449.温泉アイドルユニット、誕生!
俺はアンナ辺境伯との打ち合わせを終えて、すぐに秘密の地下街『ピア街道地下街』に戻ってきた。
ここでもう一つやることがあるのだ。
それは……当初から予定していた温泉宿を作ることだ!
ここで発見した源泉を利用した大きな温泉施設……健康ランドのようなものを作ろうと思っている。
以前考えていた通り、妖精族が運営する謎の温泉宿という触れ込みにしようと思っている。
したがって、『フェアリー商会』とは一応切り離した運営にしようと思っている。
名前は、前にニア、サーヤ、ケニー、ナビーで決めた『ピア温泉郷 妖精旅館』にする予定だ。
ターゲット顧客は、ピグシード辺境伯領の『マグネの街』と、隣国であるアルテミナ公国の間を旅する人たちなので、それほど多くの利用者は見込めないが、『マグネの街』を訪れる冒険者なども増えているし、評判になれば、利用者も増えると思う。
何よりも今後、両国の人の行き来が活発になれば、おのずと利用客も増えるし、逆に道中の中間地点にあるこの宿によって、人の往来が増えてくれると嬉しい。
当面は利用客が少なくて、儲からなかったとしてもいいと思っている。
長い目で見ていれば、必ず役立つ施設になるだろう。
どちらかというと、この温泉宿は、俺が楽しみたいので、儲けは後からでいいのだ。
いろんなお風呂を作って、楽しい健康ランドにしたいと思っている。
とりあえず現時点では、女将は『アラクネロード』のケニーにやってもらおうと思っている。
ただケニーも色々と忙しいので、常駐はできない。
主に働くのは、ケニー直属の隠密部隊となった八人の『聖血鬼』たちだ。
みんな二十代、三十代で若いが……むさ苦しい男衆が運営する宿になってしまいそうだ。
やはり女性スタッフ……中居さんがほしいので、『フェアリー商会』から女性を派遣してもいいのだが……。
どこの国にも属していない妖精族が営む謎の温泉宿なので、普通の人は雇いづらいんだよね。
まぁ最初のうちは、それほどお客さんも来ないだろうから、むさ苦しい野郎どもだけでもしょうがないと思う。
でもなぁ……普通に考えると厳しいなぁ……リピート客がな……。
どうせなら愛想の良い女性スタッフがいたほうがいいよね……。
そんな心配をしていたら……ケニーが面白い提案をしてくれた。
詳しく聞くと……
なんと、ミミックたちに中居をやってもらおうという提案だった。
シチミの仲間のイチミ、ニーミ、サンミ、ヨンミ、ゴーミ、ロクミの六体のミミックたちは、レベルが上がりシチミ同様『ミミックデラックス』にクラスチェンジしている。
それ故に、新たな『種族固有スキル』の『マルチ擬態』で人に擬態することができるのだ。
この能力で若い女性の姿になってもらい、中居として活躍してもらおうというのだ。
ケニーは温泉旅館の話が最初に出たときから考えていたようで、既にイチミたちに話をしていて、みんなかなり乗り気なようだ。
俺は全く思いつかなかったが、いいアイディアだと思う。
早速、サーヤに頼んでイチミたちを転移で連れてきてもらったのだが……すでに中居さんの格好をしている!
そしてみんな……めちゃめちゃ可愛い美少女だ!
なんとなく……『虫使い』のロネちゃん、『蛇使い』のギュリちゃん、『石使い』のカーラちゃん、『土使い』のエリンさん、『植物使い』のデイジーちゃん、そして『アメイジングシルキー』のサーヤの面影を感じさせる美少女だ。
なんとなく誰をモデルにしたのか、わかってしまう。
みんな着物を着ている……。
ケニーによると、『ライジングカープ』のキンちゃんが『固有スキル』の『ランダムチャンネル』で仕入れた情報をもとに、ケニーの『種族固有スキル』の『糸織錬金』で作ってみたようだ。
素晴らしい出来だ。
キンちゃんの『ランダムチャンネル』の情報でも、まともな情報が伝わることもあるようだ……。
ミミックたちは性別がないのだが、いつもはどちらかというと男の子っぽい話し方だ。
でも、今はちゃんと女の子っぽい話し方をしている。
『ライジングカープ』のキンちゃんが、可愛くプロデュースしているようだ。
イチミが堂々と宣言していたが、なぜか……『温泉アイドルユニット』としてデビューを目指しているらしい……。
デビューって……どこに向けてデビューするわけ……?
もう訳がわからない……。
アイドルグループとしての名前まで決まっているらしい。
『339』と書いて『ミミック』と読むらしい。
キンちゃんが悪乗りしてプロデュースしているようだ。
まぁここはスルーしておこう……。
そのうち『舎弟ズ』や『ナビーソウルブラザーズ』と共演とかしたら……恐ろしすぎる……。
考えたら負けだな……。
ケニーから、もう一人強力な助っ人の名前が挙がった。
それは霊域の代行者『ドライアド』のフラニーだ!
フラニーもこの旅館の運営を手伝うと言ってくれているらしい。
フラニーは、見た目は人族っぽいので、普通に接客できると思う。
どうも若女将ポジションのようだ。
そしてケニーは、大女将ポジションらしい。
この辺のやけに詳しい情報も、キンちゃんの情報だろう。まぁいいけど。
普段は霊域からあまり離れないフラニーだが、この不可侵領域の温泉旅館なら転移ですぐに大森林や霊域に戻れるので、やる気になったようだ。
フラニーがいない間は、もう一人の代行者『スピリット・オウル』のカチョウがいるから、特に問題もないしね。
これで後は、料理をする人だけどうにかできればオープンできそうだが……。
この点についても、ケニーから提案があった。
それはなんと……『マナ・ハキリアント』のハッキリおばばたちに、料理をしてもらうというものだった。
ハッキリおばばたちは、回復薬作りなどで手先が器用だし、教えれば料理もできるということだ。
そして調理人は、お客さんの前に出ないので、見られることもないから大丈夫だろうとのことだった。
なかなかに面白いかもしれない。
確かに『マナ・ハキリアント』たちなら、料理ができそうだ。
彼女たちの知識を生かして、薬膳料理を売りにしてもいいかもしれない。
当面の人手が確保できたし、これはもう早速オープンするしかない!
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