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486.対ヴァンパイア、専用武器。

 翌朝、ヘルシング伯爵領の領都で行われた新領主のお披露目式典は、無事に終了した。


 エレナさんは、領民にとってヒーローというかヒロインのようで、皆歓声をあげていた。


 領都の住民に対しては肉が振る舞われ、みんな大喜びだった。

 この肉は、俺が提供した。

 魔物の肉も大量に『波動収納』にストックしてあるのだが、今回はこの領を襲った『吸血蝙蝠(ヴァンパイアバット)』の肉を使うことにした。

 倒した後の死骸は仲間たちが回収していたが、最終的に俺の『波動収納』にストックしていたのだ。

 試しに食べてみたところ、充分美味しくいただける肉だった。

 食感は鶏肉っぽいが、味はどちらかというと牛肉に近い感じだ。

『ヴァンパイア』のスキルの力で強化されて大きくなったものだが、食べても特に支障はなかったので、今回の振る舞い肉に使うことにしたのだ。

 ピグシード辺境伯領で振る舞った時と同じように、その場で焼いて食べることができるように、焼き場をいくつも作った。

 炭火で焼いた方が美味しいしね。

 焼き場をいくつも作って、みんなが参加しながら焼いて食べると、全体の宴のようになって雰囲気も楽しくなるのだ。

 本日は領都だけだが、今後各市町で住民に対して同様に肉が振る舞われる予定だ。

 ちなみに『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』もけっこうな大きさなので、肉の部分が多く食べれそうな感じではあったのだが……俺的には食べる気がしなかったので、そのままにしてある。



 式典は午前中で終わり、午後になってエレナさんから会議室に呼ばれた。


 もう旅立つつもりで、挨拶に向かおうと思っていたので、丁度いいタイミングではあった。


 エレナさんからは、新たにお願い事をいくつかされてしまった。


 それは、式典に参加していた貴族たちを、『飛竜船』で各市町に送ってほしいとの依頼だった。

 領城に来る時も、依頼を受けて『飛竜船』を出したのだが、帰りも頼みたいとの事だった。

 早く帰って、仕事に励んでもらいたいということだろう。

 確かに『飛竜船』で帰るのと、馬車を使って帰るのでは雲泥の差があるからね。

 馬車で通常三日程の行程でも、『飛竜船』なら数時間で着いてしまうからね。


 この輸送については、『フェアリー商会』に仕事として発注し、代金を払うと申し出てくれたのだが、無理にお金をもらう必要もないし、『領政顧問』にも就任したので領政への協力ということで固辞した。


 だがエレナさんは、「けじめとして当然払うべきお金です! 別にグリムさんのことが好きだから、払うわけではありませんから! 私的感情は持ち込んでいませんから!」となぜか逆ギレされて、再度発注すると強く言われてしまった。

 そして今後も、必要に応じて『飛竜船』での輸送を依頼したいとお願いされてしまった。

 できれば定期的に『飛竜船』を運行して、各市町を繋ぐ空の運行便として稼働させてくれないかとも依頼をされてしまった。


 確かに……『飛竜船』で定期運行するかたちが整えば、人の流通も物流も革命的なことになるからね。

 経済効果だけでも、計り知れないだろう。


 ただ『飛竜船』の定期運行となると、そう簡単にはいかない感じだ。

 乗務員も普通の乗務員というわけにはいかないだろう。

 それこそ冒険者の中でも腕利きの人材や、俺の眷属の『聖血鬼』のメンバーのように特殊な能力を持った人材でないと、務まらないと思う。

 空の上での緊急事態に対応しなければいけないからね。


 それに、料金設定にもよるだろうが、果たしてどのぐらい利用者がいるか分からない。

 採算が取れるかは、微妙なところだろう。

 ピグシード辺境伯領で始める『長距離乗合馬車』の方が、料金的にも手頃だし確実な感じだ。


 ただ各市町の守護や文官を集めて、緊急に会議をする場合などは『飛竜船』で送迎できれば、時間が短縮できて助かるというのはよく理解できる。


 ここは……当面の間、依頼を受けたときにだけ『飛竜船』を稼働させるかたちにするか……。

 タクシーとかチャーターバスのような感覚で、運用したらいいかもしれない。


 定期便の運行については、もう少し検討してからでいいだろう。



 もう一つ、エレナさんから依頼されたのは、『ドワーフ銀』の武器の仕入れだ。

 エレナさんも『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんとはすっかり仲良くなっているが、ミネちゃんの里で作っている『ドワーフ銀』の武器を『フェアリー商会』で仕入れて、販売してほしいという依頼なのだ。

