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577.魔法カバンの、プレゼント。

 俺は、ビャクライン公爵とアナレオナ夫人に、もう一つハナシルリちゃんに特別な贈り物をしたいという話をした。


 それは、魔法カバンのプレゼントだ。

 カレーのレシピのお礼という名目にした。

 そして、ハナシルリちゃんが大好きな本を持ち歩きたいと言っていたのを聞き、プレゼントを思いついたとも話した。


 実は、事前にハナシルリちゃんから魔法カバンが欲しいと頼まれていたのだ。

 もちろん公爵家であるビャクライン家にも魔法カバンはあるし、新たに手入する資金もルートもあるそうだ。

 だが、いかんせん四歳の女の子が使えるサイズの小さなカバンがないのだそうだ。


 ハナシルリちゃんは、俺の仲間になったことによって『共有スキル』が使えるので、『アイテムボックス』スキルが使えるから、本当は魔法カバンは必要ない。

 だが『共有スキル』は秘密になっているので、大っぴらに『アイテムボックス』スキルを使うことはできない。

 そこで、やはり魔法カバンが欲しいということだったのだ。

 確かに、堂々と使えるか使えないかは大きいよね。

 そこで、小さな魔法カバンがないか訊かれたのだ。


 俺が思い当たったのが、『正義の爪痕』の『血の博士』のアジトの隠し部屋にあった彼の魔法カバンコレクションである。

 変わった形の魔法カバンがいろいろあったが、全て報償として俺がもらっていたのだ。


 その中にウエストポーチ型の魔法カバンがあった。

 これなら小さいので、ハナシルリちゃんでも使えると判断したのだ。

 ウエストポーチとして使うのは、ゆるゆるで厳しいかもしれないが、肩から斜めがけにする使い方なら充分使えると思ったのだ。


 これをハナシルリちゃんに見せたら、ぜひ欲しいということだったので、プレゼントすることにした。

 色が黒で可愛い感じではないのだが、今にして思えば『ゴスロリ』ファッションにはマッチングすると思う。


『名称』が『魔法カバン ウエストポーチ型』で『階級』は『中級(ミドル)』だ。

中級(ミドル)』なので、かなりの容量だし、珍しい形なので、まともに手に入れようと思ったら、おそらく相当な金額になると思うんだよね。


 カレーのレシピの対価としては、結構相応かもしれない。


 内緒でプレゼントして、いきなりハナシルリちゃんが持っていたら、両親がびっくりするので、カレーのレシピをお礼という名目でプレゼントしてほしいと頼まれていたのだ。


 俺は、この珍しいウエストポーチ型の魔法カバンを取り出して見せた。


「おお……これなら確かにハナでも使えるね。ハナが大好きな本をいつでも持ち歩けるから、これはいいね」

「珍しい形の魔法カバンですのね。可愛らしい感じだし。しかも『階級』が『中級』だなんて。こんな貴重なものをいただいちゃって、本当にいいのかしら?」


 魔法カバンの現物を見て、ハナシルリちゃんでも使えることがわかり、ビャクライン公爵とアナレオナ夫人は喜んでくれた。


 俺は、『正義の爪痕』のアジトを潰したときの報償としてもらったものなので、遠慮しないでもらってほしいと伝えた。


 ハナシルリちゃんが使えるサイズの魔法カバンは、探してもなかなか手に入れることができないので、素晴らしいプレゼントだとアナレオナ夫人は感謝してくれた。

 ちなみにビャクライン公爵は、最初は感謝してくれていたのだが……ハナシルリちゃんが、あからさまに大喜びしてはしゃぎ、「グリムにぃに大好き!」と連呼してしまったので、途中から嫉妬が宿った眼差しを向けられてしまった。

 そして最終的には殺気になっていたが……トホホ。


 アナレオナ夫人によれば、魔法カバンは貴重で、『下級(イージー)』のものでも、相場としては五百万ゴルから一千万ゴルはするらしい。

中級(ミドル)』になれば、五千万ゴルから一億ゴルの値段がつくそうだ。

上級(ハイ)』だと、数億という値段になるらしい。

 そもそも『中級』と『上級』は、希少で出回ること自体が少ないとのことだ。

 現代では、人族には作れる魔法道具職人は、ほとんどいないらしい。

 そんな事情もあり、相場自体もかなり変動するようだ。

『中級』と『上級』の相場はともかくとして、『下級』の相場価格の五百万ゴルから一千万ゴルというのは、ある意味妥当かもしれない。

 倉庫を持ち歩いてるのと一緒だからね。

『下級』は、収納できる容量はそれほど多くないが、移動倉庫と思えばかなり便利だ。

 それに、魔法カバンがあれば災害時でも、貴重品を大量に持ち出すことができるしね。



 ちなみに、『血の博士』の魔法カバンコレクションの中にあった『上級』の魔法カバン『魔法カバン 紙袋型』は、『魚使い』のジョージにあげた。


『階級』が『上級』とはいえ、見た目がそのまんま紙袋なので、使う場面が限定される使いづらい品だった。

 普通に買い物で使うにはいいけど、手が塞がっちゃうので戦闘などでは使いづらいのだ。

 そんな感じで、死蔵品になりそうだったのだが……ジョージが興味を示したので、あげることにしたのだ。


「紙袋って、意外と使いやすいんですよ。んだんだ」


 ジョージはそう言って、かなり喜んでいたのだ。

 抑え切れない喜びが、最後のほうにハイブリット東北弁として出ていたからね。


 さすがにジョージも、普段遣いでは紙袋を持ち歩かないようだが、かなり紙袋が好きなようだ。

 ジョージが持つと、やけに似合うんだよね……。

 なんとなく……オタク臭がするが……。

 そういえば……ジョージは温泉アイドルユニット『339(ミミック)』のステージを見て興奮して、オタ芸のような踊りをしていたっけ。



 最後にアナレオナ夫人から話があって、なぜか『フェアリー商会』に『特別御用商会』の証書を出すと言われた。

 ビャクライン公爵領にも、セイバーン公爵領と同様にそういう制度があるそうだ。


 ユーフェミア公爵から『セイバーン公爵領特別御用商会』の証書を出したという話を聞いていたらしく、ビャクライン公爵領でも同様に『フェアリー商会』を優遇してくれるとの事だった。

 優良産業の招致という意味らしい。

 それ故、『フェアリー商会』の本格的な出店を早めるともに、カレー専門店も頑張ってほしいと言われた。


 ビャクライン公爵領でも『ビャクライン公爵領特別御用商会』の証書を持っている商会は、現在ないらしい。

 数日前に会ったばかりの俺を信用して、そんな特別な証書を出していいのかと思ったが……よく考えたら、俺というよりもユーフェミア公爵を信用しているということだろう。

 まぁいずれにしても……好意的に評価していただけるのは、ありがたいことだ。

 俺はありがたく頂戴することにした。

 ちなみにビャクライン公爵は、静かに頷いているだけで特に発言はなかった。

 やはり領政を実際に動かしているのは、アナレオナ夫人のようだ……がんばれ、溺愛オヤジ!




 

読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、19日の予定です。


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