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395.お屋敷、メンテナンス。

 俺は、改めてスカイさんを始めとする『チーム義賊』のみなさんと、今後のことについて話すことにした。


『チーム義賊』のメンバーは、孤児の世話をしている元衛兵のスカイさん、その幼馴染で『商人ギルド』の受付嬢のジェマさん、『商人ギルド』の元ギルド長のレオさん、その幼馴染で元漁師でイカ焼き屋台の店主のマックさん、『アシアラ商会』の会頭で、俺専属の奴隷商人バーバラさんの知人でもあるアシアさんの五人だ。


「スカイさん、子供たちと一緒に私が購入した屋敷に引っ越しませんか? すぐに整備して使える状態にします。実は路上で暮らしている子供たちを、今私の仲間が集めているんです。その屋敷で保護しようと思っています。当初の予定では、役人に難癖をつけられないために、子供たちを下働きとして雇うかたちにしようと思っていましたが、エレナさんが不良役人は正してくれるでしょうから、その心配はしなくてよさそうです。ですから普通に保護して、養護院のようなかたちにしようと思っています」


 俺は、花売りの少女デイジーちゃんの頭をなでながら、スカイさんに提案した。


「私たちまで、お邪魔していいんですか……」


「もちろんです。ジェマさんはご存知ですが、結構大きい屋敷にしました。それに子供たちも大勢になると思います。世話を手伝ってもらえると、助かります。もちろん給金も払います」


「わかりました。お手伝いさせていただきます。ただ給金はもらえません。これ以上甘えるわけにはいきません」


 スカイさんは、そう言って頭を下げた。


「私もお手伝いします!」

「私も足が治ったから働けます!」


 デイジーちゃんともう一人の少女がそう言って、手を上げた。

 それに釣られるように、幼児たちも一斉に手を上げた。

 ニアの魔法で、手足を再生した男の子たちは、まだ意識を失ったままだ。


「もしよろしければ、私も手伝います。なにせ今は、自由気ままな漁師ですから。時間はいくらでも作れます」


 元商人ギルド長のレオさんも、手を上げながら茶目っ気たっぷりに申し出てくれた。

 ギルド長をクビになって以来、元漁師のマックさんの船を借りて漁に出ているらしい。

 マックさんのイカ焼き屋台で焼いているイカは、レオさんが獲ってきたものだったようだ。


「助かります。ぜひお願いします。ただ、給金は遠慮せずに受け取ってください。そうしてもらわないと、仕事がお願いしづらいのです。ぜひお願いします。それから、この『チーム義賊』の皆さんで、今後やってもらいたいことがあるのです。悪徳商人から奪ったものを配る代わりに、貧しい人たちに食事を提供する『炊き出し』をやってほしいのです。できれば毎日お願いしたいのです。一日一食だけでも、お腹いっぱい食べられるようにしたいんです。貧しい家の子供も救うことができます。働けなくて困っている人も、一時的には助けられるでしょうし。『炊き出し』で提供する食料は、全て私の方で用意します」


 俺は『チーム義賊』としての活動も提案してみた。

 お金を配るわけではないけど、貧しい人が食べられるようにする一つの手段ではあると思うんだよね。


「なるほど! そいつはいいなぁ! すばらしい! 一日一食なら、屋台の連中も営業妨害だとは言わないだろう。下町の貧民街でやれば、なおさらいいね。どの道、屋台では買えない連中だからな」


 イカ焼き屋台の店主マックさんが、頷きながら破顔した。


 マックさんは、屋台商のまとめ役である胴元の一人らしい。

 そして、街の世話役の一人でもあるようだ。

 ちなみに『アシアラ商会』のアシアさんも、世話役の一人とのことだ。

 マックさんは、独身でありながらも子供が大好きで、屋敷の方もできる限り手伝うと言ってくれた。



 そんな感じで、俺たちは今後のことをいくつか話し合って解散した。


 スカイさんと子供たちは、今眠っている男の子たちが意識を取り戻して落ち着いたら、俺の屋敷に来ることになった。


 俺たちは先行して屋敷に行って、整備をして受け入れ体制を整えることにした。






  ◇






 中級エリアにある屋敷に着いた。

『サングの街』の屋敷なので、『サング屋敷』と呼ぶことにした。

 大きな門を開けると、いきなり草がボーボーだ。

 リリイとチャッピーが体を動かしたそうにしていたので、庭の草刈りをお願いすることにした。


「リリイの剣技をお見舞いしちゃうのだ!」

「チャッピーの修行の時間なの〜」


  二人は張り切って練習用の木剣を抜いた……


 どうしてよ……? ここは草刈り鎌にしようよ……。

 二人の分は渡してあるのに……。

 しかもなんで木剣なわけ……?

