336.加護の、威力。
「それから……グリム君にも加護を授けるのじゃ!」
大精霊ノームのノンちゃんは、『土使い』のエリンさんの『使い魔』である犬型の『リアルゴーレム』のカールとひとしきり遊び終わると、思い出したかのように言った。
「私に加護ですか?」
「そうなのじゃ! ワシの顕現に協力してもらった礼なのじゃ!」
ノンちゃんはそう言うと、今度は俺に右手をかざした。
エリンさんのときと同じように、光が発せられ、俺を包み込んだ。
光が俺の中に入っていく…… なんか……体が暖かい。
ステータスを確認すると……やはり『加護』に『大精霊ノームの加護』が追加されていた。
そして、『通常スキル』に『土魔法適性』と『土魔法——土の癒し』が追加されていた!
『大精霊ノームの加護』の影響で、身についたようだ。
しかも『土魔法——土の癒し』は、極上級の回復魔法で、精神疾患、疲労状態を回復し、『暗示』などの精神操作状態を解除できるらしい。『基本ステータス』の『スタミナ力』と『気力』も回復できるようだ。
これは非常にありがたい!
洗脳状態も解除できるといいのだが……。
洗脳は、本人も気づかないうちに自然なかたちで思考誘導されている状態で、強制的に精神操作されているわけではない。
それ故に、このスキルで解除することは難しいかもしれないが、一度試してみたい。
今領城では、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんが、『正義の爪痕』の構成員の洗脳状態を解除する方法を研究してくれているが、このスキルで解除できるなら手っ取り早いのだが……。
まぁもしダメだったとしても、ドロシーちゃんの研究に期待しよう。
「ありがとうノンちゃん! 素晴らしい魔法スキルが身に付いたよ!」
俺は嬉しくて、思わずノンちゃんを抱き上げてしまった。
見た目は五歳児だから、ついつい抱っこしたくなっちゃうんだよね。
「うっひょう! これは楽しいのじゃ! もっとやってくれなのじゃ!」
抱き上げられたノンちゃんは、楽しかったようでアンコールを要求してきた。
俺は小さな子供にするように、抱き上げて軽く振り回してあげた。
ノンちゃんは大喜びの大はしゃぎ状態になってしまった!
それを見ていたリリイとチャッピーは、最初はお姉さんとして我慢していたようだが……
……我慢しきれなくなったようだ。
「リリイも抱っこして、ブンブンやってほしいのだ!」
「チャッピーも抱っこしてほしいなの〜。ブンブンしてほしいなの〜」
俺は、ノンちゃんが飽きるまでじっと我慢していたリリイとチャッピーを、順番に抱き上げてブンブンしてあげた。
「そうだ!それだけではないのじゃ! 加護によるボーナスで『固有スキル』のレベルが上がってるはずじゃ! ちょっと工夫して、そこにボーナスポイントを振ってやったのじゃ!」
思い出したように、ノンちゃんがそう言った。
加護によるボーナスポイントってなに……?
そんなシステムあるわけ……?
改めてステータスを確認すると……
おお……確かに『固有スキル』の『自問自答』スキルが、レベル3からレベル5に上がっていた!
なかなかスキルレベルが上がらなかった『自問自答』スキルが、なんと2レベルも上がってしまった!
『固有スキル』の『ポイントカード』のポイント使ったスキルレベルのアップは、『通常スキル』が対象で、『固有スキル』である『自問自答』スキルにはできなかった。
自力でスキルレベルを上げるしかないが、なかなか上がらなくて苦労していたのだ。
これは本当に嬉しい!
この『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーが、パワーアップしてくれているんじゃないかと思う!
(ナビー、スキルレベルが2つも上がったけど、どうだい? パワーアップした?)
(はい、『ナビゲーター』コマンドの中に、サブコマンドが発生しています!『顕現誘導』というサブコマンドです!)
おお、凄い!
サブコマンド発生! そして念願のナビーのパワーアップ!
俺は改めて自分でステータスを再確認してみた。
確かに『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドの中に、サブコマンドとして『顕現誘導』が発生している。
内容は……
『顕現誘導』——ナビゲーターが物理的に顕現し、活動できるサブコマンド。本人の分身に等しい状態なので、レベルもスキルも全て本人と同一のものとなる。ただし『身体力(HP)』『スタミナ力』『気力』『魔力(MP)』は、本人と顕現体とでシェアしている状態なので、本人もしくは顕現体のいずれかの数値が変動すると、もう片方の数値も同様に変動する。
おお! なんか凄い!
ナビーが実体として、顕現できるらしい!
ある意味……分身の術に近いことができるようだ!
元の世界にいたとき……仕事が忙しいときに、自分がもう一人いればいいのにと思ったことが何度もあった。その時思った夢の分身機能ができるらしい!
いや……分身というより……自分より優秀なパートナーが現れる感じだから、よりいいよね!
「ノンちゃん、ありがとう! 確かに『固有スキル』のレベルが上がって、パワーアップできたよ!」
俺は自分でもわかるくらい笑みがこぼれて、半笑いしながらノンちゃんにお礼を言った。
そして、また抱き上げてブンブンしてあげてしまったのだ。
ただこれをしちゃったがために……当然のごとくリリイとチャッピーにも、やらなきゃいけなくなって……
またしばらく“抱っこブンブン”の時間となってしまった……。
二回目の“抱っこブンブン”の時間が終わって落ち着いたところで、俺はみんなに『固有スキル』の『自問自答』スキルのレベルアップについて説明した。
以前は『自問自答』スキルについてはあまり詳しく説明していなかったが、この前レベルが上がってナビーが念話で直接仲間たちとやりとりができるようになったときに、かなり詳しく説明をしていたのだ。
そして今回2レベル上がったことでパワーアップして、実体として顕現できるようになったことを説明した。
ナビーは、直接仲間たちとやりとりができるようになってからというもの、どんどん仲間たちとコミニケーションをとっていた。
俺自身ということもあり、俺もなんとなくはわかっていたが、細かい内容までは俺自身が知ろうとしていないので、把握していないのだ。
そして今回の『正義の爪痕』のアジト急襲作戦でも、ナビーが中心的な役割を果たしたこともあって、もうすっかり仲間たちとは、ツーカーの間柄になっていたのだ。
仲間たちも、俺自身であって俺自身でないという……ある意味不可思議な状態も抵抗なく理解してくれているようだ。
そのナビーが、実体として現れることができるようになったと聞いて、みんな喜んでくれている。
さて……それじゃあ、ナビーを実体化してみますか!
……なんか……俺が一番ドキドキするんですけど……
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