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272.領都支店の状況、その二。

 十一、紡績事業————『フェアリー紡績』——『フェアリー牧場』と『牧場荘園』の二箇所に紡績工場を作った。

 これから本格的に、稼働していく予定だ。

 『 フェアリー商会』の本部ブロックの中にも、紡績工場を作る予定だ。

 この工場は、糸になったものから生地を作ったり、洋服を作る工場にしようと思っている。


 十二、屋台事業————『フェアリー軽食』——各種屋台が絶賛稼働中だ。

 領都の四つのエリアの広場で営業しているが、既にかなりの評判になっている。

 ちょっとした行列状態なのだ。

 現時点では、『おにぎり』『ホットドッグ』『コロッケ』『フレッシュジュース』という『マグネの街』と同じ内容だが、近々五つ目の屋台がオープンする予定だ。

 『マグネの街』の鍛治工房のカジン工房長に頼んでいた『かき氷製造機』が完成したのだ。

 氷を細かく削りおろすことにやっと成功したのだ。

 俺が自作した魔法の巻物『氷塊創造(ロックアイス)』を使えば、簡単に適度なサイズの氷が作れるので、すぐにでも営業できるのだ。

 もうフルーツシロップや練乳も試作済みである。


 十三、金物販売事業————『フェアリー金物』——『フェアリー商店』や『フェアリー薬局』同様領都の四つのエリアに作ってある商会の施設棟に出店をしている。

 鍛治工房も領都にはないので、『マグネの街』の工房で作った製品を販売するかたちになる。

 家具工房同様、カジン工房長に弟子入りしている人たちが一人前になったら、領都に工房を作ってもいいと思っている。

 まぁ職人の世界なので、一人前になるのに何年かかるか分からないが……。

 

 十四、武具販売事業————『フェアリー武具』——商会の本部ブロックの商業棟の三階、『フェアリー不動産』の隣にお店を一つ作った。

 販売する商品は、『マグネの街』の店で既存の仕入れルートから仕入れた商品を回すことにした。

 また、俺と『家精霊』のナーナが製造する武具を販売することにしている。

 ナーナは、普段サーヤの事務仕事の手伝いでかなり忙しいが、その合間に武器を作ってくれているのだ。

 俺が全て作ってしまうと、『階級』が高くなりすぎてしまうので、販売しやすい『下級(イージー)』『中級(ミドル)』の武具の製造をナーナにお願いしているのだ。

 『マグネの街』のお店の店長のブキンさんの話では、ナーナの作る武具はその階級の中では『高品質』の物になるそうだ。

 使いやすいように一工夫されていたりするので、評判がいいようだ。

 最近増えている『マグネの街』に訪れる冒険者の中で、あまりお金を持っていない人たちはナーナの作る武具を好んで買っていくらしい。

 ただブキンさんの話によると、ナーナは時々悪乗りして『ロマン武器』としか思えないような変わった武具も納品してくるようだ……。

 今度見せてもらおう……すごく興味がある。

 まぁ遊び心って大事だよね……

 楽しんでやってくれることがなによりだと思う……。

 それにしてもナーナとサーヤって……『家馬車』の改造もそうだけど……やり出すと悪乗りしちゃうタイプなのかもしれない……。

 それから俺とナーナが製造する武具は、『フェアリー商会』のオリジナル商品として他と区別するためにブランドロゴを刻むことにした。

 商会のスタッフから付加価値を上げたり、模造品の流通を防ぐために必要だと提案されたのだ。

 俺はそこまで考えが及ばなかったが、優秀なスタッフがいてありがたい限りだ。

 最初は『フェアリー商会』のロゴマークというか商会紋を入れようと思ったのだが、羽妖精が手を振っているかわいいデザインで、製品に刻むロゴマークとしては細かすぎるのでやめたのだ。

 もともとトルコーネさんが『フェアリー亭』の看板に入れていたものを、商会を設立するときに使わせてもらったものだ。

 ちなみに『シンオベロン家』の家紋はニアさんのデザインで、羽妖精が両手を広げて出迎えている暖かい感じの紋章だ。これも同様にブランドロゴとしては複雑すぎるので使用できない。

 もちろん個人と商会は区別したいので、もともと使うつもりはなかったけどね。

 そこで、もっと簡易的なブランドロゴを作ることにしたのだ。

  無限大記号『♾』のような楕円を二つ並べた図の上に『F』、下に『S』を接続したもので、芽を出した双葉の上に、さらに茎が伸び本葉をつけようとしているかたちにも見える。

『♾』は無限の可能性という意味と、妖精の羽を表している。もっともニアさんについている羽は、トンボの羽のような感じで四枚だけどね。まぁ象徴的なものだからいいだろう。

