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367.地下街の、整備。

 俺は閃いてしまった!


 この地下街とは別に、地上部分に温泉旅館を作ったらいいと思う!


 ここは、ピグシード辺境伯領の『マグネの街』と『アルテミナ公国』を結ぶ不可侵領域の街道……俺が勝手に名付けた『ピア街道』のちょうど真ん中の位置にある。

 宿泊施設を作るには最適な場所なのだ。


 この街道は、馬車でゆっくり行けば三日、急いでも二日ぐらいかかるので、旅人はみんな野宿をするのだ。

 ちょうど中間くらいの場所に宿泊施設があれば、みんな快適に宿泊できるし安全だ。

 絶対に喜ばれるに違いない。

 しかも温泉なんて……最高じゃないか!


 不可侵領域だから、誰の許可もいらないはずだし……


 温泉旅館……本気で考えてみるか……。


 ハイテンションになってしまった俺は、すぐに仲間たちに話してしまったのだ。


「うん、いいんじゃない! 面白い! 温泉旅館なんていいわね。みんな喜びそうだし」

「大きいお風呂は、気持ちいいのだ!」

「チャッピーは、泳ぎたいなの〜」


 ニア、リリイ、チャッピーはいつものように、深く考えることもなくノリノリだ!


 そして……『アメイジングシルキー』のサーヤ、『アラクネロード』のケニー、『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドの顕現体であるナビーが、なにやら話し込んでいる……。


 なんか、この優秀な三人が話し込んでると……めっちゃすごい感じだ。


 話がまとまったらしい……サーヤが代表して話すようだ。


「旦那様、素晴らしい考えだと思います。確かに不可侵領域だから誰の許可も入りませんが、逆に言えばアンナ辺境伯の威光も及ばないということです。『アルテミナ公国』などから、横槍が入る可能性もあります。そこで、妖精族が営む温泉宿にしてはどうでしょう。『コウリュウド王国』はもちろんですが、それ以外の国でも、妖精族に対しては基本的に好意的ですし、あからさまに敵対的な行動は取りにくいはずです」


 なるほど……そういうことか……。


 俺は、そんなことは考えてもみなかった。


 さすがサーヤ、ケニー、ナビー……優秀すぎるわ……。

 ていうか……本当にもうこの人たちだけでいいよね……俺は別にいなくていいよね……。

 まぁ卑屈になるのはやめよう……仲間が優秀というのは、嬉しいことだ。


「なるほど、いいんじゃないかな。でも妖精族がやるっていっても……誰がやる?」


 もちろんサーヤがやってもいいのだが……サーヤもこれ以上はきついよね。


「はい。妖精族が運営しているというのは建前で、普通に人族が働いていてもいいと思います。行く場所ない人やここで働きたいという人は、受け入れればいいと思います。そして当面は、ケニーにリーダーを任せ管理してもらえばいいと考えます。大森林も近いですし」


 サーヤがそう答えた。


 なるほどね。

 無理に妖精族だけでやる必要はないわけだね。建前だからね。


「ケニーは、いいのかい?」


 一応ケニーに確認する。


「はい。あるじ殿のお役に立てるのであれば……ただ……できれば、あるじ殿のお供をさせていただく時間もいただければと……」


 ケニーはそう言いながら、人差し指を胸の前でツンツンさせている。

 そして顔が赤い……本当にかわいいやつだ。


「もちろんだよ。せっかく人型になれたんだから、人間の街でも活躍してもらうつもりだよ。あくまでここのリーダーというだけで、ケニーが常駐する必要はないと思うよ。それに適任者が育てば、任せればいい。ケニーは、俺の大事な右腕ともいえる存在だから、なるべくフリーな状態で動ける方がいいしね」


 俺がそう言うと……


 ケニーは、さらに真っ赤になり顔から湯気を出した。

 そして胸の前でツンツンさせている人差し指が……目視できないくらいの超高速ツンツンになっている……。


「は、はい。あ、ありがとうございます」


 ケニーはそれだけ言うのがやっとのようで、なにか一人でハアハア言っている……大丈夫なんだろうか……?


