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44.ケニーの、戦略。

今回も3人称視点です。

 ケニーはアリリと共に防衛力強化案をまとめた。


 四つの柱である。


 一、警戒網及び防衛ラインの構築

 二、戦力の底上げと中核戦力の強化

 三、遊撃部隊の増強

 四、回復薬の生産と配備



 一、警戒網及び防衛ラインの構築


 大森林の外周部分を『第一防衛ライン』とし、その外側の10キロ圏内を『警戒エリア』とする。


 警戒エリアに蜘蛛の糸を張り巡らし、地上からの侵入者を早期に発見する。


 迷宮を中心に半径10キロ圏内を『最終防衛ライン』と設定し、そのエリアの哨戒活動は迷宮防衛部隊が担当する。


 『第一防衛ライン』と『最終防衛ライン』の間に二つの防衛ラインを設定、合計四つの防衛ラインを敷き、それぞれに『防衛拠点』を設置し、その周辺に『戦闘エリア』を構築する。

『防衛拠点』を中心に対空警戒も実施する。


 この『防衛拠点』の建設は、『マナ・ホワイト・アント』たちが担当する。


 彼らは、サバンナなどで巨大な蟻塚を作る『シロアリ』が魔物化したものである。


 『シロアリ』といっても、種族的にはゴキブリの方が近く、厳しい生活環境でも生きられる強い生命力を持っているのだ。

 その大きな手段が、巨大な蟻塚なのである。


 地上数メートルもの巨大な蟻の塔(アントタワー)を作り、地下には数十メートルにも及ぶ巨大なトンネル蟻道(アントロード)を構築するのだ。


 その姿は、まさに、“天然の迷宮”と言えるだろう。


 彼らは、無数の部屋や通路が組み合わさった複雑な構造物を、様々な個性豊かなデザインで作り上げることができるのだ。

 温度調整・湿度調整機能を持った完璧な居住空間なのである。


 ケニーは、この能力を引き継ぐマナ・ホワイト・アントたちに、大森林の要所に巨大な防衛拠点を作らせるつもりなのだ。


 魔物化してパワーアップした彼らの能力からすれば、ある程度の大きさの蟻塚ならば、一夜にして完成させることができるのだ。まさに一夜城だ。


 地下部分は、彼らの生活拠点(コロニー)として使い、地上部の巨大蟻塚は、監視及び防衛施設として活用する予定なのだ。


 彼らには、できるだけ子供を増やしてもらい、地下部分を随時拡張し、最終的には大森林全体を巨大迷宮のような構造にするのがケニーの長期的な戦略だった。


 当然、ここまでの壮大な構想は、彼女の“あるじ殿”は、考えもしないことだった。


『戦闘エリア』の構築は、穴掘り名人の『マナ・トラップドア・スパイダー』たちと、糸を自在に操る『マナ・スパイダー』たちが担当する。


 敵を誘い込む戦闘陣地を構築しておくことは、前回の戦闘から得た教訓であった。

 慎重なケニーの事前準備としての戦略の核でもあった。



 二、戦力の底上げと中核戦力の強化


 戦力の底上げとして、レベルが低い仲間たちのレベル上げを実施する。


 これは、ケニーが大森林に隣接する山脈から魔物を捕獲してきて、戦闘訓練を兼ねたレベル上げを行うというものである。

 ケニーの目標は、全ての仲間たちのレベルが30を超えることであった。


 中核戦力の強化としては、彼女の“あるじ殿”からの依頼でもあり、霊域の霊獣たちとの合同訓練を行う予定である。

 当然、浄魔同士での日々の訓練も行う予定であった。


 アリリからヒントを得たケニーのもう一つの増強プランは、繁殖可能な浄魔たちは、積極的に繁殖してもらうというものである。戦力の頭数を増やすのも重要な戦略なのである。


 三、遊撃部隊の増強


 特定の防衛担当エリアを持たない遊撃部隊を増強する。

 自由に、瞬時に判断することで、非常事態に臨機応変に対処するためである。

 指示待ちではなく、自分で考える部隊を増やす必要があった。


 『マナ・イーグル』たちの『イーグルチーム』、『マナ・ウルフ』たちの『ウルフチーム』に加え、『ミミック』たちの『ミミックチーム』、『マナ・ワイルド・ベア』たちの『ベアチーム』、『マナ・ワイルド・ボア』たちの『 ボアチーム』、『マナ・デスサイズ・マンティス』たちの『マンティスチーム』を独自行動可能な遊撃部隊とした。

