特別短話「ロネちゃんの、願い。」
「ねぇグリムさん、テイマーになるにはどうしたらいいの? 」
守護の屋敷への納品から帰った俺に、ロネちゃんが駆け寄りながら訊いてくる。
表情は、いたって真剣だ。
「ロネちゃんはテイマーになりたいのかい? 」
「うん、私もリンちゃんやフウちゃんみたいな子たちと仲良くなりたいの」
「ふーん……そうか……仲良くなりたいなら……テイマーでなくても、『テイム』スキルが無くてもいいんじゃないかな。現にリンもスキルを使ったからじゃなくて、自主的に仲間になってくれたんだ」
「へー……そうなんだ……。でも、やっぱり将来は、テイマーになって動物たちを助けたり、動物たちと一緒に人の役に立ちたい……」
この歳で将来のことを真剣に考えているとは……。
凄いな、この子……真っすぐな目が眩しい。
でも、宿屋を継がなくていいのかな?
まあ、テイマーやりながらでもできるだろうけど……。
「じゃあ、まずは動物たちと仲良くなればいいんじゃないかな」
「どうすれば仲良くなって、友達になれるのかなあ?」
「そうだなぁ……きっと……動物たちには……好きな気持ちが伝わると思うんだよね。素直な気持ちで話しかけてみればいいんじゃないかな」
俺は、前の世界で色々な動物を飼ったが、彼らには気持ちがわかるんだよね。
動物にも植物にも気持ちが伝わるというのが、正直な俺の体験から得た感覚だ。
「そうか……わかった。話しかければいいのかなぁ……。厩舎のお馬さんたちには、いつも話しかけてるんだけどね」
「それでいいと思うよ。俺の経験だと、話しかける程にこっちの気持ちを理解してくれるようになると思う」
「ねぇねぇロネちゃん、もしほんとに『テイム』のスキルが欲しいのなら、頑張れば身に付くかもしれないよ」
近くにいたニアが、突然話に入ってきた。
「ニア様、本当ですか? 」
目をキラキラさせながら、手を合わせるロネちゃん。
「うん、前に読んだ『スキル取得への道〜体験検証〜 一の巻』という本に書いてたんだけど。スキルを気合と努力で身に付けるレポート集みたいなのがあって、『テイム』のことも載ってたの」
ニアが額に手を当てながら、思いだそうとしているようだ。
しかし、相変わらずニアの知識は凄いな。
本の虫だったに違いない。
「確か……その実験は……とにかくいろんな動物に『テイム』って言葉を投げかけるものだったはず……仲間になってと念じながら『テイム』って言うの。見る動物全て『テイム』って言いまくるという変わった実験だったけど。半年後くらいに、ほんとに『テイム』のスキルが身に付いたって書いてあった気がする」
「すごーい!」
ロネちゃんが、キラキラだ。
「だからグリムが言ったみたいに、優しい気持ちで動物たちに接したり、話しかけたりすると同時に練習させてもらえばいいんじゃないかな。支配するんじゃなく友達になろうという気持ちで、『テイム』と言えばいいかも。確か……そのレポートで最初に『テイム』した動物は、小さなヤモリだったと思う。練習だから虫さんとかいろんな生物にやってみたら」
「なるほど……そうする! さすがニア様! 明日から毎日いろんな子たちに話しかけて、『テイム』の練習させてもらう。頑張る!」
ロネちゃんは、花満開の笑顔になっている。
本気で頑張るようだ。
その後、ロネちゃんに起きることを、この時の俺は全く予想できていなかった………。
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特別なショートストーリーです。
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