「ちょっと! じゃぁ私は左腕よね!?」

「旦那様、そうなると……私はどこになるのでしょうか? 右足でしょうか? 左足でしょうか?」


 なぜかニアとサーヤが、少し抗議の顔つきで俺に迫ってきた。


「いやいや、右腕というのは例えだから……。大事な仲間っていう意味だよ。ニアだって、サーヤだって大事な右腕だよ……。まぁでも右腕っていう表現はあまり良くないかなぁ。頼りにしてるって意味だけど、俺の気持ち的には、みんなは自分の手足というよりは、大事な大事な仲間だからね」


「あっそう。な、ならいいわ」

「はい、旦那様。わかっております。一生を共にするということですね。……ふふふ」


 ニアとサーヤは、納得してくれたのか満足そうな笑みを浮かべた。

 なんかちょっと怖い感じだが……。



 ということで、これからこの地上部分に大きな温泉旅館を立てて運営することにした。


 一応、妖精族の運営ということで『フェアリー商会』とは、切り離したかたちにすることにした。

 そこで、ニア、サーヤ、ケニー、ナビーに名前を決めてもらった。

 俺が決めると、またジト目を使われちゃうからね……。


 『ピア温泉郷 妖精旅館』という名前になった。

 なんか……なんのひねりもない普通な感じなんですけど……。

 ほんとにこれでいいわけ……?

 俺でも付けれそうな名前なんですけど……。

 そして俺がつけていたら、絶対ジト目を使われていたと思うんだよね……。


 そんな気持ちも込めて、チラッとニアさんを見ると……


「なによ! オーソドックスなのが一番なのよ! 普通が一番よ!」


 となぜか逆ギレされた……どうしてよ!



 温泉旅館については、焦ってやる必要もないので、ゆっくり準備をすればいいだろう。

 まずは、この地下街の生活居住空間を充実させてあげるのが先決だ。


 まずは、この広場で数日暮らせるように、整備をしなければならない。


 仲間たちに協力してもらって、ベッドの設置や生活必需品の設置を行った。

『ワンダートレント』のレントンを中心に、ベッドやボックス収納などを作ってもらった。

 ベッドに使うマットレスや布団などは、『波動収納』にストックしてあったものを『波動複写』でコピーすることにした。

 他にも様々な生活用品を仲間たちが揃えてくれた。


『正義の爪痕』のアジトから没収した食料も、この地下街に作った倉庫に入れたので、食べ物に困ることはないだろう。


 温泉とは別に、湧水もあるので、飲み水や生活用水に困ることもない。


  一番問題になるのは……やはり『下級吸血鬼 ヴァンパイア』になってしまった人たちの吸血衝動だ。

 三日に一度ぐらいは血を飲まないと、禁断症状のようになって、暴走して人を襲う可能性があるということだったからね。


 みんなで話し合った結果、今まで同様、捕虜だった人たちが血を提供してくれることになった。

 まとめ役になっている五十代の男性が申し出てくれ、他の皆さんも賛同してくれたのだ。

 最悪は、家畜動物たちから血を分けてもらおうと思っていたが……良かった。


 『暗示』状態が解除されたあとも、男同士が向き合って吸血するというのは……微妙な感じだと思うが……。

 ここなら誰にも見られないから我慢してもらおう。

  一部のコアなファンには、悶絶の光景かもしれないけどね。


 ちなみに捕虜になっていた百三人は、二十代三十代が多いものの十代から五十代まで幅広い年代層だ。

 吸血鬼にされて構成員となっていた百五十三人は、みんな二十代と三十代の若い男ばかりだ。

 構成員として活動させるために、意図的に若いものを選抜したのだろう。

 吸血鬼予備軍だった一歩手前状態の捕虜百三人に、五十代の人がいたのは、初めから……吸血鬼にした後『死人薬』を飲ませて『吸血魔物』にするつもりだったからではないだろうか……。

 魔物にしてしまうなら、年齢も体力も関係ないからね。


 つくづくふざけた組織だ。



 俺は、次に家畜動物たちの飼育スペースを改良してもらうことにした。

『マナ・ホワイト・アント』たちに頼んで、日光が差し込む場所を作ってもらったのだ。

 天井の一部に穴を開け、地上にはそれがわからないようなカムフラージュをしてもらった。

 動物たちには、健康のためにも日光を当ててあげたかったのだ。

 もちろん今回保護した動物たち……牛四十六頭、鶏九十七羽、馬車馬五頭は、いつものようにみんな俺の『使役生物(テイムド)』となって仲間になっている。

 この動物たちの世話は、日光にあたっても大丈夫な捕虜だった百三人に担当してもらおうと思っている。

 まぁ世話といっても、俺の仲間になった動物たちは、手がかからないんだけどね。



 

読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、22日の予定です。


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