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603.囚われの、ニア。

『セイリュウ騎士団』のみなさん、『高貴なる騎士団(ノブレスナイツ)』のみんな、そしてビャクライン公爵の奮戦によって、吸血魔物は細切れになり、『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんたちが開発した火炎放射器によって完全焼却された。


 こうして何とか吸血鬼を中心とした第二波を凌ぐことができたようだ。


 しかしこの攻撃の仕方……やはり違和感があるんだよね。

 なんで戦力を小出しにするんだろう。

 しかも全体に分散させて……。

 一点集中でこの『コロシアムブロック』に全戦力を投下して、ユーフェミア公爵たちを狙うのが定石じゃないかと思うのだが……。

 そういう感じじゃないんだよね。

 なぜ全体に均等に攻撃をするんだろう。

 何か別の目的があるのか……



「『東ブロック』は、殲滅完了よ!」

「『西ブロック』は、もう全部燃しちゃったのだ!」

「『南ブロック』も、終わったなの〜」

「兄貴、『北ブロック』も、大丈夫だよ」


 吸血魔物の焼却要員となっていたニア、リリイ、チャッピー、ジョージから念話が入った。

 各エリアでも、吸血鬼を中心とした第二波を凌ぎきったようだ。


(グリムさん、『吸血生物』の対処は終りました。すべて変性させました。ジョージが仲間にした巨大ザメとともに、『コロシアム村』の近郊で待機させますがよろしいでしょうか?)


 ヘルシング伯爵領執政官で俺の眷属『聖血鬼』でもあるキャロラインさんからも念話が入った。

『吸血生物』たちの『聖血生物』への変性作業が終わったようだ。


(ありがとうございます。そうしてください。ところで何体仲間にできました?)


 (はい、『聖血(ホーリー)蝙蝠(ヴァンパイアバット)』が百五十体で元からの仲間と合わせると百六十体になります。『聖血(ホーリーヴァンパイア)(モスキート)』も同様に百六十体です)


 なんと……各十体ずつだった『聖血生物』たちが、一気に百六十体づつ合計三百二十体になった!

 めっちゃ戦力補強になってしまった。


 (了解です。リリイとチャッピーを回収しながら戻ってもらえますか?)


 (かしこまりました。すぐに向かいます)


 あとはニアだな……


 (ニアも戻ってきてくれるかい?)


 (オッケー。あーでも、ちょっと待って、なんか気になるところがある……)


 ニアが、なにか見つけたようだ。


 俺は、ニアのいる『東ブロック』の『使い魔人形(ファミリアドール)』に感覚を共有する。


 ニアが、何もないところに近づいて行っているが……。


 わ! 空間から突然手が出た!

 え! 手が持っていた四角い何かに、ニアが吸い込まれてしまった!


 まずい!


 ニアを吸い込んだ手は消えている。

 何もない空間だ。


 (リン、シチミ、レントン、オリョウ、ニアを探して!)


 俺は、『東ブロック』を担当している『エンペラースライム』のリン、『ミミックデラックス』のシチミ、『ワンダートレント』のレントン、『龍馬(たつま)』のオリョウに捜索を指示した。


 (わかった)

 (任せとけ!)

 (すぐに見つけるのだ!)

 (ニアパイセン、絶対見つけるし!)


 まずい……早くニアを見つけないと……


 (ニア、ニア! ニア、聞こえるか、ニア!)


 ダメだ……念話に応答がない。


 手が持っていた四角いサイコロのようなものに吸い込まれたように見えたが……もしかして亜空間に閉じ込められているのか……


 やばいな……もしそうだとしたら、助け出す方法が思いつかない……。

 しかも、あの手も転移かなにかで現れたんだとしたら……犯人を捕まえるのも厳しい。


 まずは、『東ブロック』に行かなきゃ!

 俺は、すぐに『使い魔人形(ファミリアドール)』の感覚共有を解き、ハイジャンプベルトを使って『東ブロック』に急行した。



「ニア! ニア! ニア!」


 呼んでも全く反応がないし、気配も感じられない。

 やはりここにはいないようだ。

 別の場所に連れていかれたか、亜空間に閉じ込められたという可能性が高い。


(ニア! ニア! ニア!)


 やはり念話も繋がらない……。

 距離が離れていても念話なら繋がるはずだ。

 繋がらないという事は……やはり違う空間にいるのか?


 考えてもしょうがない。もう一度だ!

 ニアを失うなんて考えられない!


 (ニア! ニア! ニアァァァァ!)


 俺は全力の念を込めてニアを呼んだ!


 (……わぁ! グ、グリム!? よかった! 繋がった!)


 (ニア、ニアか!?)


 (そうよ、私よ! 何泣きそうな声出してんのよ。そんなにニアちゃんのことが大事なの? やっとわかったわけ?)


 (よかった……。ニア……あゝ……よかった……)


 良かった……ニアと繋がった。

 ニアの残念な感じの軽口が、こんなに嬉しいなんて……。

 なんだ……?

 安心したからかわからないけど……俺泣いてるし。

 涙がポロポロ出ている。

 でも泣いている場合ではない。

 早く状況確認をしないと……


 (ニ、ニア、大丈夫かい?)


 (うん。今のところはね。亜空間みたいなところに、閉じ込められた感じなのよね。でも大丈夫! 私に考えがあるから。念話が繋がることもわかったし、あまり心配しないで。やばくなったらまた念話するから。それから……多分だけど、私を捕まえた奴は、『隠れ蓑のローブ』みたいなもので透明化してると思うのよね。空間から突然手が出た時に、ローブのようなものが一瞬感じ取れたから)


 (わかった。そいつをすぐに見つけて捕まえるから待ってて)


 なるほど……そういうことか。

 亜空間から現れたのかと思って少し焦ったが、俺が持っているのと同じ『隠れ蓑のローブ』のようなものを使っているのだとしたら、確実にこの場所にいるということだ。


 (みんな、ニアを捕まえた奴は、多分ここにいる。俺の持ってる『隠れ蓑ローブ』と同じようななものを持っているようだ。探そう!)


 俺はみんなに指示を出すとともに、『正義の爪痕』構成員と念じて『波動検知』をかける……


 ……ダメだ。

 うまく感知できない……。


 アイテムで気配を消しているとしても、『波動検知』は波動情報を感知するのだから、見つけられそうな気がするが……。

 もしかしたら……認識阻害のような機能もついてるのかもしれない。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、15日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言]  囚われのニアさん……うーん、ここに来てヒロイン力を上げようとしてくるな?
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