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308.魔法の、絵本。

 ニアたち『トップチーム』は、一応のポジションを決めて何度か戦闘訓練を行い、それなりのかたちになってきたので一旦切り上げることにした。


 次はリリイたち『仲良しチーム』の番だ。


 このチームは、子供たちだけのチームになっているので、もし実際にチームで戦うような局面がくれば、俺がこのチームに入ろうと思っている。


 だが今回はあくまで訓練なので、俺なしで戦ってもらうことにする。


『スピリット・タートル』のタトルが、防御スキルを活かし壁役の『タンク』のポジションを担当する。


『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラが、『斥候』と『サブアタッカー』ポジションだ。


『トレント』のレントンは、『魔法使い』ポジションだ。

 一般的な魔法を持っているわけではないが、『種族固有スキル』で植物を使った魔法のような技を出せるし、魔法発動型の杖などを装備すれば魔法攻撃も可能になる。

 もちろん『共有スキル』にセットしてある『風魔法』や『雷魔法』も、使うことができる。

 もっともレントンは、壁役の『タンク』もやろうと思えばできるし、蔓による攻撃で『アタッカー』もできる。固い木の実を発射することで『ロングアタッカー』もできる。

 オールマイティーな戦士なのだ。


 リリイは、『魔鋼のハンマー』を使う攻撃で『アタッカー』を担当する。


 チャッピーは、『魔法のブーメラン』による攻撃を生かして、『ロングアタッカー』をやってもらうことにする。


 ただこの二人については、本来的な適性からいえばリリイは『魔法使い』タイプだろうし、チャッピーは接近戦が得意な『アタッカー』タイプということになるだろう。

 今後は、そういう戦い方もバリエーションとして組み込んでみようと思っている。

 二人とも器用だから、どのポジションもこなしてしまいそうで……少し怖い……。

 この子たちも、オールマイティー戦士になってしまいそうだ。


 全体の戦術指揮はレントンで、サブがタトルということにした。


 レントンは、後衛のポジションなので全体の戦況が見やすいし、意外に冷静だから適性があると思う。

 タトルについては、頭が良く元々指揮官に向いていると思っていた。

 ただ壁役なので、常に全体の指揮を取るのは難しいのでサブにしたのだ。


 以上のように一応のポジションを決めたのだが、最初の一戦は、あまりポジションを気にせずに自由に戦っていいということになった。


 ミノショウさんから、適性を確認するためにも自由な戦い方を見たいという提案があったからだ。



 ——パチンッ


 ミノショウさんが指を鳴らすと、誘導した魔物を閉じ込めていた土壁が移動して、魔物が飛び出してきた!


 おお……あれは……ザリガニか……?


『波動鑑定』してみると……


『種族名』が『イビル・ロブスター』となっている。


 高さだけでも二メートル以上、全長はおそらく七、八メートルあるのではないだろうか……巨大だ……。


『種族固有スキル』に、『ヒップアタック』というものを持っている。

 レベルは54であり、リリイたちにとっては格上だ。


「 仲間は、ワタクシが守るのですわ!」


 タトルがそう叫ぶと、その体が一瞬光った!

 おそらく『種族固有スキル』の『亀城(タートルキャッスル)』を使ったのだろう。


 ドーム状の防御障壁を張ったようだ。

 この障壁は物理攻撃、魔法攻撃両方に耐性がある強固なものだ。

 それでいて、こちら側からは攻撃できるという非常に優れたものなのだ。


 ——バゴンッ


 展開された防御障壁に気づかず『イビル・ロブスター』が激突した!


 だが歩みを止めただけで、ノーダメージのようだ。


『イビル・ロブスター』は硬い甲羅に覆われており、かなり防御力が高いようだ。


「私の爪で切り裂く!」


 トーラによる目に見えない風の刃が『イビル・ロブスター』を直撃する!

 種族固有スキル『タイガークロウ』は、直接の斬撃だけでなく、剣爪の起こす烈風刃で離れた敵も切り刻むことができるのだ。


 ——バンッ


 だが、『イビル・ロブスター』の固い甲羅を切り裂くことはできなかった。


 しかし、これは単なる牽制攻撃だったようで、すぐにジャンプしていたトーラが、空中から襲いかかる!

 しかも縦回転に全身で回転しながら、爪を振り下ろした!


 ——ギイイイイイイイ!


 金属がこすれるような衝撃音とともに、火花が散る!


 トーラの必殺攻撃を『イビル・ロブスター』は、大きなハサミ爪で受け止めてしまった。


 たださすがに無傷というわけにはいかず、巨大なハサミは大きく傷ついている。

 裂傷とともに甲羅全体にヒビが入っている。

 これで片側のハサミ爪は、ほぼ使えなくなったはずだ。


 それにしてもあの技……体全体を空中で縦回転させるなんて……

 まるで俺が好きだった犬の漫画の主人公…… 巨大な熊と戦う犬の集団のボスが出す必殺技にそっくりだ!

 もっとも、その漫画の必殺技は、爪ではなく牙の攻撃だったけどね。

 まさか……『ライジング・カープ』のキンちゃんが『ランダムチャンネル』で手に入れた情報をもとに、教えたりしてないよね……?

