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491.聖血生物、誕生!

 現れたのは……白い蝙蝠だった。

 二メートル程の大きさは変わっていないが、色が黒から白に変わっているのだ。

 そして顔も丸みを帯びて……温和な顔つきになっている。

 大きな黒目がくりくりしていて、ちょっとかわいい感じにすらなっている。


『波動鑑定』すると……


『種族』が、『聖血(ホーリー)蝙蝠(ヴァンパイアバット)』となっていた。

 『状態』表示は『グリムの眷属』となっている。

 どうやら『聖血鬼』と同じように、新しい種族ができてしまったようだ。

 そして俺の眷属らしい。


 ————新しい種族『聖血(ホーリー)蝙蝠(ヴァンパイアバット)』が創造されました。これにより『聖血生物』という新しいカテゴリーが発生しました。『聖血生物の主』になりますか?


 おお! 天声だ!

 気まぐれな天声が、頭の中に響いた。

 そして……また凄いことを尋ねてきている。

 新しいカテゴリー……?

聖血(ホーリー)蝙蝠(ヴァンパイアバット)』の主でなく……『聖血生物の主』になるのか……?


 ————『聖血生物の主』になりました。『聖血生物』の基本情報が確認できるようになりました。今後一定の範囲内で、『聖血生物』に権能を与えることができるようになります。


 また、天声が頭の中に響いた。

 でたよ……俺の返事を聞かずに、オーケーになっちゃうパターン……。

 毎回思うけど……ほんとなんなのよ!

 返事を待たないなら、聞かないでほしいんですけど……。


 念のため自分の『称号』を確認すると、やはり『聖血生物の主』が追加されていた。


 俺は、改めて『聖血(ホーリー)蝙蝠(ヴァンパイアバット)』を『波動鑑定』してみることにした。

『種族』の『聖血(ホーリー)蝙蝠(ヴァンパイアバット)』に焦点を当て、詳細表示と念じてみる。


 すると……種族の特徴が表示された。


 『吸血生物が変性して発生した新しい種族。吸血生物の闇の属性が浄化され、聖なる属性になった種族。系統としては聖獣に近い。吸血生物の特徴であった吸血衝動はなくなり、太陽光により活動エネルギーを補充できるようになっている。吸血鬼を含むアンデッドに対して、特効を持つ身体になっている。

 吸血能力を持つ通常生物が、吸血鬼により強化され特殊な存在である吸血生物になっていたが、聖なる属性を持ち新しい種族にまで変性した存在』


 という凄い内容が表示されている。

 太陽光でエネルギー補給ができるというのは『聖血鬼』と同様だが、違う点は吸血鬼だけでなく他のアンデッドに対しても特効を持つ体になっているということだ。

『聖血鬼』は、『ヴァンパイア』と『ヴァンパイアハンター』の良いところを足したような存在になっていたが、この『聖血生物』は、アンデッドに対抗できる生物という感じだ。

 一味違った凄い種族になっちゃっている……。


 試しに、『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』にも俺の血を飲ませてみたが、同様に変性した。

『種族』が『聖血(ホーリーヴァンパイア)(モスキート)』になって、聖血生物としての特徴も同じだった。

 体色は、やはり白く変わっていた。


 俺は、それぞれ十体づつ新しい眷属を得ることになった。


 この『聖血生物』たちは、レベルは元の40のままだが、『種族固有スキル』を持っていた。

聖血(ホーリー)蝙蝠(ヴァンパイアバット)』は、『聖なる超音波』というスキルで、音波攻撃ができるようだ。

聖血(ホーリーヴァンパイア)(モスキート)』は、『聖なる刺突』というスキルで、口針での刺突攻撃ができるようだ。



 吸血生物たちを制圧した俺たちは、大型船に向かった。

 おそらく、あの中に『正義の爪痕』の構成員たちがいるはずだ。


 俺たちが近づくのを察知し、大型船から五人の男が飛び出した。


 『波動鑑定』をかけると……奴らはやはり『正義の爪痕』の構成員で『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』だった。


「ここは私に任せてください!」


 キャロラインさんが突然そう言って、前に出た。


 やる気満々なオーラを出している。


 『聖血鬼』になってパワーアップしているキャロラインさんなら、任せても大丈夫だとは思うが…… 五人を相手にするのは少し心配だ。


「キャロラインは、私がフォローします! 任せて大丈夫です!」


 今度はエレナさんがそう言って、キャロラインさんのあとに続いた。


 まぁあの二人なら大丈夫だろう。

 すぐ近くで待機しているから、何かあっても助けられるし。

 俺は仲間たちに合図を送り、キャロラインさんたちに任せることにした。


『ヴァンパイアナイト』たちは、剣を抜きジグザグな軌道の超速移動で、キャロラインさんたちに迫る。


 キャロラインさんも、スピードでは負けていない。

 近づく一体のジグザグな軌道に合わせ正面に位置すると……指先から赤いレーザーのようなものを発射した!


