが混ざり炎が波打っているように見える。
ドロシーちゃんは、黒くメタリックに輝く『ゲンブの鎧』を装着している。
右肩には亀の頭を模したものが乗っていて、左肩には蛇の頭が乗っている。
『ゲンブ盾』は、メタリックな感じの黒に変わっている。
みんな『神獣の巫女』となって、戦巫女のフォームにチェンジしたということのようだ。
何か凄いことになってきた……。
そして相変わらず、オリョウたちもシャリアさんたちも、神獣様たちと交信しているようで、頷いたりしている。
おお、新たな動きが……みんなで何かやるのか……?
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