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366.身上調査と、秘密保持契約。

 保護した構成員で『下級吸血鬼 ヴァンパイア』の百五十三人と、捕虜だった人たちでヴァンパイア一歩手前の『適応体』状態の百三人を、秘密の地下施設がある『ピア街道地下街』に連れて行く前に、やっておかなければならないことがある。


 これからしばらくその場所で暮らしてもらわなければならないことを説明し、了承してもらわなければならない。


 それにあたっては信用してもらうために、俺とニアが説明する必要がある。


 隠密作戦だったので、今までは『闇の掃除人』仕様で仮面をつけていたから、彼らにとっては俺が誰だかわからないのだ。


 まぁもっとも仮面を外して素顔を晒しても、誰だかわからないだろうけどね。

 ここにいる人たちは、他国や他領の人もいるだろうし、ピグシード辺境伯領の人も悪魔の襲撃の時に拐われたんだとしたら、俺たちが活躍する前の話だからね。


 ただ素顔を晒さない人間に説明されるよりは、安心してもらえるのではないかと思う。

 もちろん、騎士爵の身分も明かそうと思っている。

 ピグシード辺境伯が後ろ立てとしてついていて、保護してくれるというのは安心材料になるのではないだろうか。


 ただそれにあたっては、これから行く施設のことも含めて最低限の秘密保持はしなければならない。

 いつものように、サーヤに契約魔法で秘密保持契約を結んでもらおうと思っている。

 もっとも『共有スキル』に入っているから、誰でも契約魔法が使えるんだけどね。

 慣れたサーヤの方がいいだろう。


 それにサーヤは人を見る目が確かだから、一人一人と秘密保持契約を結ぶ段階で、素行が悪い者などのチェックもできる。

 基本的には、みんな拐われてきて『暗示』で無理矢理構成員にされていただけだから大丈夫だと思うが、もしそういう人間がいたら対応を考えないといけない。

 いないことを祈るのみだ。


 秘密保持契約を結ぶにしても、今後どうなるか分からないし、元の暮らしに戻れる可能性もあるので、彼らに対する情報開示は最低限にしようと思ってる。

 今から行く場所が、不可侵領域にあるということも秘密にしようと思う。

 地下街から出れないから、どこの場所にあるのかわからなくても問題ないだろう。


 それから以前に女性たちを保護したときと同じように、各人の身上調査というか、状況の把握と今後の希望の聞き取りもしておこうと思う。


 もし家族が残っているなら、なんとか家族のもとに戻れるようにしてあげたい。

 行くあてがないのなら、『フェアリー商会』で働いてもらってもいい。


 ただ、その前に考えなければならないことがある。

 今までと違って、クリアしなければならないことがいくつもあるのだ。

 吸血鬼に変性してしまっている人たちは、見た目は普通の人間と変わらないが、太陽光の下では暮らせない。

 吸血衝動の処理の問題もある。

 変性してない『適応体』状態の人たちも、事故などで命を落とすと吸血鬼に変性してしまうので、普通の生活に戻るというのも厳しいと思う。

 この人たちについては、まだ吸血鬼になっていないので、なんとか元の状態に戻せないか知恵を絞る必要もある。


 この件も含めユーフェミア公爵やアンナ辺境伯、そして王立研究所の上級研究員であるドロシーちゃんなどの知恵も借りたいところだ。


 今のところ物知りのニアもサーヤも、もちろんナビーも有効な対策は思いついていないからね。

 回復魔法は試してみたが、ダメだった。

 皮下組織に埋め込まれた『死人薬』を排出した時のように、吸血鬼の血が排出できないかと期待したが、そう甘くはなかった。

 ステータスの『状態』に『吸血鬼適応体』と表示されるので、確認できるのだ。



 しばらくして、サーヤが戻ってきた。


 俺とニアとサーヤ、そして顕現状態のナビー、サーヤと一緒に応援のために転移してきた『アラクネロード』のケニーで手分けして、身上調査を行った。

 さすがに聞き取りは時間がかかるので、手分けして行うことにしたのだ。


 秘密保持契約の契約魔法は慣れているサーヤに頼もうと思っていたが、これもよく考えたら数が多すぎて大変なので、サーヤの監修のもと皆で手分けして行うことにした。






  ◇






 手分けしてやったお陰で、二百五十六人全員の簡単な身上調査と秘密保持契約を四時間で終わらせることができた。


 素行に問題がある人や、危険な思想の人、犯罪歴のある人はいなかった。


 第一王女で審問官のクリスティアさんみたいに、『強制尋問』スキルで無理矢理真実を語らせることはできないが、『共有スキル』に『虚偽看破』があるので、嘘をついているかどうかは判断できる。


 だからちょっと危ない感じの人がいれば、過去に犯罪を犯したことがあるかとか、人を殺したことがあるかというような質問をすれば、嘘をついてるかどうかはわかるのだ。


 このスキルがあると、超高性能な嘘発見器にかけてるのと同じ状態なのだ。


 そのおかげで、少なくとも人殺しなどの重犯罪を犯した者や危険な思想の者はいないことがわかった。

 全員を連れて転移ができそうだ。よかった。


 

 早速、三十人くらいに分けてサーヤの転移で連れて行くことにした。


 第一陣には俺も同行した。


 転移した先は、かなり大きな広場になっていた。

『テスター迷宮』の一階層の広さとほぼ同じくらいありそうだ。

 ドーム球場一つ分くらいの大きさがあるのだ。


 これだけ広げれば、ここだけでもいいような気もするが……。

 まぁ数日ならいいかもしれないが、長くなる可能性が高いから、やはりプライバシーに配慮した方がいいだろう。


 この大きな円形広場の外側に、同心円状のスペースが作ってあるようだ。

 東西南北それぞれに、大きな道ができている。

 その先に用途別にエリアを構築しているようだ。まだ構築中なのだ。


 北側のエリアには、倉庫が作られている。

 東と西のエリアには、居住用の小部屋を構築中のようだ。

 大きめのワンルームくらいの広さで、一人に一部屋割り当てる予定らしい。

 バイオトイレも、完備するようだ。

 南のエリアには、家畜のスペースと共同の大浴場を作る予定らしい。


 この地下街を上から見たとしたら、中心に大きな円形の広場があって、その外側に同心円状の大きな円形のスペースが広がっている構造になっている。

 そこの北側に倉庫、東と西に居住エリア、南に家畜飼育場と浴場があるというかたちなのだ。



 そして全体の指揮をとっているケニーから、すごい報告があった!


 この地下街を作っているときに、なんと、暖かい水の源泉を発見したらしい!

 つまりは……温泉の源泉を発見したのだ!


 そこで、その温泉の源泉に近い南側のエリアに、大浴場を作ることにしたらしい。


 そう大浴場は、温泉なのだ!


 すごい……温泉に入れるなんて!

 めちゃめちゃ嬉しい発見だ!


 というか……これは温泉旅館を作ったほうが、いいんじゃないだろうか……。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、21日の予定です。


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