589.突然の、魔物発生!
全日程が終了し、観客が帰りだして安心していたところで、悲鳴が轟いた。
すぐに状況を確認する……
——なんだ!?
闘技場の中に、大量の魔物がいる!
バッファロー魔物、猪魔物、大ウサギ魔物、大ネズミ魔物、トンボ魔物、蛾魔物、蜂魔物、カエル魔物など種類も多い。
いったいどこから……?
全くそんな気配はなかったのに……転移してきたとでもいうのか……?
いや、今考えてもしょうがない……まずは対処をしないと!
俺は仲間たちに、『絆』通信のオープン回線で念話を繋いだ。
オープン回線なので、みんなと同時に情報共有できるのだ。
(みんな敵襲だ! 事前の打ち合わせ通り頼むよ。『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』『猿軍団』のみんなは、人々の誘導と護衛を頼む。予定通り地下シェルターへの誘導だ。マンツーマンは無理でも、できるだけ満遍なく護衛してくれ。他のメンバーは、現れた魔物の撃退を頼む。優先するのは、飛んでいる魔物だ。それ以外は、衛兵たちに任せても大丈夫だと思う)
俺はそんな指示を出し、全体の状況把握を開始する。
このときのために俺は、ハチの『使い魔人形』を五体起動し、オートモードで『コロシアム村』に分散して放っていたのだ。
『使い魔人形』は、『マシマグナ第四帝国』が作ったテスト用の第三号迷宮『アイテマー迷宮』で手に入れた魔法道具だ。
人形に魔力を通すと人造の『使い魔』となり、念による指示で自由自在に動かせるのである。
感覚共有機能で、視覚や聴覚などが共有でき、離れたところの様子も手に取るようにわかる優れ物なのだ。
必要のない時は、オートモードで自律行動させることもできる。
『コロシアム村』は、当初の予定よりも参加人数が多くなったことで面積が拡張し、『セイセイの街』以上の大きさになっている。
全体の状況把握をするのは大変なので、『使い魔人形』は本当に役立つアイテムなのだ。
俺は『使い魔人形』に感覚を共有して、状況を確認する。
まずい……コロシアム内だけでなく『コロシアム村』全体に出現している。
魔物たちは、どれもレベル15から30くらいまでだが、一般人にとってはレベル15でも危険な相手だ。
『コロシアム村』に配備されていた衛兵たちが、素早く魔物に対処している。
警備責任者のゴルディオン隊長が、的確な指示を出してくれているようだ。
それから、おそらく武術大会に出場した人たちだと思うが、腕におぼえのある人が、逃げる人たちを守るように魔物と戦っている。
コロシアムの中では、警備の衛兵とセイリュウ騎士の皆さんが魔物に対処してくれている。
アンナ辺境伯やエレナ伯爵たち『高貴なる騎士団』のメンバーも、同様に魔物の迎撃にあたっている。
『コロシアム村』は、巨大な四角形になっていて、中央に円形の『コロシアムブロック』がある。
それ以外は『東ブロック』『西ブロック』『南ブロック』『北ブロック』というように大通りで区分けできる構造になっている。
襲撃に対する備えとして、ブロックごとの迎撃担当者を、俺のパーティーメンバーの中で決めていたのだ。
レベルの高い仲間たちを、戦力の中核にするためだ。
みんな襲撃があるまではコロシアムいたが、俺の指示と同時に担当ブロックに出動している。
『東ブロック』に出動したのは、『竜馬』のオリョウ、『エンペラースライム』のリン、『ミミックデラックス』のシチミ、『ワンダートレント』のレントンだ。
『西ブロック』に出動したのは、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『アメイジングシルキー』のサーヤ、『家精霊』こと『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナ、『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウだ。
『南ブロック』に出動したのは、『スピリット・オウル』のフウ、『兎亜人』の姉弟ミルキー、アッキー、ユッキー、ワッキーだ。
『北ブロック』に出動したのは、『スピリット・タートル』のタトル、『魚使い』のジョージ、その『使い魔』で陸ダコの霊獣『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティ、虫馬サソリバギーのスコピンだ。
『コロシアムブロック』を担当するのは、『ロイヤルピクシーの』ニア、魔力調整の天才リリイ、『猫亜人』のチャッピーだ。
俺の分身『自問自答スキル』の『ナビゲーター』コマンドのナビー顕現体と『アラクネロード』のケニー人型分体は、別働隊として自由行動になっている。
「あるじ殿、地下の避難シェルターへの誘導は危険かもしれません。『死人魔物』が発生しています。『正義の爪痕』の構成員が紛れているか、一般人に『死人薬』が仕込んであるのかもしれません。避難シェルターの中で暴れられるよりは、地上の方が対処しやすいと思います。それから……『死人魔物』とは別のものが出現しています。人が生きたまま魔物化しているようですが……」
ケニーから、念話が入った。
どういうことだ!?
俺は、ケニーの近くのハチの『使い魔人形』に感覚を共有する。
確かに……『死人魔物』だ。
蛇の死人魔物が、十体以上出現している。
そして……あれはなんだ?
……明らかに『死人魔物』とは違う……。
人の顔のオデコのところに、小さな蛇の顔がある。
そして両肩から蛇が出ている。
同様にオデコに小さなサメの頭があり、両肩からサメが出ている者もいる。
俺は『使い魔人形』を通して、『共有スキル』の『鑑定』をかける。
なんだ!?
『種族』が……『魔物人』となっている。
やはり『死人魔物』とは違うようだ。
「お前ら、みんな殺してやる! 死ね!」
『魔物人』が、言葉を話している。
あきらかに『死人魔物』とは違う。
人としての意識を保って、思考しているようだ。
よくわからないが、人の意識を持ったまま魔物化したのか?
それとも魔物と融合させたのか……?
『正義の爪痕』は、人を魔物化させることに成功したというのか……?
『魔物人』も、ここだけで十体以上いる。
皆レベル30以上あるようだ。
(ケニー、人々の安全が第一だ。殲滅してかまわない。ここは頼むよ!)
(かしこまりました。あるじ殿の為、必ず守ります)
俺はケニーに対処を任せ、感覚を自分に戻した。
感覚を自分に戻したといっても、メインの感覚を戻しただけで、ケニー周辺の『使い魔人形』の視覚情報は、俺の視覚画像の中に小さな画面として表示されている。
これをやると視野が狭まるし疲れるのだが、緊急事態には役立つ機能だ。
視野が狭まるのと疲れることを我慢すれば、かなりの数の視覚画像を起動させることができるのだ。
俺は、オープン回線で皆に連絡する。
(みんな、状況が変わった。避難させるべき人々の中から『死人魔物』と『魔物人』というものが出現している。避難シェルターで暴れられると対処が面倒だ。よって、『プランB』を発動する。各ブロックの地上避難エリアへ誘導だ!)
俺は、不測の事態で地下シェルターに避難できない場合の対策も考えていた。
各ブロックの中央部分には大きな公園が作ってあって、有事の際に人を集めることができるようにしてあったのだ。
『コロシアムブロック』については、中央の闘技場がそのスペースになる。
地下のシェルター内で戦うよりは、この方が上空からの救援も行い易い。
そして何よりも、地上と地下に戦場が分散するのを避けることができる。
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