450.温泉旅館、完成!
俺は、『ピア街道地下街』の地上部分に、家魔法で旅館を構築することにした。
温泉旅館は好きだったので、かなり具体的にイメージできる。
イメージさえできれば、瓦の屋根も、和室の畳も作れるはずなので、ひたすらに集中して細かいイメージを巡らせる。
そして、魔法を発動——
「家新築!」
——ズズズズズッ
——ポンポンポンッ
おお! 巨大な旅館が出現した!
イメージ通りの屋根瓦、素晴らしい外観だ!
そして、室内もちゃんとできている。
畳もバッチリだ!
ただ残念ながら、畳のいい匂いはあまりしない……。
そこまでは再現できないのだろうか……。
いや……まだ魔法の熟練度が足りないだけかもしれない。
まぁ現時点では、これで十分だろう。
今度イグサを探して、畳を作ってみたいなー。
他の内装も問題なくできている。
巨大な温泉スペースも、イメージ通りできた。
男湯と女湯と分かれているが、それぞれかなり巨大なスペースにした。
いくつもの湯を楽しめるように、それぞれ十個の浴槽を作った。
これから温泉を引くなど、細かな調整をする予定だ。
普通の温泉に、薬湯を何種類か作ろう。
水風呂もあった方がいいな。
ゆず湯なんかもいいかもしれない。
ゆずは今のところ発見できていないが、レモンとか柑橘系がいろいろあるから代用できるだろう。
でも……やっぱりゆずを発見したいなぁ……。
全領に散らばっているスライムたちに、ゆず捜索指令を出そうかな……。
いや、そもそも大森林にあるかもしれない。
大森林の仲間たちにも、捜索指令を出そう!
あとは……ジャグジーというか……泡風呂がほしいな。
これは、魔法道具などで作るしかないかな……。
風魔法の巻物を作って、浴槽の中にセットしてそこから風を噴出するようにすれば、泡が出るかな……。
ただ常時発生させるには、常時魔力を流さないといけないしなぁ……。
やはり魔法道具のようなものにして、『魔芯核』を燃料に常時稼働できるようにしないとダメかもしれない。
そうだ!
これこそ『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんに相談してみよう!
ミネちゃんなら細かい空気を噴出する魔法道具を作ってくれそうだ。
俺は早速、転移の魔法道具『転移の羅針盤 百式 お友達カスタム』の通信機能を使って、ミネちゃんに連絡した。
欲しい機能を説明し制作を依頼したところ、快く引き受けてくれた。
これで泡風呂も何とかなりそうだ。
次は庭作りだ。
雅やかな日本庭園を作る。
これもイメージが大事だ。
集中して細かなイメージを積み上げる……
……そして、魔法発動する!
『庭造り!』
——ズズズズズッ
——ポンポンポンッ
おお! 凄い!
これも結構いい感じにできた。
イメージ通りの日本庭園だ!
やはりこういう系統の魔法は、イメージ力が大事らしい。
なんとなく、少しコツがつかめたような気がする。
あと……温泉旅館に必要なものは……やはり娯楽スペースかな。
旅館の中に娯楽用の大きなスペースは作ってある。
問題は、どんな娯楽スペースにするかだが……温泉といえば……やはり卓球かな!
まぁこの世界では……スポーツ系のものは、レベル差があると娯楽として成り立ちにくいんだけどね。
まぁその点は、やる人たちで自主調整してもらえばいいか。
同じようなレベルの人でやる分には、楽しいはずだからね。
ということで、早速『ワンダートレント』のレントンに頼んで、卓球台と卓球のラケットを作ってもらうことにした。
問題は卓球のボールだが、ケニーに『糸織錬金』で作ってもらうことにした。
ケニーはペットボトルのような容器も作れるので、卓球のボールと似たようなものも作ってくれるだろう。
フードコートにできるような大きなスペースも作った。
温泉旅館といっても、大型健康ランドに近い大きさがある。
三階建ての大規模旅館なのだ。
ただこれは将来を見越したもので、当面はすべての部屋を稼働させるわけではない。
働き手の人数が全然足りないからね。
したがってフードコートスペースも、当面はただの広場的なものになる。
将来的には、いくつもの屋台を出して、お客さんが選んで食べれるようなフードコートにしようと思っている。
もちろん、ちゃんとした食事処も作るけどね。
当面は、宿泊客の食事も食事処でとってもらおうと思っている。
各部屋に食事を運んで食べてもらうスタイルにすると、人手が必要になって大変だからね。
もちろん調理場で働く、『マナ・ハキリアント』たちは見えないように工夫するけどね。
実質人前で仕事ができるのは、大女将のケニー、若女将のフラニー、中居かつ温泉アイドルユニット『339』の六人、ケニー直属の隠密部隊で表の顔としての旅館スタッフをする『聖血鬼』の八人の合計十六人だ。
少ないが、当面は何とかなるだろう。
お客さんが増えたら、その時に対策を考えようと思う。
そして当面の温泉旅館の売りは、『癒し処』ということにしようと思う。
美味しくて体にいい薬膳の提供と、いろんな効能の薬湯で、身も心も癒されるというテーマにしようと思っている。
これとはあまり関係ないが……ミミックたちは、宴会場で歌を歌ったり、ショーをする気満々のようで、今から特訓するようだ……。
俺としてはそんな特訓よりも……中居としての仕事をちゃんと覚えてほしいのだが……。
でもまぁ……アイドル顔負けのめちゃめちゃ可愛い女子になってるから、これで心癒されるお客さんもいるだろう。
◇
俺は、源泉の引き込みなど細かな調整を行い、早速お湯を張ってみた。
源泉自体が高温だが、引き込んでくる間にある程度温度が下がる。
それでも結構熱いので、一度溜めた後、補充的に少しずつ流し込むと丁度いい温度を維持してくれる感じだ。
かなりいい感じだ。
これはすぐにでも営業を開始したい!
そうだ! プレオープンするか!
まず俺の仲間たちと知り合いだけを招待して、温泉を楽しんでもらおうと思う。
実際の運営についても、検証できるのでいいんだよね。
ケニーの『糸織錬金』のお陰で中居さんの着物もできたし、女将のリッチな着物もかっこいいものができた。
ケニーは銀色の着物で、フラニーは黄緑の着物だ。
男衆の『聖血鬼』八人衆の制服は、黒の法被で結構いい感じだ。
そして履物は、レントンに頼んで下駄を作ってもらった。
温泉の脱衣所のカゴも竹やワイルド葛などを使って、素敵に編み上がっている。
タオルも手ぬぐいも準備万端だ。
あと必要なのは石鹸とシャンプーだが……この世界には普及していないようだ。
これは作るしかないだろう。
でも作り方が、いまいちよくわからないんだよねぇ……。
まぁ今後の課題だ。
それから湯上がりの冷たい牛乳とコーヒー牛乳もマストだな……。
牛乳はいいとして……コーヒー牛乳は、コーヒーがないとできないよね。
このピグシード辺境伯領では、コーヒーは普及していないようだ。
絶対どこかにあると思うし、コーヒーが普及している国もあると思うんだけど……。
とりあえずは、たんぽぽの根を使った『たんぽぽコーヒー』でも作るしかないかもしれない。
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