 ——ボンッ


『ヴァンパイアナイト』は、避ける間もなくレーザーに腹を射抜かれた。


 だが『ヴァンパイアナイト』の超回復力からすれば、致命傷にはならないだろう……と思っていたのだが、レーザーで射抜かれた『ヴァンパイアナイト』は、地面に転がりのたうちまわっている。


 レーザーが直撃した腹部からは、蒸気が上がっている。


 これは『下級聖血鬼 ホーリーヴァンパイア』の『種族固有スキル』の『熱き血潮』による攻撃だろう。

 指先から超高温のレーザーを発する攻撃である。

 これには、太陽光に似た性質があり、『ヴァンパイア』に対して特効があるのだ。

 血のような赤黒い色の光線だが、太陽光収束ビームのような感じで、焼いて蒸発させることができるようだ。


 転がる一体に向けて、キャロラインさんはすかさず『ドワーフ銀』のダガーを投擲して、胸に突き刺し無力化した。


 そして、残る四体が一斉にキャロラインさんに飛びかかってくる。


「血煙の舞!」


 キャロラインさんはそう叫ぶと、両手の平を前方に突き出した。

 手のひらからは、赤いエネルギー波が放出され、それが広がりながらクモの巣状のネットを作り出した。

 同時に赤い霧も発生し、前方から襲い来る『ヴァンパイアナイト』たちの視界も遮った。


 四体の『ヴァンパイアナイト』は、正面衝突ようなかたちでネットに激突し固定されてしまった。

 本当にクモの巣にかかった虫のようになっている。


 そして、クモの巣状の赤いエネルギーネットに触れているところから、蒸気を出して苦しんでいる。


 これは、『中級聖血鬼 ホーリーヴァンパイアナイト』の『種族固有スキル』の『血煙の舞』による防御障壁である。


 このスキルは、赤い霧で視界を遮りつつ、防御障壁を展開するもので、『熱き血潮』同様に『ヴァンパイア』に対して特効があるのだ。

『ヴァンパイア』が触れると、捕らえて固定化するという性能を発揮する。


 防御障壁に捕まった四体に対し、キャロラインさんは速攻で『ドワーフ銀』のダガーを突き刺した。

 その後、防御障壁を解除した。


 襲ってきた『ヴァンパイアナイト』は、あっという間に無力化されてしまった。


 フォローをかって出てくれたエレナさんも、出番なしのキャロラインさんの瞬殺の活躍だった。


 キャロラインさんが使った二つの『種族固有スキル』は、最近新しく発現したものだ。

 吸血鬼に対しては特効を持っているし、かなり使えるスキルのようだ。

 通常の魔物に対しても、充分有効だと思う。

 実戦で使う機会がなかったので、使ってみたかったのだろう。


 元々キャロラインさんは、『聖血鬼』の『種族固有』スキルとして『献血』と『聖なる翼』を持っていた。

『献血』は、『聖血鬼 ホーリー・ヴァンパイア』の時点で身に付く能力で、対象者に噛み付き、聖なる血を流し込むことで、対象者の自然回復能力を高めるというものである。

 吸血鬼に対して使うと、毒と同等の効果を発揮して継続ダメージを与えることもできる。

『聖なる翼』は、『聖血鬼 ホーリー・ヴァンパイアナイト』になると身に付く『種族固有スキル』で、一時的に聖なる翼を得て、飛行することができるというものだ。

 背中に真っ白で綺麗な蝙蝠の羽が生えて、飛行できるようになるのだ。


 この二つの『種族固有スキル』はかなり優秀ではあるが、直接の攻撃スキルではないので、攻撃スキルがあるといいと思っていたところ、突然スキルが発現したのだ。


 『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーの見解では、どうも俺が強く思ったので発現したのではないかとのことだ。

 前に聖血鬼の主になった時に、『 ————『聖血鬼(せいけつき)の主』になりました。『聖血鬼(せいけつき)』族の基本情報が確認できるようになりました。今後一定の範囲内で、『聖血鬼(せいけつき)』族に権能を与えることができるようになります。 』と天声が言っていた。

 おそらく俺の思いが、権能……スキルを発生させたのではないかとの推測だった。

 権能=スキルとは限らないが、この力が発動した可能性が高い。

 そう思って試しに、回復系の能力が発生してほしいと強く思ったら、回復系のスキルも発現してしまったのだ。

 ただ、その後は……いろいろ思ってみたが、何のスキルも発現しなかった。

 一旦は、打ち止めということなのかもしれない……。


 ちなみに、その時発現した『種族固有スキル』は、『下級聖血鬼 ホーリーヴァンパイア』が身に付ける『止血再生』という回復スキルと、『中級聖血鬼 ホーリーヴァンパイアナイト』が身に付ける『万能血清』という解毒のスキルだった。


 したがって、『聖血鬼』は現時点で、『下級聖血鬼 ホーリーヴァンパイア』として『献血』『熱き血潮』『止血再生』を身につけ、『中級聖血鬼 ホーリーヴァンパイアナイト』として『聖なる翼』『血煙の舞』『万能血清』を身につけることになる。


 なかなかに、強力だと思う。



 ここを襲ってきた『正義の爪痕』の構成員は、キャロラインさんが倒した五体で全てだと思いたいが……念のため『波動検知』をかける。


 ——波動検知……


 …………………………いや、まだだ!


 まだ船の中に五人潜んでいる!


「みんな、まだ終わってないようだ! 船に五人いる!」


 俺がみんなにそう声をかけて、動き出した時だ……


 こちらの動きを察知したかのように、船から残り五人の構成員が飛び出した!





読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、25日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  祝500部分な点? [一言] > 吸血能力を持つ通常生物が、吸血鬼により強化され特殊な存在である吸血生物になっていたが、聖なる属性を持ち新しい種族にまで変性した存在  コウモリとカは実は…
[良い点] 『どこそこの』だれだれ という表現大変助かります。 まとめ読みしている時は、若干くどいと思うことがありますが、しばらく時間を空けると「この人誰だっけ?」ということがよくあります。 書いてい…
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