 考えすぎだよね……きっと……。

 でも……逆に自分で編み出したとしたら……トーラすごいな……。


「今度は僕の番だ!」


 そう言うと、レントンは『イビラー迷宮』の宝物庫で手に入れた『世界樹の枝』を取り出し、天にかざした!

 この『世界樹の枝』は、階級が『究極級(アルティメット)』となっている。

 どんな力があるのか……楽しみだ。


「世界樹、その力を僕に貸して!」


 レントンがそう叫ぶと、手にした『世界樹の枝』が神々しく輝きだした!


「サンシャインレーザー!」


 再びレントンが叫ぶ!


 すると……杖の先から、太陽光を収束したレーザービームのようなものが発射された!


 瞬間、『イビル・ロブスター』は両腕のハサミ爪を出し受け止めた。


 だがすぐにハサミ爪は粉砕され、その後にある片目を蒸発させた!


 まさにレーザービームだ!

 凄い威力だ!


 トーラの攻撃でひび割れていた片方のハサミ爪は粉々に砕け散り、その後にあったもう片方のハサミ爪は穿たれて完全に穴が開いている。


 この攻撃には、タフな『イビル・ロブスター』も苦しみ悶えている様子だ……。

 だが、それはすぐに怒りの暴走状態に変化した!


 全身から湯気を出している!

 残った片目には、怒りが溢れ出ている。


 そして突然に、後ろに向きを変えた!


 次の瞬間——


 ——バゴォーンッ

 ——バンッ、バンッ、バンッ、


 ——パリンッ


 ザリガニやエビがよくやる後方移動だ。

 その超高速の連続攻撃で、なんと……タトルの防御障壁が破壊されてしまった!

 暴走状態になっていて、威力が増しているようだ。


 おそらくあれが『種族固有スキル』の『ヒップアタック』なのだろう。


 そして猛烈に暴れ回り、あっという間にみんなを弾き飛ばしてしまった!


「にじむしは、お腹がペコペコですなのだ。獲物を見つけたにじむしは、糸を吐いて捕まえますなのだ!」


 おお……リリイだ。


 『イビラー迷宮』で手に入れた『魔法の絵本』が宙に浮いてる!


『魔法の絵本』は、ニアの『魔導書』と同じように『上級(ハイ)』のランクがついていたので、魔法道具でもあるようだ。

 魔力を通すと宙に浮くようだ。


 リリイが言葉を発すると、その通りのストーリーが展開するようだ。

 もっとも絵本にある基本ストーリーに近い行動しかできないらしいが。


 絵本のページから四匹の『にじむし』が飛び出し、口から糸を吐き出した!


 そして『にじむし』が縦横無尽に空中を飛び回り、糸を四方八方から射出している!


 そして、暴れまわる『イビル・ロブスター』を拘束してしまった。


 空中を自在に動くにじむしの姿は、まるでロボットアニメに登場するビット兵器の攻撃のようだ。

 空中で位置を変えながら、糸をビームのように発射していた。


 『イビル・ロブスター』は拘束されているが、全力で抗っている。


「ドリとドラは、食べることが大好きなの〜。ドリは、固い食べ物でもドリルでどんどん穴を開けてしまいますなの〜! ドラは、固い殻も銅鑼(どら)を鳴らすように叩きつけて壊してしまうのですなの〜!」


 今度は同じようにチャッピーが、『イビラー迷宮』で手に入れた『魔法の絵本』を操作している。


 宙に浮いたチャッピーの絵本からは、サングラスをかけた二匹の服を着たモグラが飛び出した!


 そして青い服を着ている方がドリなのだろう、なにやら電動ドリルのような道具を持っている。


 そして拘束されている『イビル・ロブスター』に近づくと、硬い甲羅にドリルで穴を開けている!

 一つ一つの穴は小さいが、すごい早業でいくつもの穴を開けた。


 そして赤い服を着たドラとハイタッチすると、ドラは大きなハンマーのような棒を持ち『イビル・ロブスター』の横っ腹を三回打ちつけた!


 ————ゴーン、ゴーン、ゴーン


 ————バリッ、ビリッ、…………バリバリバリバリバリッ


 『イビル・ロブスター』の甲羅は、全て粉々に砕け散ってしまった!

 そして、『イビル・ロブスター』は横たわり……そのまま絶命した。


 甲羅を破壊した三回の衝撃打で、体中の組織も破壊してしまったようだ。


 暴走状態の『イビル・ロブスター』をリリイとチャッピーは、『魔法の絵本』の力で倒してしまったのだ。


 『魔法の絵本』は、かなり特殊な魔法道具のようだ。


 威力も強力だが……意外と使い勝手が難しいかもしれない。

 戦闘の緊迫した局面で、行動させるストーリーを読み上げなきゃいけないからね。


 でも極限状態でも、普通な感じの二人にぴったりの魔法道具かもしれない。


 俺だったら焦って……ストーリーなんて語れないからね。


 それにしても不思議な『魔法の絵本』だ……。


 ニアと一緒に使い方の検証をしていたようだから、うまく実戦で使えて二人とも嬉しそうだ。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。


次話の投稿は、24日の予定です。


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