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266.シュワシュワ、見つけた!

 俺はミノショウさんのありがたい申し出により、赤の『バンクルストーン』の首飾りをもらったのだが、『波動収納』にしまうことができなかった。


 この石の力を引き出せば、石の聖獣を『使い魔(ファミリア)』として使役できると言っていたが、どうもこの石には魂が宿っているようだ。

 魂のあるものは、収納することができないのだ。


 当然『アイテムボックス』スキルにも、魔法カバンにも収納はできない。


『石使い』の少女カーラちゃんに渡して、常に身に付けてもらうしかないようだ。


 ということなので、この貴重な石を『波動複写』でコピーすることもまたできないのだ。



 俺はこのダンジョンのオーナーになったことだし、今後の合宿の参考のためにもこのダンジョンについて、もう少し詳しく説明してもらった。


 まず、出現する魔物はバランスが良く、幅広い種類が存在しているとのことだ。


 ミノショウさんが自慢げに胸を張っていたが、その時に大きく揺れた胸に視線を奪われてしまい……

 またもやニアに頭をポカポカ叩かれ、サーヤにはお尻をつねられるという事態になってしまった……トホホ。


 『上層』といわれている地下一階層から十階層までのエリアは、弱い魔物の領域のようだ。

 レベル30くらいまでの魔物しかいないらしい。

 もっとも、レベル30の魔物は、普通の感覚では十分に強い魔物なのだが……。


  『中層』はレベル50程度まで、『下層』はそれ以上の魔物が出るようだ。


 レベルアップするには、確かにダンジョンに挑むのが一番効率的かもしれない。


 大森林の守護統括である『アラクネ』のケニーにこの件を話したら、嬉々として強化プランを立てそうだ。

 チームを編成してここに送り出せば、効率的にレベルアップができそうだからね。


 しかも『下層』に挑めば、既にかなり高レベルなケニーたちでも、効率的にレベルアップできる可能性があるのだ。


  人族の冒険者はほとんどが『上層』にいて、たまに『中層』に挑む強い冒険者がいる程度のようだ。

『下層』には、訪れる冒険者はほぼいないようなので、人目を気にせずに挑むことができそうだ。



 ミノダロス族長は、地下三十一階層の空いてるスペースに、俺たちが訪れたときのための宿泊施設を作ると申し出てくれた。


 俺はサーヤの転移ですぐに来れるように、転移用のログハウスも設置させてもらうことにした。


 族長によれば、三十一階層はいわば来客があったときの出迎え用の街で、本格的な彼らの生活領域は三十二階層から三十四階層なのだそうだ。


  三十一階層に戻って、階層全体の様子を確認させてもらった。

 素晴らしい生活環境である。


 湧水があって小川も流れているし、泉もいくつかある。


 生活用水も問題がないようだ。


 天然の迷宮は、全てこのような機能を持っているのだろうか……


 なにか……生活空間というか……星そのものを凝縮したような空間にも思える……。

 この迷宮の中だけで、普通に生きていけると思う。


 そんなことを思いながら見て回っていると……気になる泉を見つけた。


 細かい泡が立っている……。


「グリム様、この泉は『刺激の泉』と言います。ここから湧き出る水は、喉がすっきりし気持ちのよい名水なのでございます。お腹の調子も良くなります。肌に塗るとツヤツヤし、筋肉が引き立つのです!」


 族長が俺の様子を察して、説明してくれた。

 そしてなぜか、筋肉を自慢するポーズをとっていた。

 しかも、超ドヤ顔だ……

『ミノタウロス』族は、みんな“筋肉バカ”なんだろうか……。


 それはともかくとして……

 これは……もしかして……


 俺は一口含んでみる……


 おお! これはやっぱり!


 そう……炭酸泉だ!


 ということは……炭酸が飲めるぞ!


 俺は早速『波動収納』からコップをいくつか取り出し、屋台の商品にしているフレッシュジュースも取り出した。


 そして……炭酸で割った!


 おお、いい感じだ……

 俺はコップに口をつける。


 おお、これだ! この……サイダーのような感じ……

 シュワシュワ感……フレッシュな刺激……たまらない!


