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330.隠されていた、魔法カバン。

  魔力を流した床が不穏な振動を始めたので、俺は急いで魔力を吸い上げた。


 ……ふう……危なかった……。

 なんとなく床板が爆発しそうな雰囲気だった。

 急いで魔力を吸い戻したおかげで、大丈夫だったようだ。

 以前の俺だったら魔力を流した時点で爆発してるか、そうじゃなかったとしても、すぐに魔力を吸い戻すことができず、どのみち爆発させていたと思う。


 と自分に言い訳をしつつ……ナビーどう思ってるかなぁ……などと心に思ってしまったがために……


(別になんとも思っていません! 以前よりは、だいぶ魔力調整ができるようになりましたから。ただサボらずに、継続して精進することが大事と思いますが……)


 という微妙に手厳しい意見を言われてしまった……まぁいいだろう。


 俺はリリイに頼むことにした。

 リリイなら、優れた魔力調整センスで、ちょうどいい魔力を流せるだろう。


 どうもナビーの予想では、特定の個人が普段何気なく出す魔力量と同じ魔力量でしか開かない構造になっているのではないかとのことだ。

 つまり一種の『魔力認証』なのではないかとの見立てだ。

 最初に設定した本人なら、設定と同じ程度の魔力を流すことが容易にできる。

 だが、他人の場合、同じような魔力量を流すことは非常に困難となる。

 セキュリティー機能だったとしたら、かなり有効だと思う。


 そして先程の俺の場合は、最小限にしたつもりだったが、それでも魔力量が大きすぎて飽和爆発を起しそうになっていたのかもしれない。


 適度な魔力量を探りながら流すのは、本来ならかなり難しい作業になる。

 そこで天才のリリイに任せることにしたのだ。

 ナビーの判断でも、リリイに任せるのが一番確率が高いということになった。

 大事なところで頼られる八歳児って…………リリイちゃん天才すぎる!


 ということで、リリイが床に手を当ててみた……


 すると床が先ほど同様、一瞬光った!


 ——カチッ


 乾いた音とともに、床の一部が少し斜めにずれた。


 おお! 開いたようだ!

 さすがリリイ! すごい!


 リリイのお陰で、『魔力認証』を突破できたようだ。

 床板が少しずれていて、床板を扉のように開くことができそうだ。


 床板を上に上げると……やはりボックス状の床下収納になっていた。


 ボックスの中には、魔法カバンがあった。


 『波動鑑定』すると……


 なんと……『極上級(プライム)』の魔法カバンだった。


 魔法カバンの『極上級』なんて……かなりの容量があるに違いない。


 俺は、魔法カバンの中身を確認することにした。


 だが、この魔法カバン……開かない……。


 さすがは『極上級』……先ほどの隠し収納と同じで『魔力認証』のような機能があるようだ。

 設定したのと同程度の魔力でないと、開かないようだ。

『極上級』だからこんな機能が付いているのか……。


 あれ……ということは……

 ふと気になって、俺はこの床下収納を『波動鑑定』してみた。


 ……なんと!


 この床下収納のボックス自体も『極上級(プライム)』のアイテムだった。

 名称が『秘密収納箱(シークレットボックス)』で、周りと同化し隠すことができる秘密の収納装置となっていた。


 まさか『極上級』のアイテムだったとは……

 俺はこのボックスも回収することにした。


 そしてこの魔法カバンについても、天才リリイちゃんに開けてもらうことにした。


「リリイにお任せなのだ!」


 リリイは嬉しそうな笑顔を作って、楽しそうに魔法カバンに手を置いた。


 ——ピンッ


 やはり簡単に開けてしまった……

 本当に魔力を通しながら、感覚を探っているような感じなのだが……

 見た目は、簡単にやってのけてしまっている。

 やっぱりこの子……天才すぎる!


 ということで、中に入っているものをリリイに取り出してもらったのだが……


 全部取り出し終わるまでに、かなりの時間がかかった。

 ものすごい物量が入っていたのだ。


 さしずめ『薬の博士』の全財産だろう。


 やはり『極上級』の魔法カバンの容量は、かなりの大容量のようだ。


 大きな宝箱が、八つも入っていた。


 そしてすごい数の『薬の博士』の研究ノートのようなものが出てきた。


 ノートというよりは、もう分厚い本だ。

 それが何冊もある。


 そして木箱に入った薬が三種類あった。

 それぞれかなりの量だ。

 一つは、丸薬なので従来の『死人薬』だろう。

 もう一つがカプセル型だったので、改良型の『死人薬』だろう。

 そしてもう一つは、ドーナツ型の薬だった。トローチのような見た目だ。

 色も白色、水色、茶色、黄色、オレンジ色の五色あるようだ。

 これはもしかしたら『認識阻害薬』かもしれない。


 この三種類の薬は、それぞれ大きな木箱一つ分ある。

 小さな薬のサイズからすれば、かなりの数になる。

 これが使用されていたらと考えると、ゾッとする。

 阻止することができて、本当によかった。

『死人薬』が使われていたら、何百人という人が死んで『死人魔物』になり、その被害でさらに多くの人が亡くなっていた可能性がある。

『死人薬』を使うのは『正義の爪痕』の構成員だったとしても、その中には洗脳されただけの人もいる可能性があるからね。


 他にも木箱に入れるほどの量はないが、いくつか試作中らしき薬も発見されている。

 もしかしたら、洗脳に使っている薬などもあるのかもしれない。

 それらの薬については、審問官のクリスティアさんによる尋問や、王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんの検証を待つことにしよう。


 宝箱は八つのうち五つが金貨などの硬貨で、残り二つが宝石類、一つが道具類となっていた。

 詳しく確認しようかとも思ったが、いずれにしろ領に提出しなければならないので、あとに回すことにした。

 とりあえずは、全て『波動収納』に回収した。


 ちなみに少し興味があったので確認してみたのだが、今回見つけた『秘密収納箱(シークレットボックス)』と、この魔法カバンの『魔力認証機能』は、毎回開閉のたびにリセットされる構造になっていたようだ。

秘密収納箱(シークレットボックス)』も魔法カバンも、閉じたときに流した魔力量が記憶される仕組みになっているようだ。

 開けるときには、それと同じ魔力量でないと開かないというシンプルな仕組みらしい。

  魔力を流すときには、それぞれ癖のようなものがあって、無意識であればあるほどその人固有の魔力量を流しやすいようだ。


 この『魔力認証機能』は思ったよりもシンプルだったので、一度開いてしまえば、次に使う者の魔力量で再セットでき、ある意味誰でも使うことが可能なのだ。

 この『魔力認証機能』は、セキュリティーを高めつつも魔法カバンを流通させられるという理にかなった優れたものではないだろうか。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、16日の予定です。


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