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47.悪い、企み。

 さて、拐われた子たちを探すには、フウの固有スキル『“万物探索(オールサーチ)”』に頼るしかない。


 俺たちは黙ってフウの様子を見守る。


 フウは、目をクリクリさせた後、そっと閉じると、首を小刻みに左右に振ったり、首を傾けたりしている。


 その仕草はめっちゃかわいい!


 あー……あの白いふわふわにモフモフしたい………

 おっと、いかんいかん、そんな場合じゃなかった……反省反省……。


 フウは、何かを感じているようだ。


「感じる。確かにあの子たちの気配を感じる。南東の方角!」


「フウ、その気配を辿れるかい? 」


「大丈夫。距離が近いから……わかる」


 俺達は、早速出かけることにした。

 もうかなり遅い時間なので、行き交う人も少ないだろう。


 窓を開けて、階下に飛び降りる。


 慣れてないので少し怖かったが、大丈夫だった。


 身体能力が自分の思っているものと全然違うようだ。

 落下の衝撃も膝で楽に吸収でき、大きな衝撃は伝わらない。


 フウに先導してもらい、気配をたどり南東の方角にしばらく行くと……


 大きな屋敷が見えてきた。


 ……この屋敷の大きさ……どう考えても普通じゃない……貴族か何かだろう……


 物陰から覗き見ると、門のところに衛兵が立っている。


 これはおそらく……守護の屋敷だ。


 最悪だ……悪魔に協力している人間はこの街の守護なのか……確定ではないが……その可能性が高い……


 俺たちは門から離れ、屋敷を塀沿いに移動し観察する。


 フウの話では、確実にこの屋敷の中らしい。

 中の様子を探るには、やはり潜入するしかないようだ。


 ただ、相手はこの街の権力者“守護”だ。

 下手に見つかって、騒ぎになるわけにはいかない。


 そこで、仮に見つかっても大きな騒ぎになりにくいフウと、リンに潜入してもらうことにした。


 フクロウは野鳥だし、スライムは人間に敵対視されてないようだし。

 何よりリンは、『隠密』スキルで気配を消せるし、ロイヤルスライムになったことで、体の色が変えられ、限りなく透明に近くなれる。


 俺とニア、シチミは、人気のない塀沿いで二人の帰りを待つ……


 しばらくして、二人が帰ってきた。


「ここに、あの子たちがいる」


「直接見えない。でもリン聞こえた。庭の地下室。見張りいる」


 二人の話を総合すると、屋敷の館自体ではなく、その庭園の地面に大きな扉があるそうで、秘密の地下室になってるようだとのことだ。

 二人とも直接見ることはできなかったが、拐われた子達が居るのは確実で、フウの話では皆ちゃんと生存しているようだ。

 リンも『聴力強化』スキルで声を拾ったようだ。


 さて、どうしたものか……


 さすがに守護の屋敷に正面突破で殴り込みをかけるわけにいかない。


 もう少し情報を集めたいところだが……


 確か……トルコーネさんが明朝、守護の屋敷に納品に行くと言っていたはず……

 これに便乗させてもらおう。


 俺たちは、一旦宿に引き上げることにした。


 ただ、万が一のことを考えて、リンとフウに見張りに残ってもらうことにした。

 もし、捕らえられた子たちに命の危険が迫るようなことがあれば、すぐに念話がくる手筈になっている。


 その時は、正面突破しかないが……。




  ◇




 翌朝、俺とニアは朝食を食べながら、トルコーネさんの納品に同行させてほしい旨申し出て、すんなり了承された。


 納品がてら、街の有名なお店を紹介すると逆に大乗り気だった。


 リンとフウを気にするロネちゃんは、朝の散歩に行ったとごまかしておいた。


 守護の屋敷の門に着くと、衛兵のチェックを受けたが、特に問題なく通された。


 受け取りは、守護本人ではなく執事の人が対応してくれた。


 この執事は、悪い人には見えないが……人の良さそうな初老の男性だ。


 館の中に納品かと思ったら庭の端に通され、大きな倉庫のような場所に納品するように指示された。


 俺はトルコーネさんを手伝いながら様子を探る。


 ニアはリンたちと合流し、例の地下室の入り口周辺を詳細調査中だ。


 俺は『聴力強化』スキルを使う。


 ……この倉庫には隠し地下室があるようだ。


 声が聞こえてくる……



「いつまでこんなところに隠れてなきゃいけないんだ!」

「決行は二日後だと言っただろ! もう少し我慢しろ!」

「そうだ、あと少しの我慢で殺し放題だぞ、ククク…」

「しかし、あの守護も大した悪党だな。盗賊に関所を襲わせ、戦ってる衛兵を盗賊ごと俺たちに始末させるとはな」

「その後は、街を蹂躙し放題だ。金目の物は全て奪ってやる。何人殺してもいいそうだしな、ククク…」

「女は殺すなよ。たっぷり楽しまないとな。楽しんだ後、生きてれば売って金にもなるしな」

「まぁ一番の悪党は守護だがな。すべての略奪を盗賊のせいにして、自分は傷を負いながらも、盗賊を倒し街を救った。そんなヒーロー話を作り上げて、成り上がる腹づもりなんだからな」

「いいじゃないか。そのお陰で、うまい汁が吸えるんだ、ククク…」

「そうさ、俺たちは散々やりたいことをやった後に、この街の新たな衛兵として採用してもらうんだから」

「その後は、更にやりたい放題だな。傭兵稼業ともおさらばだ」

「ちょうど今、約束のクロスボウが運び込まれているようだ」

「何人かいる手練の衛兵も、後ろから射られたら、お陀仏だな、ククク…」



 ……これはやばいやつだ……。


 そして、守護は完全に黒だ……。






読んでいただき誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、本当にありがとうございます。感謝です。


次話の投稿は、本日14時の予定です。


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