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489.孤島の、異変。

 ようやく孤島が見えてきた。


 秘密基地での実験をした翌日の夕方、俺たちはヘルシング家が管理している孤島にようやくたどり着いた。


 目立たないようにマナゾン大河上空を『飛竜船』で飛び、ほぼ丸一日かけてようやく南の海に出た。


 飛竜たちは、サーヤの転移を使って交代要員を連れてきながら連続飛行した。


 海は、俺が知っている海そのもので、綺麗な南国の海という感じが上空からでもわかった。

 ほんとは、ゆっくり見ていきたかったが、先を急いで上空から眺める程度にした。


 今は孤島に着陸しようと、高度を下げながら近づいているところだ。


 あれ……船がある……


 岩陰に隠れていて気付くのが遅れたが、入江のビーチの端に大きな船が止まっているのだ。


 この島に暮らしている善良な吸血鬼たちの船かと思ったが……エレナさんとキャロラインさんの反応を見る限り違うようだ。


「あれは……船……なぜこの島に……」

「これはもしや……」


  二人は、戸惑いの表情だ。


 船には人の気配が感じられないので、もう既に上陸しているようだ。


「あの小山に洞窟があります。手前に開けた場所がありますので、そこに『飛竜船』を着陸させてください!」


 エレナさんからの指示に従い、『飛竜船』をすぐに着陸させた。


 確かに小さな山の裾野になっているところに、穴が開いていて洞窟の入り口がある。


「私たちが先行します!」


 エレナさんはそう言うと、キャロラインさんと共に超速移動で洞窟の中に飛び込んでしまった。


 俺も仲間たちと共に、すぐにあとを追う。

 今回連れてきたのは、ニア、リリイ、チャッピー、『ドワーフ』の天才少女ミネちゃん、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃん、『魚使い』のジョージ、その使い魔(ファミリア)の『陸ダコ』の霊獣オクティ、仲間の虫馬『サソリバギー』のスコピンだ。

 サーヤには、一旦戻ってもらっている。

 なにかあったら、他の仲間とともにすぐに駆けつけてくれるだろう。


 洞窟の中に入ると一本道で、少し進むと小さな空間があったが、そこには誰もいなかった。

 さらに奥から気配を感じるので、そのまま通路を進むと大きな広場に出た。


 え……二人が大勢の人……おそらく吸血鬼に囲まれている。


 これは……


 俺はすぐに助けようと思ったのだが、エレナさんが吸血鬼に向かって話しかけている。


 ということは、この人たちがここで暮らしていた善良な吸血鬼たちなのか……。


 少しだけ様子を見ることにした。


 『聴力強化』スキルで、会話を拾う。


「あなたたち……どうして……」

「これは何のつもり、武器を下ろしなさい!」


 エレナさんとキャロラインさんの必死の呼びかけに、吸血鬼たちは反応しない。

 だが……目から涙を流している吸血鬼もいるようだ。


 この感じ……何かおかしい。

 俺は『波動鑑定』をかけてみる……


 やっぱり……『状態』表示が、『命令による服従状態』になっている。


 おそらく、誰かにスキルの力で従わされているのだろう。


 いや……こんなことができるのは『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』以上の存在だろう。

 中級吸血鬼の『種族固有スキル』の『血の命令』は、下級吸血鬼に命令し従わせることができるスキルだったはず……。

 おそらく、そのスキルを使われたのだろう。

 ということは……ここに来ているのは、『正義の爪痕』の死んだ『血の博士』の部下である『ブラッドワン』のメンバーかもしれない。

 もしあの入江に停泊してあった大型船で、マナゾン大河を南下してヘルシング伯爵領から来たのだとすれば、距離を考えると、俺たちが『血の博士』を倒すより前に指示を受けて出発していたはずだ。

 おそらく『血の博士』が、前伯爵のバランさんからここの情報を聞き出すことに成功したのだろう。

 思わぬところで『ブラッドワン』の残党と出くわしたようだ。

 ただ奴らは、『血の博士』が死んだことも『正義の爪痕』が壊滅的な被害を受けたことも知らない可能性が高い。


 俺は、俺の『眷属(トライブ)』で『聖血鬼』のキャロラインさんに念話をつなぐ。

 エレナさんには念話できないが、キャロラインさんにはできるので、こういう局面では便利である。


(キャロラインさん、ここの人たちは、おそらく『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』の『種族固有スキル』の『血の命令』による『服従』状態です。一旦、『ドワーフ銀』で無力化してください。私たちも援護します。エレナさんにも伝えて下さい)


(わかりました)


