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293.二つの、一家。

 俺は早速ミリアさんに『守護の屋敷』が完成したことを伝え、今日からそこで休めることを伝えた。


 半信半疑だったミリアさんも、実際に屋敷の場所に移動して建物を見ると……驚くとともに感動している様子だった。

 一応、“妖精女神の御業”と『トレント』のレントンの力でやったことになっているのだが…………

 なぜか……俺に猛烈な視線が注がれており……完全にロックオンされている感じだ……。


 本当に……見つめられると……どうリアクションしていいかわからないんだよね。


 そんな感じで戸惑っているうちに……


 やっぱり…………ニアさんの『頭ポカポカ』攻撃と、サーヤとミルキーの『お尻ツネツネ』攻撃が俺に炸裂していた……トホホ。



 建物自体は建てたが、室内の家具、装飾品、ベッドなどは、何も配置されていない。


 そこはミリアさんに任せようと思っている。


 もし『フェアリー家具』の商品で問題がないようなら、提供できるという話をしたら、高級家具を一度見せてほしいと依頼された。

『守護の屋敷』に置くものとして、釣り合う程度の物なら購入してくれるとのことだった。


 この街は、かなり破壊されていて商会もあまり残っていない状態のようだ。

 家具、ベッド、日用雑貨を調達するのもかなり大変そうなので、必要そうな物を一通り『フェアリー商会』で取り揃えて提案するかたちになった。


 今日のベッドについては、『波動収納』にストックしてある物を出してミリアさんに使ってもらうことにした。


 俺たちは広い部屋で、みんなで雑魚寝をすることにした。


 そしてなぜか……ミリアさんもベッドを使わずに、俺たちと一緒に雑魚寝をすることになった……。


 この点については……なぜか『頭ぽかぽか』攻撃と『お尻ツネツネ』攻撃が発動されなかった……もう……基準がよくわからない……トホホ。


 尋問をしてもらっていた審問官で第一王女のクリスティアさんと護衛のエマさんにも、部屋を用意したのだが……

 なぜか……俺たちと一緒に雑魚寝とすると言い出し……みんなで寝ることになってしまった……。

 第一王女が雑魚寝なんて…… いいんだろうか……。


 そのうち……寝るどころか……女子たちで異様な盛り上がりになっていた…… 女子会か!

 みんな楽しそうだったからいいけどね……。

 特にリリイとチャッピーは、みんなで寝ることが凄く嬉しいようだ。

 普段一緒に寝れないミリアさん、クリスティアさん、エマさんにまとわりついている感じだった。


 クリスティアさんは、拐われた女性たちへの尋問をかなりハイペースで頑張ってくれたようだ。

 そのお陰で女性たちは、今日中に返してあげることができたようだ。

 怪しい感じの人は、一人もいなかったとのことだ。


 『土使い』のエリンさんとその家族、『死霊使い』だった吟遊詩人ジョニーさんの妹弟たちは、俺が保護することになっているので、この『守護の屋敷』の中に部屋を与えて休んでもらっている。






