373.フードファイター、なの?
『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんは、未だ爆食いを続けている。
でも一生懸命食べている姿が、めっちゃかわいいのだ。
もう屋台の営業が始まっていると思うので、屋台の話をミネちゃんにしてあげたら……
目がランランと光だし……爆食いのスピードが二倍速になった……。
この人……屋台のメニュー全部食べる気だよ……。
お腹壊さないかな……
俺のそんな心配をよそに……屋台メニューを食べたいらしく「なぜか、お腹がいっぱいにならないのです!」と腹ペコアピールを始めてしまった。……ほんとにお腹壊さないでよ。
そんな時……城の侍女たちが屋台のメニューを一通り運んできた。
なんと……アンナ辺境伯が、これを見越して頼んでいたようだ。
さすが……なんて気配り……。
おまけに最後に来た侍女は、胃腸の薬まで持ってきている。
アンナ様、完璧すぎなんですけど……。
運ばれてきたのは、現在の『フェアリー商会』の屋台メニュー全てだ。
『おにぎり』『ホットドッグ』『コロッケ』『フレッシュジュース』『かき氷』だ。
『フレッシュジュース』と『かき氷』は複数あり、みんなで好きなものを選ぶ感じだ。
運ばれてきた『フレッシュジュース』は、フルーツと野菜をミックスした体にいい『ミックスジュース』と、新商品の『レモンサイダー』の二種のようだ。
『レモンサイダー』は、レモン果汁に炭酸を加えたもので、『フルーツサイダー』シリーズ第一弾として先行発売しているものだ。隠し味程度に蜂蜜が入っていて、少しだけ甘みがあるが基本的にはすっきりとした味わいなのである。
いわば大人の味わいといった感じだ。
『かき氷』は、シロップが四種類あり、全て複数個運ばれてきている。
『ジュース』や『かき氷』は別腹で、みんな食べるだろうというアンナ辺境伯のナイスな気遣いだろう。
シロップは、『練乳』『野イチゴ』『ブルーベリー』『レモン』の四種類だ。
『かき氷』は、『マグネの街』でも『領都』でも『ナンネの街』でも大評判で、屋台が増設されるほどだという報告が上がっている。
各広場に本来一つの屋台のはずが、行列ができてしまうので、『かき氷』だけは二台から四台出店しているようだ。
『フレッシュジュース』と『かき氷』については、木製のコップと深皿とスプーンを使っている。
なるべく回収して使い回しているが、持って帰ってしまう人も多いらしく生産するのが大変になってきているようだ。
コスト的にはなんとかなっているが、作る手間が大変とのことだ。
俺の『波動複写』でコピーすれば簡単なのだが、チート技がなくても運営できる体制を作りたいから基本的にはやらないようにしているのだ。
そんな話を少ししたら……ミネちゃんが、一瞬、爆食いを止めて久しぶりに言葉を発した。
「ミネに、いいアイディアなのです! でも早く食べてあげないと、ごちそうさんが泣いてしまうのです! 食べてから、ゆっくり話すのです!」
そう言って、親指を立てたポーズをした後、爆食い状態に戻ってしまった。
そしてその隣では、なぜかドロシーちゃんが頭を抱えて苦しんでいる。
どうも『かき氷』大好きなドロシーちゃんが、ミネちゃんに触発されて、爆食い状態で口に入れてしまい、いわゆる『アイスクリーム頭痛』に襲われているようだ。
冷たいものを急いで食べたときになるあれだ。
確か……『アイスクリーム頭痛』というのは、正式な医学用語だった気がする。
まったく関係ないけど、そういえば今度アイスクリーム作ってみよう。
ミルクはいっぱいあるんだし、全然できちゃうよね!
……まぁそれは後にしよう。
今度は、リリイまで眉間を抑えている。
さらにチャッピーは、脳天を抑えネコミミが、ペタンとなってしまっている。
二人とも、急いで食べ過ぎたようだ。ヤラカシちゃったね。
高レベルでも……『アイスクリーム頭痛』は発生するのか……。
ということは、もしかしたら俺も『アイスクリーム頭痛』が普通に発生するのだろうか……。
まぁ試す気にはならないが……。
それにしても、ミネちゃんの食べっぷりがすごい!