 キャロラインさんは、すぐにエレナさんに事情を説明し、制圧に乗り出した。

 彼女たちの近くにいるのは、善良な『ヴァンパイア』だった人たちだけのようだ。

『服従』状態にあるので、自主的な超速移動はしていない。

 彼女たちに任せておけば、大丈夫だろう。

 彼女たちには、『ドワーフ』のミネちゃん特製の『ダガーベルト』を渡してある。

 このベルトには、『ドワーフ銀』でできた投擲用のダガーが、ベルト一周分ついているのだ。


 俺たちも制圧に乗り出そうとした時、多くの『ヴァンパイア』が超速移動を開始した。


 エレナさんたちの近くにいたのは、善良な『ヴァンパイア』だった者たちだが、少し離れたところには封印を解かれた『ヴァンパイア』がいたようだ。

 彼らが攻撃行動に移ったのだ。

 奴らは『血の命令』を使われておらず、自らの意思で攻撃を仕掛けてきている。


 リリイとチャッピーは、超速移動についていけるだろうが、ミネちゃんとドロシーちゃんには難しいだろう。


「千手盾、ミネちゃんとドロシーちゃんを守れ!」


 俺は、『魔盾 千手盾』を出して、ミネちゃんたちの方に投げた。


 だがミネちゃんたちは、戦う気十分のようだ。

 ミネちゃんは、お腹の魔法ポケットから筒状の物体を二つ出すと、一つをドロシーちゃんに渡した。


 あれは、以前に見た『拡散バズーカ砲』のようだ。

 確か……正式名称は、『拡散魔砲』となっていたはずだ。


 二人は、超速で動く『ヴァンパイア』たちを気にせず、一つの塊と捉えて、ドワーフ銀の散弾の拡散バズーカを発射した!


 並んだ二人から発射された散弾は、超広範囲の面攻撃となった。


 パチンコ玉サイズの『ドワーフ銀』の弾丸が運悪く胸に命中した『ヴァンパイア』は、仮死状態となって硬直し横たわった。

 胸以外に当たった『ヴァンパイア』は、傷口から蒸気を出して苦しんでいる。


 そこにつかさず、ジョージの相棒オクティが八本の腕から『ドワーフ銀』のダガーを投擲した。

 見事に胸に命中し、仮死状態にした。

 オクティも『ダガーベルト』を装着していたのだ。

 だが残念なことに腰といえる場所がないので、タコの頭の部分に鉢巻のようにベルトを巻いている。

 ベルトには、ダガーが縦に何本も下がっているので、腰蓑を頭からかぶっているような感じにも見える。

 まぁとにかく……残念な感じのスタイルになっているのは間違いない。


 だがこういうときに、八本の腕というのはすごい効果を発揮している。

 百発百中の投擲が、一度に八つも放てるからね。

『共有スキル』に『投擲』スキルがセットしているので、普通の状態では、ほぼ百発百中なのだ。


 ジョージは、『サソリバギー』のスコピンに騎乗し『ヴァンパイア』たちを跳ね飛ばしている。

 そして試作品の『ヴァンパイア』専用武器である『直列銀牙槍』を、『ヴァンパイア』の胸に突き刺している

 胸に突き刺さった穂先は脱着して、外れる形になっているが、うまく機能しているようだ。

 次の穂先を別の『ヴァンパイア』の胸に刺している。

『ヴァンパイアハンター』とその従者を集めて創設される『銀牙騎士団』に配備される予定のこの槍は、ミネちゃんとドロシーちゃんによって、『直列銀牙槍』と名付けられたのだ。

 その試作品を、ジョージが借りたようだ。


 リリイとチャッピーは『ダガーベルト』を装着し、『ドワーフ銀』のダガーを連続で投擲している。

『ヴァンパイア』たちの超速移動に、難なくついていっている二人は、余裕で胸に命中させている。


 俺は、『ドワーフ銀』製の短矢カートリッジをセットした『連射式クロスボウ』を試し打ちしている。


 使い心地は、中々いいようだ。

 ただ『ヴァンパイア』は超速移動するので、距離があると交わされる可能性が高い。

 中距離程度に近づけば、確実に有効な武器だ。

 もっとも遠距離でも、連射ができるので『数撃ちゃ当たる戦法』で何とかなってしまう感じだ。


 ニアは、ニアサイズの使える『ドワーフ銀』の武器がないので、攻撃はしていない。

 エレナさん達のところに行って、無力化した善良な『ヴァンパイア』たちの『服従』状態を『種族固有スキル』の『高貴な瞳』を使って解除してあげるようだ。

『ロイヤルピクシー』の『種族固有スキル』である『高貴な瞳』は、各種の状態異常を解除できる回復スキルなので、おそらく『服従』状態も解除できるだろう。



読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

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次話の投稿は、23日の予定です。


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