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438.明かされる、ヴァンパイアの情報。

 第一王女で審問官、そして今回の事態の査察官になっているクリスティアさんから、尋問結果の第一報の報告が終わった。

 俺はバラン・ヘルシング伯爵に、改めていくつか質問をさせてもらうことにした。


 俺が保護している吸血鬼一歩手前の『適応体』状態になっている人たちと、無理矢理吸血鬼にされてしまった人たちを元に戻す方法がないか尋ねたかったのだ。


 前に妹で『ヴァンパイアハンター』のエレナさんに尋ねたときは、吸血鬼になった人間を元に戻す方法はわからないということだった。

 そして吸血鬼一歩手前の『適応体』状態の人を元に戻す方法は、いくつかの情報を得たが決定的なものなかった。


 改めてヘルシング伯爵に尋ねると……


 まず吸血鬼にされてしまった人を元に戻す方法については、ないだろうとのことだ。

 千年の歴史を誇るヘルシング家にも伝わっていないらしい。

 もしそんな方法があって、倒すことではなく人に戻すことで救えるなら『ヴァンパイアハンター』に伝わっているはずだが、そうでないということはやはり戻す方法はないということなのだろうとのことだ。

 確かに……普通に考えたらそうかもしれない。


 そして吸血鬼一歩手前の『適応体』と呼ばれている状態の人を元に戻す方法も、エレナさんから前に聞いた話と同じで、その状態を浄化できれば元に戻れる可能性があると伝承されていると話してくれた。


 ただ明確な説明は、記載されていなかったらしい。

 エレナさんが言っていた通り、浄化できる可能性がある方法として、レベルが高く生命エネルギーの高い人の血液を大量に摂取して、実質血液を入れ替えてしまうという方法が記されていたという程度で、具体的な方法は載っていなかったようだ。

 この点については、やはり前に考えた通りに俺の血で試してみようと思っている。

 この中で一番レベルが高いのは俺だし、生命力もたぶん高いはずだからね。


 前にエレナさんが、他の方法として記載されていたと言っていた『特別な浄化の魔法や浄化の光など』についても、ヘルシング伯爵はエレナさん同様に、具体的な情報は持っていないようだ。

 ただ一応ヘルシング家の蔵書をあたって、調べてくれるということになった。


 それから、もしかしたらという前置きの後で、『吸血鬼 ヴァンパイア』の真祖の血統の者なら詳しく知っている可能性があるとヘルシング伯爵が驚きの話をしてくれた。


『吸血鬼 ヴァンパイア』の真祖の血統……?

 そんな者がいて、その人に話を聞くことができるということなのだろうか……。


 『吸血鬼 ヴァンパイア』の真祖の血統というのは何か尋ねると……


 伯爵は、『吸血鬼 ヴァンパイア』とヘルシング家についての驚くべき情報を教えてくれた。


 ヘルシング伯爵家に伝わる記録には、『吸血鬼 ヴァンパイア』についてもかなりの情報が伝承されているらしい。


 実は初代ヘルシング伯爵が『ヴァンパイアハンター』の力を得たのは、『吸血鬼 ヴァンパイア』の真祖によって与えられたものだったとのことだ。

 驚くことに『吸血鬼 ヴァンパイア』の真祖が自ら、同族であるヴァンパイアを倒すために『ヴァンパイアハンター』を作り出したというのだ。

 どうも悪さをする『吸血鬼 ヴァンパイア』を排除するために、『ヴァンパイアハンター』として力を与え役割を与えたようだ。


 より詳しく話を聞くと……


 そもそも一番最初の『吸血鬼 ヴァンパイア』は、ドラキューレという名の女性だったようだ。

 吸血鬼族の真祖であり始祖と呼ばれているらしい。

 この始祖ドラキューレは、子供が産めるそうだ。

 吸血鬼は、基本的に子供が産めないようだが、この始祖ドラキューレだけは子供が産めるらしい。

 子供が産めるといっても、五百年に一度だけらしい。

 五百年間生体エネルギーをチャージしないと、子供が授からないとのことだ。

 まぁ吸血鬼は、理論上は何年でも生きられるはずだから、五百年というスパンもそう長くはないのかもしれない。

 一体この始祖ドラキューレは、いくつなのだろうか……?

 そして今もいるんだろうか……。

 五百年という期間は、血を飲まず体を清める期間のようだ。

 特別な装置に入って、五百年間封印されたような状態になっているらしい。

 生まれてくる子供は、吸血鬼ではなく、人族として生まれてくるようだ。

 吸血鬼同士では子供を設けることができなくて、人族との間に子供を設けるようだ。

 話を聞いた上での予想だが、五百年という時間をかけて体を人族のような状態にして、人族の男性と交わるということではないだろうか……。

 始祖ドラキューレが産む子供は、人族との混血だから……正確には『ダンピール』というべきだろうが、種族はあくまで人族となるそうだ。

 この子供が成長して望めば、普通の吸血鬼になる場合と同様に、吸血三回と与血三回という吸血鬼になる儀式をするらしい。

 そして、一度死んで吸血鬼になるようだ。

 吸血鬼化することで、始祖であり真祖であるドラキューレの直系の吸血鬼になり、始祖と同じような力をふるうことも可能になるのだそうだ。

 始祖直系の吸血鬼は、真祖と名乗ることが許され、王族のような扱いを受けるらしい。

 だが本当の意味での真祖は、始祖であるドラキューレだけで、その子供たちは『真祖の血統』と呼ばれるのが普通なのだそうだ。


 神話的な伝承では、始祖ドラキューレは争いを嫌い、 人族や他の種族との全面的な対立や抗争を防ぐために、『吸血鬼 ヴァンパイア』の数が増え過ぎないように一族を管理して、不良吸血鬼を滅する仕組みを自ら作ったとされているらしい。


 これは、ドラキューレが恋をした人族の勇者の影響だったと言われているそうだ。

 その勇者は、異世界からの召喚勇者だったらしい。

 今からどのぐらい前のことなのか、ヘルシング家の記録ではわからないそうだが、かなり古い時代のことらしい。

 ドラキューレと勇者は、紆余曲折の末に結ばれ、子供にも恵まれたようだ。

 伝承によると、ドラキューレは百年から二百年くらい活動すると、約五百年の休眠に入り、目覚めるとパートナーを見つけて、百年から二百年ぐらい活動し、その後休眠に入るということを繰り返しているらしい。

 一説には、見つけ出すというパートナーは、愛した勇者の魂の転生体と言われているようだ。

 この話が本当だとしたら、死ぬことのできないドラキューレが、パートナーの勇者が死んで生まれ変わる度に、見つけ出して結ばれているというすごいロマンティックな話だ……。





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次話の投稿は、1日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] > 一説には、見つけ出すというパートナーは、愛した勇者の魂の転生体と言われているようだ。  グリムさんがうっかりそのターゲットにされてしまうフラグ?
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