『ドワーフ』の里と『フェアリー商会』が継続取引することを知って、正式に依頼をかけたいとのことだった。

 今後正式に『ヴァンパイアハンター』とその従者からなる『銀牙騎士団』を発足するときに、ヴァンパイアに特効がある『ドワーフ銀』の武器を大量に調達したいとのことだ。


 今まではヘルシング家にストックしてあった『ドワーフ銀』の武器を使っていたようで、記録によればここ百年ぐらいは新規の調達はしていなかったらしい。

 以前どこから調達していたかは、記録が失われて分からない状態とのことだ。


 そんな話が出たので、転移の魔法道具『転移の羅針盤 百式 お友達カスタム』の通信機能を使って、『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんに連絡をしてみた。


 するとすぐに、ミネちゃんとゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんが転移でやってきてくれた。


「族長のおじいちゃんに聞いたら、オッケーだったのです! ノームのノンちゃんも協力するように言ってくれたのです!」


 ミネちゃんは、早速、族長と『土の大精霊 ノーム』のノンちゃんの許可を取ってきてくれたようだ。


「私とミネちゃんで、オリジナルの『ヴァンパイアハンター』の武器も作ろうと思っています!」


 今度は一緒に来た人族の天才ドロシーちゃんが、笑顔で言った。


 なんとこの二人で、『ヴァンパイアハンター』専用の『ドワーフ銀』の武器を作ってくれるらしい。


 なんか凄いものができそうで楽しみだな……少し怖い気もするけど……。


 とりあえず今すぐできるものとして、『正義の爪痕』が使っていた『連射式クロスボウ』を改良して、射速を向上させたものを作る予定のようだ。

『ヴァンパイア』の超速移動で避けられないように、なるべくスピードを出せるように改良するつもりらしい。

 それによって、飛距離と威力も向上させられるはずだから、魔物用の武器としても優れたものになるだろう。

 領軍や衛兵隊の装備としても、いいのではないだろうか。

 もちろん冒険者に販売しても良さそうだ。

 それから、連射用の『カートリッジ』にセットする『短矢(ボルト)』は、『ドワーフ銀』製のものに変更する予定のようだ。


 もう一つ、連続脱着式穂先の特別な槍を構想しているらしい。

『連射式吹き矢』の直列に重なった円錐矢のカートリッジの構造を真似て、『ドワーフ銀』の『穂先カートリッジ』を作るつもりのようだ。

『ドワーフ銀』の穂先が、連続して十個程度直列に重なっていて、『ヴァンパイア』に突き刺すと、穂先が外れ『ヴァンパイア』の体内にとどまり、槍には新しい穂先が現れるという構造になるようだ。

 これなら一本の槍で、連続して十体の『ヴァンパイア』を封印できることになる。

 かなり画期的なのではないだろうか。


 それから、最初に『ヴァンパイア』と戦った時に、ミネちゃんがリリイとチャッピーに渡していた『ダガーベルト』も標準装備として考えているそうだ。

『ドワーフ銀』のダガーが何本もセットされているベルトで、投擲武器として優れている。

 名称を『ダガーベルト』と名付けたようだ。

 ダガーを投げて胸に刺せば、一発で活動停止状態にできる。

 中距離攻撃武器として有効だろう。


 ちなみに、その時にミネちゃんが使っていた『拡散バズーカ』は、さすがに提案していなかった。

 あれは範囲攻撃ができるが、使う局面が限られちゃうからね。


 今、ドロシーちゃんとミネちゃんが考えている武器だけで、遠距離攻撃、近距離攻撃、中距離攻撃ができる。

 話を聞く限り、これだけで充分なような気がする。

 さすがミネちゃんとドロシーちゃんの開発オタクコンビだ!


 この三つの武器の話を聞いただけで、エレナさんとキャロラインさんは目を輝かせていた。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、20日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] > 今回はこの領を襲った『吸血蝙蝠』の肉を使うことにした。 > 食感は鶏肉っぽいが、味はどちらかというと牛肉に近い感じだ。  草食のフルーツコウモリがそんな感じの味らしい? うん、元々吸血蝙…
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