 切れないでしょうよ……。


 と心の中でツッコミを入れていると……


 え……二人は木剣で草をバンバン刈っている……。


 本当に二人の剣技の鋭さで、草を刈れてしまっているようだ。


 まぁ冷静に考えれば、木剣でも切れないことはないと思うけどね。

 俺が元の世界で使っていた草刈り機でも、スチールなどの刃の代わりにナイロン糸のパーツを使用するときがあった。

 石などが多い場所の草を刈るときに便利だった。

 普通の刃では石に当たってかけて飛んだりして危険なのだが、ナイロンの糸なら石に当たっても平気なのだ。

 普通の状態のナイロンの糸では草を切ることができないが、草刈り機にセットして高速回転させることで容易に草を切れてしまうのだ。

 それと同じような感じで、木剣でも鋭く振れば草を切れてしまうのだろう。


 それにしても、めちゃくちゃすぎるけどね。


 二人はトレーニング感覚で、なんの疑いもなくやってしまっている。

 やはり疑わないというか……信じきるって強いよね……。


 しかも、二人はただ切っているだけではないようだ。

 どことなく動きに見覚えがある……

 あれは……前にセイバーン公爵軍の近衛隊長のゴルディオンさんが『死人魔物』にお見舞いしていた『コウリュウド式伝承剣技 龍閃(りゅうせん)』だと思う。

 あの居合斬り的な感じ……絶対そうだわ……。

 一振りで前方の草が薙ぎ倒されている。


 この子たち……八歳にして……伝承剣技をマスターしかけちゃってるけど……。


 さすがうちの子! さすが天才!


 外の草刈りは、二人に任せよう。

 他のメンバーにも、自由にやれることをやってくれるように頼んだ。


 ただ、『エンペラースライム』のリン、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・タートル』のタトルには特別任務をお願いした。


 この街でも、ここに集まってくる子供たちを守るために軍団を組織しようと思う。

 早速『スライム軍団』『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』を組織するための勧誘活動をしてもらうことにした。


 俺は、屋敷の中の整備に取り掛かろうと思っている。


 まずは屋敷を住めるように、綺麗にする必要があるからね。


 サーヤの家魔法は『共有スキル』にセットしてあるので、俺も使えるのだが一応サーヤに来てもらうことにした。

 サーヤの方が慣れているので、家の修繕と清掃は頼もうと思っている。

 それにこの屋敷をサーヤの転移先として登録してほしかったので、一度は呼ぶ必要があったからね。

 ちなみにサーヤは『家馬車』に移転してくるので、初めてのこの場所でも来ることができたのだ。


 俺は、大きなお風呂を作ろうと思っている。


 『マグネの街』の『ぽかぽか養護院』に作ったような大きなお風呂を作るのだ。

 『湯沸かしの魔法道具』も予備を持っているから、それを使えば大丈夫だ。

 水は風呂の近くに新たに井戸を掘って、流し込めるかたちにしようと思ってる。



 風呂作りが終わり外に出てみると、リリイとチャッピーが頑張ってくれて、すっかり綺麗になっていた。


 『竜馬』のオリョウは、自分の部屋ともいえる厩舎を綺麗にしたようだ。

 厩舎の前には、リリイたちが刈った草が山のように積まれている。


 そして庭の一画に、綺麗な花畑ができていた。

 これは『ミミックデラックス』のシチミと、『ワンダートレント』のレントンがやってくれたようだ。


 詳しく聞くと人型に擬態したシチミが、人形のふりをしたレントンを抱えて、この街にある花の自生地に行って、株ごと抜いて移植したのだそうだ。

 デイジーちゃんが売っていた花と同じような花だ。

 デイジーちゃんが花摘みができるように、探してくれたらしい。

 もう今までのように花売りをする必要はないのだが、もしデイジーちゃんがやりたいなら、ここから摘めばいいということだね。

 こっちに引っ越してくると、今まで花を摘んでいたところからは、遠くなるだろうからね。

 シチミとレントンは、そこまで考えてくれたようだ。




読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、20日の予定です。


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[気になる点] 最後の部分ドロシーじゃなくてデイジーでしょ
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