445.おもしろ、魔法カバン。
発見した『血の博士』の隠し部屋にある三つの小部屋のうちの一つは、金銀財宝を収めている部屋だった。
次の部屋には、研究資料などが保管してあった。
研究資料が押収できたことは、非常に大きい。
これで『正義の爪痕』がやっていた研究やその技術力を解明することができるだろう。
もう一つの部屋には、『血の博士』が管理している薬などが置いてあった。
『マシマグナ第四帝国』の遺物である『洗脳薬』も置いてあったし、『死人薬』『改良型死人薬』『認識阻害薬』もあった。
『操蛇の矢』『操蛇の笛』『操魚の矢』『操魚の笛』も保管されていた。
ここに保管されている薬や道具が全てだといいのだが……。
ただ普通に考えれば、首領のところにも保管されている可能性が高い。
そう考えると、やはり首領を倒して組織自体を完全に壊滅させないと安心はできない。
この部屋には、魔法カバンがかなり置いてあった。
しかもバリエーション豊かに、様々なタイプの魔法カバンが保管されていた。
もしかしたら『血の博士』は、魔法カバンをコレクションしていたのかもしれない。
通常のショルダーバックタイプの魔法カバンの『下級』階級が五つ、『中級』が三つあった。
珍しいウエストポーチタイプの魔法カバンが三つあり、『名称』が『魔法カバン ウエストポーチ型』となっていて、『中級』階級だ。
これは結構いい感じだ。
俺は気に入ってしまった!
もし報酬として、何か貰えるならこれをもらおう!
そしてまた珍しい形の魔法カバンがあった。
この形は……どう見ても紙袋……なんとなくオタク臭がするある意味……いい感じのデザインだ……。
『名称』は『魔法カバン 紙袋型』となっている……。
これ……完全に遊んでるでしょ!?
いつの時代に誰が作ったのかわからないが、作った人は転移者か転生者かもしれない……。
どう見ても遊び心が入っている……。
しかもこの『魔法カバン 紙袋型』は、階級が『上級』だ!
『上級』の魔法カバンなんて、普通なら絶対に使いたくなるだろうけど……この手提げタイプ……紙袋タイプは、結構使いづらいと思うんだよね。
普通の買い物や輸送の時はいいかもしれないけど、戦いのときは手が塞がっちゃうので、厳しいと思う。
リュックサック型の魔法カバンもある。
なんとなく……ランドセルっぽく見える。
四角いデザインのリュックサックなのだ。
『名称』は『魔法カバン リュックサック型』となっていて、階級は『中級』だ。
これもなかなかに可愛くて、俺は気に入った。
リリイやチャッピーが背負ったら、かなり可愛いと思う。
この地中深くにあった隠し部屋は、本当に通路がどこにもない。
おそらくだが、隠し部屋を作った後に通路を塞いでしまったのだろう。
そして転移の魔法道具を使って、出入りをしていたのだろう。
転移の魔法道具を使って出入りするなら、通路はいらないからね。
エレナさんが『血の博士』を倒したときには、転移の魔法道具を持っていなかった。
その後、執政官として使っていた部屋を捜索したところ、懐中時計型の転移の魔法道具が見つかったようだ。
執政官として活動しているときは、転移の魔法道具を常備していなかったのかもしれない。
俺たちの奇襲で、転移の魔法道具を取りに行く時間もなかったのだろう。
まぁそれ以前に、エレナさんを倒せると思っていて、使う気がなかったのかもしれないけどね。
一通り見終わったところで、今回発見した金銀財宝はエレナさんに、研究資料や薬や道具類はクリスティアさんとドロシーちゃんに渡すことをジョージたちに話した。
さっきの浮かれ顔から、一気に絶望の表情になってしまった。
ただ秘密の隠し部屋を見つけ出した功績として、多少は分けてもらえるかもしれないので、どうしても欲しいものがあれば、選んでおくように言った。
特別な研究資料とかでなければ、少しくらい分けてくれると思うんだよね。
ジョージたちは俺の言葉を受けて、金銀財宝があった部屋に飛び込んだ。
そしてジョージが持ってきたものは……宝箱だった。
金貨一杯の宝箱を一つ持ってきたようだ。
金が欲しいんかい! まぁわからなくはないが……。
確かに俺でも、お金がない状態なら欲しい気持ちになるよね。
でもこれは、ヘルシング伯爵領の運営資金にあてたいので却下した。
そのかわり、今後の活動資金として、とりあえず百万ゴル渡した。
金貨百枚なので、宝箱に入っている金貨の数とは比べようもないが、それでもジョージは、大喜びで機嫌を直していた。
オクティは、豪華な装飾の腕輪を八個持ってきた。
「我が八つの魔手が疼く……真なる力を解き放てと叫んでいる。暗黒の意思に従い、はめてくれようぞ!」
相変わらず中二病チックなことを言いながら、八本の腕をクネクネさせている。
どうも八本の腕に装着したいらしい。
微妙に意味がわからないが……まぁ一応頼むだけ頼んでみるか。
スコピンは特に欲しいものはないようで、何も持ってこなかった。
だが、オクティが腕輪を一つ渡した。
スコピンの尻尾に、はめようとしている。
そしてジョージにも一つ渡している。
オクティは全部で十個の腕輪を持ってきていたようだ。
全て同じようなデザインで、シリーズものなのかもしれない。
それぞれ違う色の宝石が埋め込まれていて、おしゃれな感じの細い腕輪で全体は金でできているようだ。
チーム『魚使い』で、お揃いのものを装着したかったのかもしれないね。
この腕輪ぐらいなら、お願いすれば貰えそうなので、ジョージたちのために後でお願いしてみよう。
俺はすぐにエレナさんたちに、秘密の隠し部屋を見つけたことを伝え、確認のために足を運んでもらった。
そして金銀財宝については、王国として問題がなければヘルシング伯爵領の運営資金に当ててほしいという話をした。
この点については、あとで転移の魔法道具の通信機能でユーフェミア公爵に連絡を入れて、国王の許可を取ってもらおうと思っている。
エレナさんは、すごく喜んでくれた。
これだけあれば、当面の領の運営費が賄えるからね。
俺は問題なければ、腕輪を十個報酬としてもらえないかと相談した。
もちろん後でユーフェミア公爵にも連絡して、国王の許可も得るつもりだが。
この点についてはエレナさんも、問題なく了承されるだろうから、確保しておいて構わないと言ってくれた。
他にも欲しいものがあれば言ってほしいということだったので、魔法カバンのコレクションを希望した。
これも直接『正義の爪痕』の研究とかに関係するものではないので、おそらく要望が通るだろうと言われた。
それ故に、一旦確保しておいて構わないとエレナさんが言ってくれた。
ということで、魔法カバンのコレクションについては、『波動収納』に回収した。
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次話の投稿は、8日の予定です。
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