「美味い! 最高だー!」


 俺は思わず叫んでいた。


 そっと見守っていたニアたちも、興味津々な顔つきだ。


 俺は早速ニアたちにも、そして族長にも飲ませてあげた。


「かー、しみるね……」

「……これは……喉がすっきりしますね」

「ゴブ、ゴホ、ゴホ、びっくりしたのだ……喉がシュワシュワなのだ……」

「ググ……びっくりなの〜、喉さんが痛いなの〜、チャッピー苦手なの〜」

「甘い! これは美味です! さすがグリム様です。一生ついていきます!」


 ニア、サーヤ、リリイ、チャッピー、族長がそれぞれに感想を述べた。


 ニアはいつもの雄叫びではなく……なぜか『とりあえず生』を飲んだ後のおじさんのような感想を漏らしていた……なぜに!?

 てか、オヤジギャルか!


 サーヤも初めての感覚に驚いたようだし、リリイとチャッピーは苦手なようだ。

 リリイは、完全にむせていたしね。

 確かに俺も子供の頃は、炭酸系の飲み物は苦手だった。

 喉が痛い感じがしたんだよね…… 。

 中学くらいで飲めるようになってからは、もう中毒のようになっていたけど……。


 炭酸泉を飲み慣れている族長は、ジュースで割った甘い美味しさに感動したようだ。

 そして……別に一生ついてこなくても大丈夫なんですけど……。


 そんな俺たちの様子を見て、遅れてついてきていたミノ太が走ってきた。


「若様、オデにも……飲まぜでほしいでデス」


 興味を持ったミノ太がそう言ってきたので、もちろん飲ませてあげた。


「ゲブ、ゴホ、ゴホ……。オデ……オデ……オイジイでゲス! ケニー様にも、飲まぜであげたいでデス! オデが優しぐ飲ませてあげたい……ムフ……ウホ……ウホホッ……」


 おいしいと言いつつ、めっちゃむせてるけど……大丈夫なのか?

 そして、やっぱりケニーの名前を口にした途端に……またグフグフ言い出した……。

 こいつ……やっぱダメみたいだ……スルーしよう……関わりたくないスルー発動————


 ちなみに……この困った奴であるミノ太のお爺さんである族長の反応を窺うと……

 優しい眼差しで見守っていた……。


 ……なぜに!


 てか、違うでしょうよ!

 そこは……注意しようよ!

 ただの変質者にしか見えないんだし……。


 もしや……『ミノタウロス』は恋をすると、みんなあんな感じになるのだろうか……

 もしそうだとしたら……恐ろしすぎるわ! ミノタウロス族!



 それはさておき、俺は『波動収納』に大量に『炭酸水』を収納した。

『波動収納』は、その時点の波動情報を記録しているので、炭酸が抜けるということもないのだ。


 この『炭酸水』を保存できる容器を作れば、フレッシュジュースの屋台でも、メイドカフェ風喫茶店の『フェアリーキッス』でも『フルーツサイダー』としてメニューにできると思う。


 ガラスの瓶が作れないか、ガラス工房を探してみよう。


 仲間たちで使うだけなら、ケニーに種族固有スキルの『糸織り錬金』で容器を作ってもらえば、いいんだけどね。

 前に魔法薬用に、ペットボトルそっくりの容器を作ってくれていたからね。


 ただ一般に流通させるには、ケニーの作る容器は特殊すぎて難しいんだよね。



 他にもいろんな植物が自生していて、薬草、野菜、果物も豊富だった。

 小迷宮という割に、かなり豊かな迷宮のようだ。


 そんな感じで迷宮を褒めていたら……ミノショウさんが突然現れた。

 迷宮自身だけに、この迷宮で起きていることは全て把握しているし、いつでもどの場所にでも出現できるようだ。


「ええ、そうなんです。わたし……とーっても、豊満なんです……ふふふ」


 色っぽい視線全開で、俺の顎を指先で遊びながら囁くように言った。

 わざと胸を揺らしている……。


 そうなると……俺の意思とは無関係に、視線が自動的にロックオンしてしまった。


 俺の視線に気付いたニアとサーヤに、もはやお約束になった『頭ポカポカ』と『お尻ツネツネ』を発動されてしまった……トホホ。


 本当はもう少しゆっくり全体を見たかったのだが……なんとなく……いたたまれなくなった俺は、引き上げることにした。


『ミノタウロス』たちの生活圏の三つの階層も全ては見てないし、本来の迷宮部分である地下一階層から三十階層までも見れてないけど……まぁ次の機会でいいだろう……。


 近々みんなを連れて、合宿にくるつもりだし……。




読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、13日の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「トホホ」という末尾でそれまでの文章がどれほどかっちりしたものであっても台無しになってしまう。 必要のないというより文章を腐敗させる一個の林檎。
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