  ◇







 翌日、朝一番で昨日救出した女性たちが全員、臨時の役所庁舎に集まって来ているという報告が上がった。


 なんでも……この街の復興のために力になりたいとのことで、やれることがあったら何でもやるので使ってほしいと申し出てきたそうだ。


 そこでミリアさんとも相談し、昨日建てた『守護屋敷』の本館や別館、『役所庁舎』、『ギルド会館』の室内のセッティングなどを手伝ってもらうことにした。

 その後は『フェアリー商会』の社員候補として、商会建物の整備などをやってもらう予定だ。

 その時に改めて、サーヤに個別面接をしてもらうことにした。


 ミリアさんとサーヤで、相談して進めてもらうかたちにした。


 彼女たちの申し出とやる気は非常にありがたく、心意気も評価できるので、できるだけ仕事を与えたいと思っている。


 悪魔の襲撃の被害が大きく、人口も少なくなってしまったこの街では、若い男性でも仕事を得ることが厳しい状況だろう。

 女性は尚更といえる。


 この街では『レインボーシルク』をメインにした『紡績工場』や『チョコレート工場』を稼働させる予定なので、彼女たちが働いてくれれば俺としても願ったり叶ったりだ。



 次に俺は、『土使い』のエリンさん一家と『死霊使い』だった吟遊詩人ジョニーさんの妹弟たちのところを訪れた。

 改めて、今後の話をしたかったのだ。


 今わかっている範囲の『正義の爪痕』の活動と、『使い人』スキルなど特殊なスキルを持つ者が狙われているということを説明した。


 そしてエリンさん一家とジョニーさんの妹弟たちは、戦いに巻き込まれて死亡したという噂を流し、再度狙われることを予防するという話もした。


 それゆえしばらくの間、俺が目立たないように保護するという話を伝えた。


 『土使い』のエリンさんは、他の『使い人』の子たちと同じように大森林で保護するのが一番安全なのだが……

 家族についてはどうしたものか……。


 特にエリンさんの両親は、次官という文官の上級職と副ギルド長という役職をしていた人たちである。

 本来なら仕事復帰してもらった方が、この領のためになるはずである……。

 この『ナンネの街』もしくは将来復興予定の『イシード市』でも、重要な仕事を任せられそうな逸材だ……。

 実績もあるわけだし……。


 だが……まだ危険はあると考えた方がいいだろう。

 なにせ……彼らの顔を知っている『武器の博士』が生きているわけだからね。


 ある程度落ち着いてから仕事復帰して、力を発揮してもらった方がいいと思う。

 やはり……当面は息を潜めていた方がいいだろう。


 俺は少し悩んだのだが…………この一家を信用し、『心の仲間(チーム)』メンバーに加えることにした。


 トルコーネさん一家と同じように、俺の秘密をある程度打ち明け、『契約魔法』で秘密保持契約を結んでもらうことにした。

『土使い』のエリンさんを確実に保護し安全度を高めるためには、俺の仲間になってもらうのが 一番なのだ。『共有スキル』が使えるようになるからね。

 そして、その家族も再度捕まるようなことがあったら、取り返しがつかないからだ。


 この一家は、まだ会って間もないが、直感的に信用できる気がする。

 人を見る目が確かなサーヤに確認しても、問題ないと言っていた。

 むしろ優秀な人材と思うと、評価していたからね。


 一家には、しばらくの間、あまり目立たない分野での『フェアリー商会』の仕事を、手伝ってもらおうと思っている。

 そしてエリンさんには、大森林で他の『使い人』の子たちと一緒に、特訓を受けてもらおうと思っている。

 自分の身を守れるくらいに、強くなった方がいいからね。


 ということで、この一家だけ別室に呼んで、今の俺のプランを説明した。


 俺の説明を聞き終えると、一家は何やら相談していた。


 そして、代表して父親のハンクさんが話し出した。


「グリム様、本当に、本当にありがとうございます。見ず知らずの私たちのことをそこまで考えていただき、感謝のしようもありません。お言葉に甘えさせていただきます。決して秘密は誰にも言いません。誠心誠意グリム様にお仕えさせていただきます!」


「いえ、別に私に仕える必要はありません。同じ仲間としてやっていきましょう!」


 俺がそう答えると……一家は揃って深く頭を下げた。


「グリム様、厚かましいお願いではありますが……エリンだけでなく、我々家族全員その大森林での特訓に参加させていただけないでしょうか……」


 ハンクさんが、そう言ってきた。


 なんでも……衛兵をしていた妹キムさんは、もっと強くなりたいと希望していて、弟のケビン君もやはり強くなりたいと希望しているとのことだ。

 父親のハンクさんと母親のトルーディさんも、子供たちを守れる力が欲しいので志願したいそうだ。

 足手まといかもしれないが、何とかお願いしたいと必死で懇願されてしまった。


 本人たちの強い希望なので、了承した。

 強くなるに越したことはないからね。

 抗う力の無さを実感したなら、尚更のことだろう。


 早速この一家には、大森林に移ってもらうことにした。


 ただ移動する前に、一緒に囚われていた吟遊詩人ジョニーさんの妹弟のギャビーさんとアントニオ君にしっかり挨拶をしたいということだった。



 ギャビーさんとアントニオ君は、ジョニーさんが亡くなった以上人質としての価値が無いので狙われる可能性も低い。

 したがって、無理に俺の『心の仲間(チーム)』メンバーに引き入れる必要はないと判断をしたのだ。


 それよりも、アグネスさんたちと一緒に吟遊詩人として活動してもらい、一緒に武術の訓練もしてもらえばいいと考えている。


 アグネスさんたちも近々こっちに移って、リリイとチャッピーの指導者としての仕事もしてもらう予定だ。

 それゆえ、ギャビーさんもアントニオ君も比較的俺の近くにいるので、気を配ってあげることもできる。



 囚われていたときに、この二つの一家は、精神的にも支え合っていたようで、抱きしめながら別れの挨拶を交わしていた。

 なにか…… 一つの家族のような感じにもなっている。


 ギャビーさんとアントニオ君には、エリンさん一家は別の場所で匿うという話にしてある。

 しばらくしたら、一緒に商会のメンバーとして活動できる可能性もあるという話をして、安心してもらった。


 仲のいい両家族の姿を見て、ギャビーさんとアントニオ君にも秘密を打ち明けて、大森林に送り出そうかとも考えてしまった。

 だが、吟遊詩人の才能を活かすならアグネスさんたちに預けた方がいいし、彼女たちに鍛えてもらうだけでも十分強くなれる。


 それに現時点では『心の仲間(チーム)』メンバーにするのは、必要性の高い者だけに限定した方がいいと思っている。

 なし崩し的に増えていってしまうと、際限がなくなってしまうからだ。


 『フェアリー商会』のメンバー全員というわけにはいかないだろうが、将来的には幹部メンバーだけでも秘密を打ち明けて『心の仲間(チーム)』メンバーになってもらおうと思っている。


 そのときでも遅くはないので、今回は心を鬼にして踏みとどまった。





読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

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誤字報告していただいた方、ありがとうございました。助かりました。


次話の投稿は、9日の予定です。


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