『F』は、フェアリーのFで、『S』は、商会とシンオベロンのSだ。

 これを『フェアリー商会』共通のオリジナル商品につけるブランドロゴにしようと思っている。

 一応……ニアさんも納得してくれた……ちょっと微妙な感じではあったが……。

 武具以外でも、家具や金物など自社製品には刻印しようと思っている。

 個別の製品で独自のシリーズなどがある場合には、シリーズロゴを作りブランドロゴの下に刻印しようと思っている。

 例えば、武具の『マグネ一式シリーズ』だったら、共通のブランドロゴの下にシリーズロゴである『M1』と入れることになる。ちなみに、決してお笑いのコンテストではない……。


 十五、銀行事業————『フェアリー銀行』——商会の本部ブロックに専用の建物を建てた。

 本格的な営業はこれからだが、問題は融資の適否の判断が今のところ俺とサーヤぐらいしかできないということだ。

 案件が増えると厳しい状況になる。

 そこで俺は、『商業ギルド』のギルド長ウインさんに協力を要請した。

 ギルド経由の融資希望者については、ウインさんに事業計画の審査などをしてもらうことにしたのだ。

 できる範囲で構わないとお願いしたが……二つ返事で了承してくれた。

 おそらく彼なら、きっちりやってくれるだろう。

 彼の見立てなら、安心して融資できる。

 というか、ほとんどこの部門の仕事を彼に外注したような感じになってしまった……。

 しかも無償で……。

『商業ギルド』の役割と言えば言えなくもないのだが……

 今後なにか……彼に報いる方法を考えないといけないね。

  ちなみに貸付の原資となる資金については、最近の報奨金や武具などの販売代金で潤沢にお金を手に入れたので、十分に銀行に回せる余裕があるのだ。

 ありがたいことだ。


 十六、製パン事業————『フェアリーパン』——『フェアリー金物』『フェアリー商店』『フェアリー薬局』同様領都の四つのエリアに作ってある商会の施設棟に出店をしている。

