516.祝福の、ロザリオ。
翌日の午前、『総合教会』は大変なことになっている。
本日朝一番で、『光柱の巫女』が現れたことが知らされたからだ。
ただでさえ『三領合同特別武官登用武術大会』で沸き立っていたところに、『光柱の巫女』まで出現したという情報がもたらされて、街はパニック気味だ。
そして早速、『光柱の巫女』に『祝福』を授けてもらいに、人々が押し寄せているのだ。
熱心な信者だけでなく、にわか信者も含めかなりの数が教会に押し寄せている。
当然、馬車を止める駐車場もすぐいっぱいになった。
教会に続く通りも、訪れる人で行列ができてしまっている。
ただこれを見越したユーフェミア公爵が、周辺の空き地を購入してくれたので、昨日の夕方の時点で整備できるところは俺が整備していた。
馬車が立ち往生すると困るので、第二駐車場、第三駐車場、第四駐車場を作っていたのだ。
お陰で何とか対応できているが、それでももういっぱいになりそうだ。
人の行列の途中の空き地には、休憩所を作った。
ただ、行列に並んでいる途中で休憩すると、行列から抜けてしまうので実際には並んでいる人は休憩できないんだけどね。
その休憩場所には、喉が渇いた人用に『フレッシュジュース』屋台も出した。
この屋台は、この街での『フェアリー商会』の立ち上げメンバーになってくれた元『花色行商団』の大人メンバーが運営してくれている。
この感じだと……しばらく『総合教会』への参拝フィーバーが続きそうだ。
もう少し周辺整備をした方がいいかもしれない。
そして参拝に来る人たちが購入できるように、食べ物の屋台も出した方がいいかもしれない。
参拝者を相手に商売するのは、何となく気が引けなくもないが……並ぶだけより、美味しいものが食べれた方がいいと思うんだよね。
門前町での食べ歩きも、楽しみだったりするからね。
みんな『光柱の巫女』であるテレサさんから『祝福』を受けるために参拝に来ている。
いくらか寄進して『祝福』を受けるのが通例なので、教会もだいぶ潤うはずだ。
だがずっと『祝福』を授けるテレサさんは、かなり大変だと思う。
適度に休みを入れてあげないと無理をしてしまいそうなので、当面、犬耳の少年バロン君と孤児院の“十二歳お姉さん女子三人組”に交代でマネージャーになってもらうことにした。
それから俺の発案で、希望者に特別なロザリオを販売することにした。
神社仏閣に行ったときにお守りや縁起物を買うイメージで、提供できるものを作りたかったのだ。
そういうものが欲しい人もいるだろうし、参拝に来れない人にプレゼントしたい人もいるだろうと思ったのだ。
参拝者相手に商売する感じになるが、意外と喜ばれるんじゃないかと思う。
俺も神社などに行った時は、お守りやお札を買ったり御朱印帳に記帳してもらったりするのが楽しかったから、やってみることにしたのだ。
当面は一種類だけの販売で、『祝福のロザリオ』という名称にした。
ロザリオは数珠状の祈願道具で、祈りを捧げるときに手に握るものだ。
この世界では、お守りのように持つものでもあるらしい。
材料だけ俺が用意して、子供たちに作ってもらうことにした。
これで教会と孤児院の安定収入になってくれればいいと思っている。
このロザリオには、別個にテレサさんが『祝福』の祈りを注いでくれている。
ちなみに『波動鑑定』をすると……
『名称』は、俺が名付けた通り『祝福のロザリオ』となっていて、詳細表示が現れ……『光柱の巫女による祝福を授けられた祈願道具。精神波動を上昇させる効果がある』と表示された。
『鑑定』スキルを持つ人は非常に少ないので、この内容がわかる人は少ないかもしれないが、見る人が見れば特別なロザリオであることがわかるはずだ。
ちなみにロザリオを作る石は、『ピンクベリル』という石を使った。
テレサさんが元々持っていたロザリオが、この石を使っていたからだ。
できれば似たものを作りたいと思ったのだ。
そして『ピンクベリル』を探したところ、宝石を専門に扱う商会があって、そこにある程度の数があったので、まとめて買ってしまった。
ちなみに『ピンクベリル』という石は、おそらく俺が元いた世界にあった『モルガナイト』というパワーストーンと同じようなものだと思う。
『モルガナイト』の別名が、たしか『ピンクベリル』だった気がする。
『ピンクベリル』を綺麗に丸く加工することは、今の俺ではできない。
糸を通すために穴を開けることはできるので、同じような大きさに揃えて穴を開けたパーツを沢山作った。
頑張れば、綺麗な丸い玉に加工できるかもしれないが、面倒くさいし今回はやめておいた。
不揃いな石を繋げても、結構味があっていい感じなのだ。
子供たちのセンスで作れるので、そのほうが面白いと考えた。
どうせ手作りなんだし、統一されてない方がオンリーワンな感じでいいと思う。
将来的に量産品を作ったり、綺麗に丸く加工したくなったら、『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんに頼めば、子供たちにも使えるような装置を作ってくれそうな気がしている。
『フェアリー商会』では、宝石などの加工部門を作っていないので、今まであまり真剣に考えたことはないが、宝石を加工する設備があったら便利かもしれない。
今度ミネちゃんに相談してみよう。
あと単純な石の加工なら、おそらく『石使い』のカーラちゃんに頼めばできそうだが、孤児院の子供たちだけで運営できなくなってしまうので、頼むのはやめておいた。
そういえば……ここ数日ミネちゃんが遊びにきていないが、リリイとチャッピーの話によると人族の天才少女ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんと一緒に、秘密基地でいろいろ作っているらしい。
ちょっと楽しみなような……ちょっと怖いような……。
『祝福のロザリオ』は、三千ゴルという価格設定にしたが、飛ぶように売れている。
価格設定は、だいぶ悩んだが、今のところ問題ないようだ。
三千ゴルという金額は、俺の元いた世界の三千円くらいなので、お守りだと高いし、パワーストーンのアクセサリーだと安いという金額なのだ。
採算的には二千ゴルで売ることも可能だったが、最初は強気に三千ゴルでいくことにしたのだ。
子供たちの心のこもった作業やテレサさんの心からの祈りはプライスレスだから、三千ゴルでいいだろう。
今後バリエーションを増やすときに、もう少し購入しやすい安いものや、高級志向の人のための高いものを作っていけばいいと思っている。
それにしても……予想以上に売れている。
在庫がすぐになくなりそうで、かなりやばい感じだ。
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