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263.ミノタウロスの、小迷宮。

 午後になって、『ミノタウロス』のミノ太から念話が入った。


 そういえばミノ太は、この周辺の迷宮遺跡の情報を取得するために、里帰りしてくれていたんだった。


(若様……オデ、里帰りしてるでゲス。族長にいろいろ訊いたでゲス。若様に来てほしいでゲス。迷宮が話したがっているでゲス。オデは……ケニー様と話したいでゲス。ムフ……ウホ……ウホホッ……)


 なんかよくわからんが……いい情報があるということか……。


 それにしてもケニーの名前を自分で言った途端、グフグフ言って興奮するのは本当にやめてほしい……。


 前から遊びに来てほしいと言われていたし、なにか有力な情報が掴めるかもしれない。

 いい機会だから行ってみよう。


 ニアを連れてサーヤの転移で行ってこようと思ったのだが……


 俺の動きを目ざとく察知したリリイとチャッピーが走ってきた。


「どこに行くのだ? リリイも一緒に行くのだ!」

「チャッピーも行くなの! もう置いてけぼりは嫌なの〜」


  二人がそう言って、俺の腰に抱きついてきた。


 この前の作戦の時に、置いていかれたのが余程嫌だったようだ。

 寝てたから、起こしたくなかっただけなんだけどね……。


 今回は連れて行ってあげよう。

 迷宮といっても、ミノ太の一族だし危険もないだろう。


 ということで、それぞれの飛竜とともにサーヤの転移で移動した。


 不可侵領域の元盗賊のアジトだった俺の別荘の一つに転移したのだ。

『ミノタウロスの小迷宮』に一番近い別荘に移転したが、それなりに距離があるので飛竜で移動することにする。

 北西の方向にある山脈の中に『ミノタウロスの小迷宮』があるようだ。



 ミノ太が念話で指示した場所に、程なくして到着した。

 飛竜なので、あっという間だ。


 『ミノタウロスの小迷宮』がある山脈は東西に伸びており、その山脈の南側と北側にはそれぞれ魔物の領域が山脈に沿うかたちで細長く存在しているようだ。

 そして南側の魔物の領域の更に南側には不可侵領域があり、その南にはピグシード辺境伯領があるのである。

 北側の魔物領域の更に北側に隣接しているのは、デメテル王国という小国のようだ。

 このデメテル王国は、アルテミナ公国の西隣にある国らしい。


 デメテル王国を拠点にする冒険者などが『ミノタウロスの小迷宮』を訪れるようだ。

 もっとも、危険な魔物の領域を越えなければ訪れることができず、あまり人気はないとのことだ。

 ミノ太からの情報である。


「若様、お待ぢじでおりまじだ。案内じます」


 そう言うミノ太の案内についていく。

 少し歩くようなので、迷宮について話を聞きながら移動した。


 『ミノタウロスの小迷宮』は全部で、三十五階層あるようだ。

 天然の迷宮のようだが、『テスター迷宮』と同様に綺麗な階層構造になっているとのことだ。


  一つの階層の広さも、話を聞く限りドーム球場一つ分くらいの大きさらしいので、本当に『テスター迷宮』と作りが似ているようだ。


 公式には三十階層の小規模迷宮となっているようで、地下三十階層に仮の『ダンジョンマスタールーム』があり、ダンジョンのクリアをかけた最後の決戦の場とされているようだ。


 実際には、地下三十一階層から地下三十五階層まで『ミノタウロス』の居住エリアがあるそうで、秘密のエリアになっているらしい。


 本当の『ダンジョンマスタールーム』は、地下三十五階層にあるそうだ。

 地下三十一階層に直接行ける秘密の入り口があるそうで、そこに案内してくれているとのことだ。


 ダンジョンを訪れている冒険者などに会わずに、直接『ミノタウロス』の生活エリアに行けるようだ。


 地下一階層から十階層を『上層』、地下十一階層から二十階層を『中層』、地下二十一階層から三十階層を『下層』として区切られているらしい。


『上層』と『中層』の最後の階には、エリアボスといわれる魔物が配置されているそうだ。

 冒険者はこの二体のエリアボスを倒し、三十階層まで辿り着くことによって『ダンジョンマスター』に勝負を挑むことができる仕組みになっているようだ。


 もっとも、命の危険を顧みず『ダンジョンマスター』に挑むような者は、ほとんどいないらしいが……。


 天然の迷宮の不思議な機能で、各フロアの魔物は一定時間の経過すると補充されるらしい。

 したがって魔物が尽きることは無いようだ。


 この機能によって、継続的に魔物の『魔芯核』を採取できるので、迷宮を持つ国はそれだけで豊かになるようだ。


 俺の元いた世界でいうなら、油田資源のようなものなのだろう。

 この迷宮の支配権をめぐって、争いが起きたりすることも珍しくないそうだ。



 深い森の中にひっそりとある洞窟の入り口が、秘密の入り口になっているようだ。


 中に入ってしばらく進むと、石の隠し扉があった。

 そこを開けて中に入ると、体育館くらいの広い空間に出た。


 ミノ太に促され、リリイとチャッピーの手を繋ぎ部屋の真ん中に立つ。

 ニアとサーヤも一緒だ。

 ちなみに飛竜達は、この洞窟の入り口近くで待機してもらっている。


 周囲が少し揺らいだ……次の瞬間、別の場所にいた。


 転移したようだ。


 迷宮の中ということで、薄暗い洞窟のようなイメージをしていたが、なぜか緑あふれる草原のような空間だった。


 ミノ太によると、ここが迷宮地下三十一階層ということだ。

 迷宮の特殊な機能で、太陽光が転送されて降り注いでいるそうだ。


 地下とは思えない……

 普通の草原での暮らしができるようだ。


 少し歩くと集落があり、その門の前でミノタウロスたちが出迎えていた。


 ここにいるだけでも、二百体以上はいるんじゃないだろうか……。


 中央には、一際大きな『ミノタウロス』が立っている。

 落ち着いた雰囲気で、目に宿す光に深みのようなものを感じる……多分長老なのではないだろうか。


 俺が近づくと、みんな一斉に跪いた。


 はて……?


「お待ちしておりました。強き王よ。ご尊顔を拝し、恐悦至極にございます。私はここに住まう『ミノタウロス』の氏族の長をしております。ミノダロスの名を継ぐ者でございます」


 やはりリーダーのようだ。大仰に挨拶をしてくれた。


 しかしなぜ俺に跪くのか……


「はじめまして、私はグリムです。どうか頭をあげて下さい。私に跪く必要はありません」


「なにをおっしゃいます。あなた様は、我が孫の主であるとともに、この周辺を束ねる霊域の主で在らせられます」


 族長はそう言うと、再度頭を下げた。


 はて……?

 霊域って、その周辺地域を束ねているわけ……?

 そんなことは聞いてなかった気がするが……。


「確かに霊域のマスターではありますが、どうか普通に接してください」


 俺がそうお願いすると、やっと立ち上がってくれた。


 この族長さんは、なんとミノ太のおじいさんのようだ。


 深みのある感じの……まさに族長というオーラを発している。

 ミノ太も歳をとったらこんな風になってくれるんだろうか……

 今はただの……やばい奴でしかないが……がんばれミノ太!


「グリム様。私はこの迷宮のダンジョンマスターでもあります。私と一緒に地下三十五階層の『ダンジョンマスタールーム』にお越しください。迷宮があなた様と話したがっているのです」


 族長はそう言うと、再度頭を下げた。


 迷宮が話したがっている……はて……?




読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、10日の予定です。


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