324.ナビゲーション、スタート!
俺たちは、このアジトの制圧にとりかかった。
制圧といっても……とりあえず出会った敵を倒していくしかない感じだが……。
ここはかなり入り組んでいて、敵を一気に殲滅するのは難しい感じだ。
こんな時にゲームなんかであるマップ機能があればいいのに……
なにか効率的な方法はないか……
ここはお約束の困ったときのナビー頼みだ!
俺は『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーに訊くことにした。
(ナビー、現時点で最善の戦い方のアドバイスを頼む!)
(はい。まずは……現時点では出口が一つかどうかわかりませんが、あの船着き場に何人か配置して、逃亡防止の策を打つべきです。あとはマスターが『波動検知』で構成員の所在を確認しながら、『絆通信』のオープンチャンネルで指示を出し、殲滅していくしかないと思います。アジトがかなり広大なので……多少の危険はありますが、戦力を分散して動かすのが最短で攻略する方法と考えます。二人一組がいいと思います)
なるほど……さすがナビーだ。
「レントンとフウは、さっきの船着き場に戻って逃亡しようとする者を確保してくれ!」
「わかったのだ!ぼくがんばる!」
「はい」
『ワンダートレント』のレントンと、『スピリット・オウル』のフウが元気良く返事をした。
「シチミとオリョウは、この西に向かう通路を進んでくれ!」
「オイラに任しとけ!」
「アチシやってやっかんね! まじ手加減なしだかんね!」
『ミミックデラックス』のシチミと、『竜馬』のオリョウが勇んで西の通路へ進む。
「リリイとタトルは、このまま北に進んでくれ!」
「わかったのだ! リリイが全部やっつけちゃうのだ!」
「わかりましたわ。わたくしにお任せを!」
仲良しのリリイと『スピリット・タートル』のタトルがまっすぐ進んだ。
タトルはリクガメの霊獣だが、本気で走るとめっちゃ早いのだ。
「チャッピーとトーラは、次の道を東の方向に進んで!」
「わかったなの〜」
「わかった。すぐやっつけちゃう!」
こちらも仲良しの猫亜人のチャッピーと『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラが、楽しそうに走っていく。
リリイたちもそうだったが、戦っている最中とは思えない雰囲気だ……。
「ニアとリンは、女性が回復して動けるようになったらレントンたちと合流して、出口で待っててくれ!」
「オッケー」
「わかった」
『ロイヤルピクシー』のニアさんと、『エンペラースライム』のリンちゃんも男前な感じで返事をした。
「俺は北西の上に向かう通路を行く。みんな、なにかあったら、すぐに念話をしてくれ! あと見つけにくいような敵の位置情報がわかったときには、オープンチャンネルで指示を出すから対応を頼む!」
俺はみんなに指示を出し、分散してのスピード制圧を目指した。
俺は、魔法道具の『使い魔人形』の蜂の人形を五体起動させ、念のために各チームに同行させた。
これでなにかあったときに、『感覚共有』して直接状況を確認することができる。
(ナビー、他になにかあるかい?)
(はい。少し大変かもしれませんが、『波動検知』を常時かけた状態で運用してもらえれば、私が敵の位置情報をマスター及び各メンバーに念話でナビゲーションします!)
おお……それはすごい!
スキルレベルが上がってパワーアップしたナビーは、直接『絆』メンバーと念話ができるようになっている。
それを利用して、『波動検知』の情報を読み取って案内してくれるらしい。
まさにナビゲーション状態だ。
そんな技を編み出すなんて……すご過ぎる!
ナビーは俺自身のはずなのだが……ほんとに優秀で、まさにパートナーという感じだ!
というより、一心同体だね。
(わかった! じゃぁナビー、よろしく頼むよ!)
俺は『波動検知』をかける。
『正義の爪痕』の構成員に焦点を当てているが……凄い数だ!
(ナビー、大体の数はわかるかい?)
(わかります! 二百人以上です! 大規模アジトです!)
そうか……やはり本格的な大アジトだったようだ。
そうなると、『武器の博士』や『薬の博士』がいる可能性が高い。
できれば転移されないように、対策を整えてから突入したかったのだが……。
アンナ辺境伯から、伝家の宝刀『守護妖精の剣』を借りておけばよかった。
まぁこうなったら、仕方がない。
どうにかするしかないね……。
ナビーなら、なにかいい案があるかもしれない。
(ナビー、なにか転移を防げるような策はないかな? なるべく速攻で倒そうとは思っているけど……)
(はい。確証はありませんが、一つだけ可能性がある手段があります。『テスター迷宮』で手に入れていた『魔法の巻物』の中に、空間魔法系『不可視の牢獄』があります。この巻物は、効果範囲を空間断絶結界で覆い、対象を閉じ込めるというものです。同じ空間魔法系の転移を防げるかは、試してみないとわかりません。悪魔が使うような転移は防げないかもしれませんが、魔法道具で行う程度の転移なら防げる可能性があると考えます。マスターのケタ外れの魔力で発動させれば、防げるかもしれません)
なるほど……確かにナビーの言う通り、可能性があるかもしれない。
『武器の博士』が転移したのは、魔法道具を使ったものだということがわかっている。
空間を飛び越える転移を、空間を断絶して防げるかどうかはわからないが、その可能性にかけるしかない。
階級も『極上級』だし……俺の魔力を注ぎ込めば、なんとかなるかもしれない。
それにしても、さすがナビーだ。
俺では全く思いつかなかったアイディアだ。
ナビーの案にかけてみよう!
(わかった! ナビー、それでいこう! 問題は巻物を使うタイミングだな……)
(はい。確かにそこが一番のポイントです。タイミングが遅ければ、仮に有効だったとしても逃げられてしまいます。この騒動を察知して、安全策をとって転移で逃げる可能性があることを考えれば、今すぐかけた方がいいのですが……。実際発動させないと、どの程度の距離まで隔絶できるかわかりません。もう少し敵の数を減らして、距離的に近くなってからの方が確実かもしれません……)
(確かにそうだけど……試しに一度使ってみるのはどうだろう? もし効果範囲が思ったほど広くない場合は、すぐに解除してしまえばいいんじゃないかな)
(そうですね……。ただ……万が一効果範囲外に幹部がいて、こちらの動きに気づいた場合には即時に転移される危険もあると思いますが……)
確かにナビーの懸念ももっともだ。
一発勝負の賭けみたいな感じにはなってしまう……。
(マスター、もう少しこのまま北東に進むと敵の分布の中心に近い位置になります。そこで発動するのがいいと思います)
おお! さすがナビー!
『波動検知』でとらえた気配を、分布図のように整理したらしい……凄すぎる!
(よし! それでいこう!)
俺は敵を倒しながらしばらく進み、ナビーの指示する場所に到着した。
(よし、やろう!)
(はい。お願いします!)
俺は『波動収納』から魔法の巻物を取り出した!
そして巻物を広げ、このアジト全体を上下左右に隔絶して閉じ込めるイメージを込めて、発動真言を唱えた!
「捕らえよ! 断絶空間」
すると上に向けた巻物から、薄赤の半透明の魔方陣が浮かび上がり、瞬時に大きく広がった!
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