237.スケルトンの、ドラゴン。
後半は、三人称視点になります。
突然地面に現れた大きな魔法陣の周りにいた兵士たちが、衝撃で弾き飛ばされている。
そして魔法陣から……巨大な骨の怪物が召喚された!
どうやら奥の手を隠していたようだ。
「ハハハ、スケルトンドラゴンに敵う人間などいませんよ! 皆殺しです!」
え! こいつ……ドラゴンのスケルトンなの?
『波動鑑定』すると……
やばい……レベル69だ!
ドラゴンのレベル69って……かなりやばいよね……。
しかも……なにかやろうとしてる……
まさか……ブレス!?
骨だけなのにブレスが出せるのか!?
やばい、やばい、やばい!
「千手盾、ドラゴンのブレスを防げ!」
俺はそう言って、ドラゴンの正面に高速で移動し、同時に移動してきた『千手盾』を掴み魔力を流した!
ブレスを防ぐイメージを強く持ちながら……。
すると『千手盾』から無数の手が伸び、その全ての手に半透明の盾が出現した!
そして盾同士が繋ぎ合わさって、超巨大な盾が完成した!
ゴオオオオオオオオ————————
ギリギリ間に合ったようだ。
ドラゴンのブレスは、蒼白い炎のブレスだった。
凄い熱量だが、なんとか防げている。
ただこの盾を外すわけにはいかないので、俺はここから動けなくなってしまった。
スケルトンドラゴンは、ブレスを吐き続けているのだ。
「今のうちに奴を倒すんだ! 誰でもいい! 今が勝負所だ!」
ユーフェミア公爵がそう檄を飛ばすと、兵士たちが一斉に動き出した!
最初に斬りかかったのは、審問官で第一王女のクリスティアさんと護衛のエマさんだ!
だがスケルトンロードに受け止められて、奴には届かない。
てか……第一王女が戦いの最前線に飛び込んじゃダメでしょ!
そして護衛のエマさんも普通に王女と一緒に戦ってちゃダメでしょ!
近衛隊長のゴルディオンさんやシャリアさんたち三姉妹も、同様に斬りかかったがやはり手前のスケルトンに止められてしまっている。
俺は未だにブレスを防いでいる……。
このスケルトンドラゴン、いつまでブレスを吐くつもりなんだ……
「皆さん、一旦引いてください!」
突然、アンナ辺境伯の叫び声が響いた。
指示に従い、斬りかかっていた人たちが一旦距離をおく。
「今です! 姉様!」
アンナ辺境伯が合図の叫びを発した次の瞬間————
ビュバンッ————————
——————バン、バン、バン、バン、バン、ババン、ゴウンッ
弩弓『双蛇バリスタ』の発射音と大矢『破蛇ロングボルト』による粉砕音が響いた!
ユーフェミア公爵が、バリスタを発射したようだ。
ガードしていたスケルトンたちを全て貫いて、吟遊詩人ジョニーの腹を領城の壁に縫い止めた!
奴は口から血を出しているが、まだなにかをしようとしている。
そしてスケルトンドラゴンも稼働したままだ。
まずい! なにかを飲んだ!
あの感じ……おそらく『死人薬』だ! 魔物化してしまう!
「これ以上、私の民を傷つけることは許しません!」
ビュンッ————
————ボゴンッ
俺の心配は、杞憂だったようだ。
アンナ辺境伯が『双蛇弓』を射ったのだ。
吟遊詩人ジョニーは『死人魔物』に変化する前に、脳天を撃ち抜かれて即死していた。
だが召喚主が死んだのに、アンデッドたちはまだ動いている。
魔法の巻物を使って浄化した後から、召喚陣から出てきたアンデッドたちだ。
アンデッドは召喚されたとはいえ、そもそも単独で行動できるから召喚主が死んでも関係ないのだろう。
一度浄化され、スキルの力で再構築されていたスケルトンたちは機能停止したようだ。
スケルトンドラゴンも、継続してブレスを吐いている。
だが今なら……
「皆さん! 一旦ブレスの射線上から外れてください!」
俺は兵士たちにそう指示を出し、俺の後ろに兵士がいないのを確認し次の行動に移った。
盾をかざしたままスケルトンドラゴンに向かって全力で走り出したのだ。
そしてそのまま盾による体当たり『シールドバッシュ』を繰り出した!
スケルトンドラゴンはアッパーを食らったような形になり、背後に大きくのけぞった。
そして俺はもう一度、全力で空中に舞い上がる!
これで終わりだ!
「清めよ! 光の雨」
——シャッ
三度目の光の雨が領城に降り注いだ!
スケルトンドラゴンは動きを止め……崩れ落ちた。
同様に他のアンデッドたちも浄化されたようだ。
念のため『波動検知』を使ってみたが、アンデッドの気配は感じられない。
領城で戦っていた人たちは、皆無事だったようだ。
怪訝人はいるが、重傷者はいない。
光の雨でアンデッドが殲滅されているはずだから、領民たちも大丈夫だとは思うが……。
ニアに確認の念話を入れる。
「大丈夫よ。怪我した人はかなりの数だけど、みんな回復したから。死者は多分いないと思うけど……。今度はなにしたわけ? 凄い光が降り注いで、アンデッドたちは、みんな浄化されちゃったわよ。ただ何体か『死人魔物』がでてたのよ。『死人魔物』も死んで魔物になってる状態のはずなのに、なぜか光を浴びても動き続けていたわ。普通のゾンビとは違うのかもね。もう全て倒したけどね。『死人魔物』になろうとしていた『正義の爪痕』の構成員も何人かの拘束したから連れて行くわ」
ニアからそんな報告があった。
『死人魔物』が出たということは……
やはり吟遊詩人は、『正義の爪痕』の構成員だったようだ。
連動して街中でも他の構成員が、騒ぎを起こす予定だったのか……。
それが失敗して例の『死人薬』を飲んで、自爆テロに及んだというところだろう。
それにしても……なんで『死人魔物』には光の雨が効かなかったのか……
『死人魔物』は、アンデッドと魔物の中間的な存在なのかもしれない。
純粋なアンデッドでないから、効かなかった可能性が高い。
そして『魔法の巻物』で発動した『聖なる光の雨』は光魔法であり、アンデッドに対する特攻はある。
だが通常の光魔法に魔物を浄化する力はないから、『浄魔』にもなっていないようだ。
俺が以前放ったと思われる『浄化の光』とは、質的に違うのだろう。
もしこの巻物で魔物が浄化できてしまうなら、魔物を浄化しまくって仲間にすることができたが、そう都合よくはいかないようだ。
◇
絶命した吟遊詩人の体から、小さな小さな光の粒が一つ浮かび上がった。
その光の粒は、フラフラしながら弱々しく浮かんでいた。
「あの子だよ」
「あの子だね」
「泣いてるよ」
「泣いてるね」
「急ごうよ」
「急ごうね」
「「「そうだね」」」
「もう大丈夫だよ」
「みんなきたよ」
「悲しいよ。ポカポカだったのに……サムサムになってた。ポカポカに戻してあげれなかった」
「大丈夫。解放されたから」
「大丈夫。輪廻に戻ったから」
「元気を出して」
「みんなで守るから」
「次のポカポカの宿主に巡り合うまで、みんなで守るよ」
「そうだよ」
「そうだね」
「ありがとう。一緒に行く」
弱々しかった光の粒は、無数の光の粒々たちに誘われて、守られるように飛んでいったのだった……。
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次話の投稿は、15日の予定です。
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