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418.花の聖獣、アルラウネ。

3人称視点です。

「子供たちは、早く屋敷の中に入るんだ! 出てきたらダメだよ!」

「はやく逃げろ!」

「早く中へ!」

「急いで! 急いで!」


 『ザングの街』にあるグリムの屋敷に、荒々しく男たちの声が響いた。

 『二代目舎弟ズ』たちが、保護している子供たちを守るために、誘導しているのだった。

 そう……この屋敷にも『吸血蝙蝠(ヴァンパイアバット)』と『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』たちが、現れてしまっていたのだ。


 門番として屋敷に配置されている『爬虫類軍団』の子犬サイズの巨大トノサマガエル二体や、飼育しているヤギ六頭、ロバ一頭、鶏十羽、ガチョウ二十一羽は、グリムの『使役生物(テイムド)』になっているので『共有スキル』が使える。

 この生物たちは、レベルが低いものの『共有スキル』を使って敵の攻撃を何とか防いでいたのだ。

 だがあくまで防御中心で、倒すことはできていなかった。


「このままでは……舎弟ズさんたちも動物たちも危険だわ……。お姉ちゃんたちもいないし……私に力があるなら……なんとかしたい! 『植物使い』の力ってどうすればいいの……? お願い! みんなを助けたいの!」


 『植物使い』という『使い人』スキルに目覚めた少女デイジーが、祈るように腕を組んだ。

 そして、みんなを助けたいと強く念じていた。


 すると、それに応えるかのように…… 屋敷の入り口付近にいるデイジーからは、少し離れた場所にある花壇が光りだした!

 デイジーが愛情を込めて育てている花壇の花たちが、一斉に光りだしたのだった。


 そして、その花たちは、かがんだようなかたちになると、次にはまるでジャンプするかのように一斉に地面から飛び出した!

 花たちは、空中で集まると花束のようになった!


 そして光り輝きながら、ぐるぐる右回りに回転しだしたのだった。


 そのまま光の球体になって、ゆっくりと地面に落ちた。


 その瞬間、まるでシャボン玉が弾けるかのように光の玉は、さっと消えてなくなった。


「わぉ! 私の出番ね!」


 言葉を発しながら現れたのは、可愛い五歳くらいの幼女だった。 

 緑色の肌をした幼女は、白いワンピースを着ている。

 まるで綿毛でできているようなふわふわとしたワンピースだ。

 黄緑のボブカットにした髪には、赤、青、黄、緑、ピンク、白、紫など色とりどりの花が冠にように咲いている。


 花から現れた少女は、屋敷の入り口付近で驚いているデイジーの下に走りよった。


「私は……花の聖獣『アルラウネ』! ご主人ちゃん、今後ともよろしく!」


 幼女は、少し大人びた表情で、デイジーに挨拶をした。


 そう彼女は、『植物使い』スキルを持つデイジーの真摯な願いに呼応して出現した『植物使い』の使い魔(ファミリア)となる聖獣であった。


「あ、あの……あなたは……?」


 突然のことに、事態が飲み込めないデイジーは、戸惑うばかりだった。


「大丈夫! 私は『植物使い』のあなたを守るために来たのよ! 見た目は子供でも……中身は、熟れっ熟れのお姉さんだから、ちゃんとご主人ちゃんを守ってあげるからね! 安心して見てて!」


 そう言うとアルラウネは、軽いステップで駆け出して、『吸血蝙蝠(ヴァンパイアバット)』と『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』たちがいる空中に向けてジャンプした!


 そして両手を広げると、指の先が蔓に変化して四方に伸びた!


「美しきバラには棘がある! 棘を味わえることに感謝なさい!」


 アルラウネの指先から伸びた蔓には棘が発生し、空中の『吸血蝙蝠(ヴァンパイアバット)』と『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』を次々に打ち付けた!


 鞭打たれた『吸血蝙蝠(ヴァンパイアバット)』と『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』たちは、大ダメージを受けながら次々に落下していった。


 それを『二代目舎弟ズ』や動物たちが取り囲み、トドメをさしていった。


 アルラウネは、着地しながら両手を通常状態にもどした。

 今度は右手だけを蔓のように長く伸ばしながら、縄を回すように空中で回転させた。

 すると、その先に花が咲いて……急激に成長し……カボチャの実のようなものが成った!

 そして、そのカボチャの実を、空中に残っている『吸血蝙蝠(ヴァンパイアバット)』と『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』にぶち当てて、次々に粉砕していった!


 まるで鎖鉄球のような攻撃である。

 超硬質カボチャによる撲殺攻撃なのであった。


 こうして、『サングの街』のグリムの屋敷に出現した『吸血蝙蝠(ヴァンパイアバット)』と『吸血(ヴァンパイア)(モスキート)』たちは、殲滅されたのであった。


「あの……助けてくれて、ありがとうございます。私はデイジーです。よろしくお願いします」


 デイジーは、窮地を救ってくれたアルラウネに礼を言った。


「いいのよ。あなたは、私のご主人ちゃんなの。これからは、私があなたを守るから安心してね」


 アルラウネは、幼女の姿には似つかわしくない大人びた表情で、優しく言葉をかけた。


「ありがとう……ございます。……あの……お名前は……?」


「友達に話すように気軽に話してくれればいいわ。名前はそうね……何かいいのつけてくれる?」


「え……名前……じゃぁ……さっきの戦っている姿が……お空に花が咲いているみたいだったから……ソラちゃんはどう?」


「ソラ……うん……いいわね。じゃあ、これからはソラちゃんて呼んでね!」


 ソラという名前を気に入ったアルラウネは、満足そうに頷いた。


「もう大丈夫だと思うけど……。一応周辺の警戒をしましょう。召喚! マンドラゴラ! 十体おいで! カモーン!」


 アルラウネのソラがそう言いながら、種のようなものを蒔くと……すぐに芽が出て、急激にカブが育った。

 更に大きくなると手が生えて、自分で土の中から飛び出した。

 八十センチくらいの小人サイズのマンドラゴラが出現した。

 カブの体に両手両足が生えて、顔もついている。

 葉っぱは、髪の毛のようになっていて、モヒカンのように、上に伸びたままの個体からロン毛のように下に垂れ下がっている個体まで、いろいろな個体が十体いる。

 マンドラゴラは、一時的な使い魔と言えるような存在で、魔法で作り出すゴーレムと同じような特性を持っているのだ。

 そして発動を解除すると、土からできたゴーレムが土に戻るように、普通のカブに戻るのだ。

 もちろん、食べることもできるのである。


 出現したマンドラゴラ十体は、アルラウネのソラの下に駆け寄って、跪くようなかたちで頭を下げた。

 もっとも……頭といっても、カブの体に顔がついているだけなのだが……。


「屋敷の周辺の警戒に当たってちょうだい!」


「「「キィー!」」」


 アルラウネのソラの指示に、マンドラゴラたちは一斉に、犯罪組織の下っ端構成員のような返事をした。



『サングの街』の全域で展開された防衛戦は、グリムの仲間たちの活躍で死者無しという完全勝利で終了したのだった。



読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、12日の予定です。


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