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542.ギャップが、すごい。

 俺は、この世界に転移してきてからのこと、『後天的覚醒転生者』であるジョージとの出会いや彼から聞いた前世のことなどを掻い摘んで話した。


「じゃぁ、グリムさんは元いた世界の記憶が一部ないの? 特に人に関する部分の記憶がほとんどないの?」


 ハナシルリちゃんは、少し同情するような視線を向けた。


「そうなんだよね。人に関する記憶だけが抜け落ちている感じで、他の経験や知識はほとんど覚えている思う」


 俺は、つとめて明るく答えた。

 今のところ、人に関する部分の記憶がなくても、とくに困るということはないからね。


「なるほどね……そんなこともあるのね。それにしても……こんな美少年なのに、中身が四十五歳のおじさんなんてね……。まぁでも、見た目が若くて……中身が経験を積んで熟成されたナイスなおじさまっていうのもありかもね……ムフフフ」


 ハナシルリちゃんが、ニヤけている。

 さっきから話す言葉や話し方が、完全に大人に変っちゃってる。

 今なんか怪しい笑みを浮かべちゃってて……もう違和感しかない。

 さっきまで滅茶苦茶かわいい四歳児だったのに……。


「でも十八歳の外見のせいか、心の年齢も若返ってきている気がするんだけどね。ただ心の年齢なんていうステータスはないから、気のせいかもしれないけどね。ところで、ハナシルリちゃんは前世ではいくつだったの?」


 女性に年齢を尋ねるのは失礼と思いつつも、気になったので尋ねてしまった。


「……年齢……二、二十二歳よ!」


 あれ……ハナシルリちゃんの目が泳いでいる。

 絶対サバ読んでる……というか完全に嘘だなこれ……。

 ニアも同じように感じたらしく……ハナシルリちゃんにジト目を向けた。


「ちょっと、ハナシルリちゃん、正直に言わないとダメでしょ!」


 ニアが軽く問い詰めた。


「おほ、おほほほほ……」


 ハナシルリちゃんは、笑って誤魔化したのだが……ニアは相変わらずジト目を向けている。

 そして俺もジト目を向けた。

 なんか人にジト目を向けるのって……いいかも。

 いつもは自分が向けられていたけど……。


「わ、わかりました。わかったわよ! 正直に言えばいいんでしょう。三十五歳よ! 小娘でもなく、おばちゃんでもない、ちょうどいい熟れっ熟れの時に死んじゃったのよ!」


 ハナシルリちゃんは観念して教えてくれたが、ヤサグレた感じで逆ギレしてしまった。


 四歳児の超絶可愛い外見と今の言動のギャップが凄すぎる……。

 こんな姿……溺愛オヤジとシスコン三兄弟が見たら……ショック死するに違いない。

 まさに殺人級のギャップだ……。

 “ギャップ萌え”という言葉があるが……“ギャップ死に”という言葉ができてしまいそうだ……。


 俺は、外見と言動との超絶な違和感に耐えながら、引き続き色々と話を訊き出した。


 それによると……


 やはり前世は、日本で暮らしていたらしい。

 俺がいた日本と完全に同じかどうかはわからないが。

 そして三十五歳で事故に遭い、死んでしまったようだ。

 一人暮らしで独身だったらしい。

「男にモテすぎて、一人に絞りきれなかったのよね」と尋ねてもいないのに、独身だった理由を言っていたが……とても残念感が漂っていたので、スルーしてあげた……久々のやさしさスルー発動。

 なんとなく……ハナシルリちゃんは、ニアと同じような残念感が漂っている……。


 死んでこの世界に生まれ変わったわけだが、死んでから生まれ変わるまでの間のことはよくわからないらしい。

 神様のような存在に会って話をするとか、スキルを授けられるとか……そんなことがなかったか、期待して尋ねたのだがよくわからないとのことだ。


 生まれる瞬間の記憶も、あやふやらしい。

 ただ次に目覚めてからは、記憶がしっかりしていて、もちろん前世の記憶も全て持っていたそうだ。

 赤ちゃんの時から、いわば物心ついた状態だったわけで、大体のことは覚えているようだ。

 もっとも赤ちゃんの時は、ほとんど寝ていて実際にはあまり覚えていないらしい。


 中身は前世の三十五歳の記憶と経験を持っていても、体は子供なので睡眠欲求などには勝てないのだそうだ。

 今でも、すぐ眠くなるらしい。


 それから、生まれて最初に驚いたのは、自分の名前だったそうだ。

 ハナシルリという名前は、ビャクライン公爵の母親つまりハナシルリちゃんのおばあさんが名付けたらしい。

 最初は何を驚いたのかと思ったが、ハナシルリちゃんの話を聞いて確かに俺も驚いた。


 なんと、ハナシルリちゃんの前世の名前は……葉梨(はなし)瑠璃(るり)だったらしい。

「思わず、“嘘でしょ”って叫びそうになったわよ」とハナシルリちゃんが言っていたが、確かに驚くよね。

 嘘のようなホントの話って、こういうことを言うのだろうか。


 おばあさんは何か特殊な力を持っていたのかもしれないと思って、ハナシルリちゃんに訊いてみた。

 彼女もそう考えたらしく、三歳になったときになんでハナシルリという名前をつけたのか訪ねたのだそうだ。

 でもおばあさんの答えは、「なんとなく思い浮かんだのよ。響きも綺麗でいいと思ったの」だったそうだ。

 おばあさんは、ただの閃きと言ったものの、ハナシルリちゃんは何かあるのではないかと考えているらしい。

 とても勘のいい人らしいので、少なくても霊感のようなものはあるのかもしれない。


 おばあさんは、母親のアナレオナさん同様、ハナシルリちゃんの良き理解者で、子供だからと馬鹿にしないで、大人に接するように話をしてくれるのだそうだ。

 ハナシルリちゃんは、おばあちゃんが大好きらしい。


 それから、生まれてすぐでも自分のステータスが確認できたようで、『称号』の『先天的覚醒転生者』であったり、『固有スキル』などは隠した方がいいと判断し、『ステータス偽装』のスキルで偽装していたらしい。

 ちなみに、『通常スキル』の『ステータス偽装』や『固有スキル』の『女子力』『女の勘』は、生まれた時から持っていたそうだ。

 『通常スキル』の『速読術』は、大量の本を読み漁っていたら取得したとのことだ。


 ハナシルリちゃんの現在のレベルは5で、普通の四歳児はレベル2くらいらしいのでかなり高い。

 もちろん魔物とかと戦っていたわけじゃないので、普段の生活の中で本を読んだりして経験を積んでレベルが上がったようだ。

 普段の生活と読書だけで、そこまで経験値が積めるなんて……。

 おそらく……いろんな経験をするために活発に活動していたに違いない。

 読書の量もすごかったらしいし。




読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

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次話の投稿は、15日の予定です。


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よろしくお願いします。

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