590.光柱の巫女、変身?
(あるじ殿、『魔物人』は、頭と心臓両方を潰さないと倒せないようです)
『アラクネロード』のケニーから念話が入った。
『死人魔物』と共に出現した謎の怪物『魔物人』を早速倒したようだ。
そして重要なポイントを、すぐに報告してくれた。
さすがケニーである。
俺も、どうやったら倒せるのか気になっていた。
これでみんなに連絡できる。
俺は『絆』通信のオープン回線を使って皆に連絡し、戦っている衛兵や有志の武人に伝えるように言った。
『死人魔物』については、人型の頭を破壊する、『魔物人』については、人型の頭と心臓両方を破壊することで倒せるという情報だ。
ケニーがいる場所は『北ブロック』だが、すべてのブロックで同様に『死人魔物』と『魔物人』が出現しているのだ。
『死人魔物』も『魔物人』も皆レベル30以上で、中にはレベル40以上も者もいるようだ。
俺は、仲間たちに飛行型の魔物とともに、優先して倒すように指示を出した。
一般の衛兵では、かなわないだろうからね。
ここコロシアムの中でも、戦闘が行われているが、ここにはセイリュウ騎士たちや『高貴なる騎士団』の面々もいる。
表彰式に参加していた上位入賞者たちもいて、皆人々を守るために戦ってくれている。
ビャクライン公爵とその護衛の近衛兵も奮戦してくれている。
俺は、拡声の魔法道具を手に取り、皆に情報を伝える。
「胸から魔物の顔が出ている『死人魔物』は、人型の頭を破壊してください! オデコに魔物の顔が浮かび上がっている『魔物人』は、人型の頭と心臓両方の破壊で倒せます!」
俺の情報を聞いて、みんな的確に討伐を進めているが……なんだ!?
魔物の数がまた増えた……一体どこから?
「グリム、あそこ!」
ニアが叫びながら指差した。
避難民の中に、怪しい動きの奴がいる。
大きなトランクケースを持っている。
あれは……
俺は、その男に『魔法鞭』を放ち、手に当てトランクケースを落とさせた。
だがトランクケースは少し空いていたようで、落ちた瞬間大きく開いた。
そして、そこから大量の魔物が出現した!
まずい……人々が避難している闘技場スペースが、魔物で埋め尽くされてしまう。
そしてあのトランクは……多分俺の予想が当たっていたようだ。
俺は確認の為、『波動鑑定』をかける……
……やはりそうだ。
あれは、俺が持ってる魔法道具と同じだ。
『名称』が『箱庭ファーム タイプセパレート』となっている。
俺が持っているトランク型の魔法道具『箱庭ファーム』と同じ系統の魔法道具らしい。
『階級』も同じ『究極級』だ。
『箱庭ファーム』は、俺がダンジョンマスターをしている『プランター迷宮』で手に入れたものだ。
『プランター迷宮』は、失われた古代文明『マシマグナ第四帝国』のテスト用第五号迷宮である。
『箱庭ファーム』は、亜空間に、一時的な居住空間が作ってある特別な魔法道具なのだ。
そこに魂のある生き物も入れておくことができるので、その機能を使ったのだろう。
俺の『波動収納』もそうだし『アイテムボックス』スキルや魔法カバンも、魂のあるものは収納できないが、この魔法道具は事実上それができてしまうのだ。
もちろん亜空間に収納しているのと、亜空間に作った居住空間へゲートで繋ぐという違いはあるが、事実上は収納しているのと同じだからね。
この魔法道具なら敵陣に乗り込んで、ゲートを開けは魔物の軍団や軍隊を出して急襲することができる。
よく考えたら恐ろしい魔法道具だ。
自分で持っている分には便利だったが、こういう使い方をされると厄介この上ない。
そして、まさか『究極級』のこの魔法道具を『正義の爪痕』が持っていて、使ってくるなんて……思いもしなかった。
この『コロシアム村』全体……すべてのブロックに満遍なく魔物たちが出現していることを考えると……この魔法道具は一つでは無いのかもしれない。
(みんな魔物が急に出現した理由がわかった! 『箱庭ファーム』の魔法道具だ! そこから魔物を出現させたんだ! 一つは押さえたけど、他にも複数持っている可能性がある。怪しい動きをしている避難民を探して、魔法道具があったら回収してくれ!)
俺はすぐに、みんなに連絡を入れた。
(兄貴、もう手遅れかもしれない。こっちも一気に魔物が増えた!)
(あるじ、こっちもいっぱい増えた。でもリンがんばる!)
(旦那様、『西ブロック』ももう出し切ったかもしれません。数が増えました)
(『南ブロック』もです。でも魔法道具を探します!)
『北ブロック』の『魚使い』のジョージ、『東ブロック』にいる『エンペラースライム』のリン、『西ブロック』にいる『アメイジングシルキー』のサーヤ、『南ブロック』にいる『兎亜人』のミルキーから、報告が入った。
もうすでに、魔物を出し切ってしまったのかもしれない。
だが俺は、念の為、魔法道具を探して回収するように、改めて指示を出した。
それにしても……魔物の数が多い。
まずいなぁ……やはり人々を守りながらでは戦いづらい……
そんな時だ……コロシアムの中で、ひときわ光り輝く場所が出現した。
あれは……テレサさん……?
先輩巫女のサーシャさんとアリアさんもいる。
『従者獣』の赤ちゃんパンサーたちもだ。
光っている……
俺は『視力強化』スキルと『聴力強化』スキルを使って、彼女たちを注視する……
「神聖魔法、光柱の鎧!」
テレサさんが発動真言を唱えている……。
神聖魔法……? いつの間に……。
『光柱の巫女』になると、レアな魔法である『神聖魔法』が使えるようになる可能性があると言っていた。
この局面で、突然使えるようになったというのか……。
テレサさんの全身が光に包まれ、体の所々で光が渦巻いている。
そして……これは……まるで美少女ヒロインの変身じゃないか……。
光が収まり『光柱の鎧』を纏ったテレサさんが現れた。
神社の巫女さんが来ているような白い着物と赤い袴をベースにしたようなデザインの軽鎧だ。
上半身の白い着物部分は振袖になっている。下半身は赤いスカートだ。
各所に金色の縁取りがされている。
テレサさんも自分の手足を眺めて、驚いている感じだ。
「はい、わかりました。では……いきます! 光柱の錫杖!」
テレサさんが何やら呟きながら、また発動真言のようなもの唱えた。
もしかしたら……天声が聴こえているのか?
もしくは、神託が降りているのか?
今度は、右手に黄金に輝く錫杖が現れた!
「はい、わかりました。アスター来て」
「あい」
「いざ届けん! 神聖魔法……精霊のささやき! 従者獣の祈りのブレスで人々のもとへ!」
錫杖を構え、テレサさんが念じている……
すると……テレサさんの前に立っている『従者獣』アスターの口から、光るブレスが放射された!
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、2日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。励みになります。
よろしくお願いします。