 また、霊域の霊獣たちにも、応援要員として遊撃部隊に入ってもらうつもりでいた。


 霊獣たちは、無理に部隊に組み入れる必要は無いのだが、あえて組み込むことで、一体感を持ってもらう狙いがあった。


 もともと聡明なケニーは、“あるじ殿”のためにと懸命に考える中で、より有能な指揮官に進化し続けているのであった。


 残念ながら、このことを“あるじ殿”は、未だ知る由もないが……。


 四、回復薬の生産と配備


 ケニーが即座に実行したことの一つが、回復薬の生産である。


 今後、また戦闘があった時に、回復要員が少ないのだ。


 もし回復薬があれば、回復スキルを持っていない者でも回復役に充てることができる。


 この生産には、うってつけのメンバーがいた。


 『マナ・ハキリアント』たちだ。


 『マナ・ハキリアント』は、『ハキリアリ』が魔物化したものである。


 『ハキリアリ』は、もともと農業をする蟻なのである。


 顎で切り取り、持ち帰った葉を栄養に、キノコを栽培し、そのキノコを食べるのである。


 また『アブラムシ』と相互共生関係にあり、事実上飼育しているのだ。

 『アブラムシ』の出す甘露を得るために、外敵から守りながら飼育しているのだ。

『アブラムシ』の卵も大事に育てるのである。


 いわば“作物生産”と“畜産”の両方をやる()()()のスーパー農家なのである。


 この『ハキリアリ』のコロニーには、強力な用心棒もいる。


 それが、『()()()()トカゲ』だ。

 『アホロテトカゲ』は、『ハキリアリ』の巣の近くで、『ハキリアリ』を狙う大型のアリを待ち伏せ、捕食するのである。

 これも一種の共生関係で、事実上、『ハキリアリ』のコロニーを守っているのだ。


 『アホロテトカゲ』は、ミミズトカゲの仲間であり、ミミズのような細長い外見に、穴掘り用の前足だけが付いた二本足のトカゲなのである。


 穴掘りが得意で、頭も銃弾のような形状をしており、頭と前足二本で地中に穴を掘り、細長い巣を作るのである。

 この巣に隠れて、獲物を待ち伏せるのだ。


 顔は、どことなくウーパールーパーに似た可愛い顔をしている。


 つまり、ミミズとモグラとウーパールーパーを足したような奇妙かつユーモラスで、可愛い生物なのである。


 『マナ・ハキリアント』たちは、この共生集団ごと、 一つのコロニーとして魔物化していた。


 つまり『マナ・ハキリアント』たちの集団には、『アブラムシ』が魔物化した『マナ・アフィド』と、『アホロテトカゲ』が魔物化した『マナ・アホロテ』も含まれているのだ。


 彼らの主人であるグリムが、『マナ・アホロテ』をみたら、デレデレして喜ぶに違いない。


 『マナ・ハキリアント』たちが作る『魔法茸(マナ・マッシュ)』は、大森林に自生している『魔法茸(マナ・マッシュ)』よりも、はるかに効能が高く『特別魔法茸(エクストラ・マッシュ)』と言われている。


 彼らは、各種の回復効果や能力増強効果など、様々な効果を持つ『特別魔法茸(エクストラ・マッシュ)』を栽培することが可能であった。


 魔物化により強化された彼らの能力を以ってすれば、栽培に使う葉の種類を変えることで、効果の違う『特別魔法茸(エクストラ・マッシュ)』が栽培可能なのだ。


 階級でいえば、上級(ハイ)もしくは極上級(プライム)程の価値があるものであった。


 人族の間では、上級(ハイ)の回復薬すらほとんど出回らないことから考えると、驚異的な効能を持つキノコなのである。


 『特別魔法茸(エクストラ・マッシュ)』は、魔素を浴びた強力なキノコ菌により、一日で成長し収穫できてしまうのだ。

 しかも、餌の葉を補充しておけば、ほぼ永遠に生産できるのである。

 この葉自体も、大森林の豊富な魔素を大量に浴び、エネルギーに満ち溢れているのだ。


 通常は、このキノコを食べれば良いのだが、怪我などで食べられない場合もある。


 ケニーは、それに備え、液体の薬を作る計画を立てていた。

 液体薬ならば、飲んでもよし、飲めない場合は体にかけるだけで効果が現れるのだ。


 『マナ・ハキリアント』たちと共生している『マナ・アフィド』達の甘露と魔素をたっぷり含んだ泉の水を混ぜ、そこに各効能の『特別魔法茸(エキストラ・マッシュ)』を漬け込むだけで液体薬が作れるのだ。


 『マナ・ハキリアント』たちは、研究熱心な農家であり、現時点でも様々な効能の『特別魔法茸(エキストラ・マッシュ)』が作れる。


 『身体力(HP)回復薬』『スタミナ回復薬』『魔力(MP)回復薬』『解毒薬』『麻痺解除薬』『ステータス増強薬』などが主なラインナップだ。


 熱心な研究により、今後さらにラインナップが増えるに違いない。


 『マナ・ハキリアント』たちを率いる長老である“おばば”は言う…


「儂らは、やれることをやるだけですじゃ。親方様のために……。儂も、もう少し若ければの…… ホホホホ……」


 ケニーは、この“長老おばば”を生産部門を担当する新たな副官としたのであった。


 彼らの作った薬は、実戦訓練の時に、怪我をした者たちの回復に使うことになっている。


 回復担当の仲間達の行動訓練として、実戦さながらに行う予定である。


 またケニーは、種族固有スキル『糸織錬金』を使い、液体を入れる割れない容器を作った。


 おそらく彼女の“あるじ殿”が見たら、『糸でできたペットボトルみたいだ』と感心したに違いない。


 細かいところに気が回るケニーは、仲間たちが携帯しやすいように、専用のカバンも『糸織錬金』で作っていたのだった。

 仲間の姿・サイズに合わせて、ショルダーバッグやウエストポーチなどを作った。


 仲間が誰一人死なないようにという彼女の強い気持ちからであるが、それは、“あるじ殿”の指示を超えた“家族愛”のようなものに昇華していたのだった。


 その姿は、もはやみんなの“頼れるお母さん”状態であった。


 ケニーにとっては、無理に子を生まなくても、大森林の仲間たちが子供のようなものであったのだ。


 

読んでいただき誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、本当にありがとうございます。感謝です。

誤字報告していただいた方、ありがとうございました。

精進いたしますが、またお気づきになりましたら、ご指導願います。よろしくお願いします。


次話の投稿は、25日14時の予定です。


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[気になる点] 1 文体の不統一。 2 短文にもかかわらず、文尾を「〜なのだ。」「〜なのである。」等で締めている文章が多く、流れが悪い。
2021/12/30 06:15 退会済み
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