 スタッフのパン作り特訓を経て、やっと営業を開始したばかりだ。

『やわらかパン』『レーズンパン』『野イチゴジャムパン』の三つの品揃えしかない。

 全てコッペパンサイズで、『やわらかパン』がベースになっている。

『野イチゴジャムパン』は、野イチゴのジャムを作って挟み込んだだけのシンプルなものだ。

 お客さんの評判は上々らしいので、『マグネの街』のお店のように行列ができるのも時間の問題と思われる。

 今後ジャムパンシリーズを増やしていく予定だ。

 次の予定は『ブルーベリージャムパン』と『リンゴジャムパン』だ。

 個人的には『メロンパン』や『あんぱん』が食べたい。

 小豆を探さないといけないが……。


 十七、教育事業————『ぽかぽか養護院』については領都では開園しない。

 領立養護院があるからね。

『ぽかぽか塾』は、領都の四つのエリアに作ってある商会の施設棟に作ろうと思っている。

 ただ先生に適した人材がまだ人選できていないので、もう少し時間がかかるかもしれない。

 商会のスタッフに対する教育は既に始めているが、一般向けにはしっかりとした先生がいた方がいいからね。

『ハンター育成学校』は、講師陣である元冒険者パーティー『炎武』の皆さんのお陰で、順調に準備が進んでいる。もうすぐ一期生の募集をする予定だ。



 十八、水産事業————『フェアリー水産』——最大の目的である『大シジミ』の養殖は、今のところ順調だ。

 養殖池で順調に育っている。

 しっかり繁殖して数が増えてくれるかが最大のポイントだが、もう少ししないとわからないのだ。

『アイテマー迷宮』で『正義の爪痕』により養殖されていた『紅マス』と『川ハマグリ』は、移した養殖池で問題なく育っている。

『小エビ』『川海苔』についても、養殖池を作って養殖を始めている。

 並行して川での通常の漁も行っている。

『干しエビ』や『乾燥海苔』などの加工品の製造も行っているのだ。

『フェアリー牧場』に隣接するかたちで『フェアリー水産』の敷地を拡大し、養殖池の増設と加工場を作った。


 十九、精肉事業————『フェアリー食肉』——『食肉処理場』と『肉の直売所』は、既にギルド会館の隣に建設済みで、営業も開始している。

 まだ野生動物や魔物の肉の持ち込みがないので、俺が保存してある肉を解体処理し直売所で販売してもらっている。


 二十、飲食事業————『フェアリー飲食』——喫茶店の『フェアリーキッス』は本部ブロックの商業棟の二階と、『食肉処理場』の隣の『食肉加工場』の二階に出店した。

『ホットケーキ』と店員さんのメイド風制服が話題となり、早くも行列ができている状態だ。

 特に女性人気が高く、メイド服が着たいがために就職希望者も殺到しているようだ。

 急いで四つのエリアにある商業棟へ出店する手配をしているところだ。

 もう一つ飲食事業として念願の焼肉居酒屋を、『食肉処理場』の『肉の直売所』の隣のスペースで開店した。

 頼んでいた焼き物工房で、無事に七輪が完成したのだ。

 お店の名前は『七輪焼きフェアリーグリル』となった。

 俺としては『肉鉄』とか和風な感じの名前をつけたかったのだが……ニアさんに却下されたのだ……。

 肉の焼けるおいしい匂いにつられて、お客さんが集まってくる状態だ。

 やっぱりあの臭いを嗅いじゃうと……耐えられないよね……。

 それから俺のアイディアで、氷で冷やす簡易型の大型冷蔵庫を作った。

 魔法の巻物で氷が簡単に出せるので、随時補充すれば冷蔵庫として十分に機能するのだ。

 これでエールをキンキンに冷やして出すことにしたが、評価は上々のようだ。

 まだオープンしたばかりだが、おそらくこの冷たいビールも評判になると思う。

 個人的にはラガービールがいいが、まだ作れていないのでエールビールでも充分だ。


 二十一、日用雑貨販売事業————『フェアリー雑貨』——『商業ギルド』のギルド長ウインさんの仲介で引き継いだ商会の店舗が一つ残っており、それが雑貨店だったのだ。

 この商会は焼き物工房も持っていたが、工房は破壊されて今はない。

 ただ職人さんが二名生き残っていたので再雇用し、現在焼き窯を含め焼き物工房を再建しているところだ。

 職人さんが確保できたので、今後は自社で七輪なども作れるようになる。

 個人的には、のんびり焼き物作りをやりたい……凄くやりたい……土をいじりたい……。


 二十二、ギルド運営事業————『狩猟ギルド』『農林水産ギルド』『職人ギルド』について、運営する者が他にいないので、引き受けることになった。

 領主体でやってほしいという気持ちもあったのだが、『狩猟ギルド』や『農林水産ギルド』は買取業務が主体となることもあり、領が運営協力するとしても『フェアリー商会』で直接やった方が効率的と諭され、引き受けることになった。

『職人ギルド』については、職人たちの互助会的な役割がほとんどで買取はあまり想定されていない。

 なので領の運営でいいと思ったのだが、半官半民が望ましいということで、お願いされてしまった。

 まぁ二つも三つも一緒だから、いいけどね。

 このギルド運営事業も、教育事業や銀行事業と同じく当面の間は、収益は見込めない。赤字事業の予定だ。



 領都は広く、複数カ所に出店する事業もあるので、実際の運営はかなり大変だと思う。

 また『マグネの街』よりも防犯対策が必要になってくるので、各施設塔には警備要員も置こうと思っている。

 犯罪の抑止効果を狙うつもりだ。

 領都支店は特に女性のスタッフが多いからね。

 まぁ実際なにかあれば、巡回しているスライムたちや『野鳥軍団』『野良軍団』『爬虫類軍団』が対応できると思うけどね。

 ただいつでもすぐ近くにいるとは限らないし、なにも起きないようにする努力は大切だと思う。

 犯罪を起こさせない努力だ。


 『マグネの街』の商会事業は大分軌道に乗り、人材の育成も順調なので、サーヤとミルキーには引き続きこの領都での体制整備をやってもらうことになっている。

 領都支店では、まだ始めていないが『マグネの街』では 二十三番目の事業として、建設事業『フェアリー建設』がスタートしている。

 これは、『マグネの街』の拡張工事を請け負うために作った部門で、公共事業の下請け工事をしているのだ。

 以前、代官さんにお願いされていたことで、雇用の受け皿としての側面も大きい。


 あとオリジナルの魔法の巻物も、これから販売する予定だ。

 飲料水を創り出す魔法の巻物『純水創造(ピュアウォーター)』と、氷を創り出す巻物『氷塊創造(ロックアイス)』だ。

 当面は『フェアリー武具』と『フェアリー雑貨』で販売しようと思っている。

 商品がもっと増やせるようなら、二十四番目の事業として魔法道具専門店をやってもいいかもしれない。



 領都支店の一番の救いは、雇用している人たちが、真面目に一生懸命働いてくれているということだ。

 救出した女性たちがほとんどだが、皆元気に前向きに取り組んでくれているようだ。

 サーヤの話では、恩返ししたいという気持ちが強く、頑張ってくれているとのことだ。

 ありがたい話である。

 彼女たちの今後の成長が楽しみだ。




読んでいただき、誠にありがとうございます。

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感想をいただいた方、ありがとうございます。


次話の投稿は、19日の予定です。


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