『ホットドッグ』は、さっき食べていた『やわらかパン』と『ソーセージ』の合体なので、大した違いはないと思うのだが。
なにか同時に食べることに感動しているようだ。
まぁケチャップとマヨネーズもかかってるから、美味しさも倍増するんだよね。
そして、なんといっても一番気に入っているのは『おにぎり』っぽい。
もう何個目かわからない……ほんとにこの子大丈夫なんだろうか?
そして『コロッケ』もハフハフしながら食べていて、すごく幸せそうだ。
おお……この子……すごい新技を繰り出している!
『おにぎり』二個の間に『コロッケ』を挟んで、一緒に食べ始めちゃった!
めっちゃ分厚いのに、大口を開けて齧りついている!
すごい食べ方だ。
というか……ある意味ハンバーガーっていうか……ライスバーガーだね。
改めて思ったけど……今度『ハンバーガー』を開発しようかなぁ……ハンバーグを作って。
『ホットドック』の次は『サンドイッチ』をリリースして、その後『ハンバーガー』をリリースしようと思っていたが……
なんか俺自身が『ハンバーガー』を食べたくなってしまった。
名前は……『フェアリーバーガー』がいいかな……オープンしようかなぁ……。
「ガブ、ゲボ、ゴボ、だ、だずげでなのです……これはなんなのです……」
『ミックスジュース』を飲み干したミネちゃんが、『レモンサイダー』を飲んだらしいのだが、炭酸ということがわからず、普通の感覚でガブ飲みしてしまったらしい……。
噴水状態だ……上を向いて咳き込んでしまったらしく、口に含んだ『レモンサイダー』が噴水状に舞い上がったのだ……そしてそこに小さな虹がかかった……なんのこっちゃ!
「ミネちゃん、それは炭酸と言って喉がシュワシュワして気持ちいい飲み物なんだけど、ゆっくり飲まないとむせちゃうから気をつけて。ただリリイもチャッピーも苦手だし、無理に飲まなくていいと思うよ」
俺は、ミネちゃんの顔をタオルで拭きながら教えてあげた。
「はあ、はあ、死ぬかと思ったのです。この『レモンサイダー』さんは、めっちゃ強敵なのです! でもミネは負けないのです! でも……返り討ちにするのは、明日にするのです……」
そう言ってミネちゃんは、新しく出された『ミックスジュース』に手をつけた。
無理はしないようだ。まぁそれが正解だろう。
ご飯系を食べ終わったミネちゃんは、みんながさっきから美味しそうに食べている『かき氷』に取り掛かった。
侍女たちが、うまくタイミングを見計らって『かき氷』を運んできてくれた。
領城で屋台を出店している広場は、この中庭からも近いんだよね。
ていうか、むしろこの中庭から近い広場が選ばれた感じだけどね。
「ミネちゃん、この『かき氷』は、ふわふわして冷たくて美味しいけど、急いで食べると頭が痛くなるから気をつけるんだよ」
今度は、事前に注意をしてあげた。
「わかったなのです! ゆっくり味わいながら勝負するのです!」
ミネちゃんはそう言うと、目をキラリと輝かせた。
いまいちわかっていないような気がする……。
ていうか……勝負って……意味がわからないんですけど……。
もしかして……フードファイター……?
「ああ……痛い……やはり強敵なのです……」
ミネちゃんが、眉間を抑えている。
リリイとくる場所が同じらしい。
あれほど注意したのに、今までと変わらず普通に爆食いしてしまったようだ。
一度経験すれば、身に染みるだろう。
「ま、負けないのです……」
なんとミネちゃんは、頭が痛いのに更に爆食いしだした!
なにか違う気がする……いや、全然違う! その根性の使い方、完全に間違ってるから!
もうわけわかんないし!
ゆっくり食べようよ。
そんなこんなで、みんなでワイワイ騒ぎつつも、ミネちゃんは全種類を完全制覇した。
どんだけ入るの!? ……ほんとにフードファイター?
もちろんこの世界には、そんな職業はないと思うけど。
もうミネちゃんのお腹自体が、亜空間収納なのではないだろうか……。
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