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229.新たな家馬車と、新たな武具作り。

 俺たちは次に『ぽかぽか養護院』を訪れた。


『フェアリー亭』で大量に焼いた『ホットケーキ』をお土産に持ってきた。


 もちろん子供たちは大喜びだった。


 養護園に作った果樹園や放した鶏たちの飼育も順調のようで、卵がたくさん採れているようだ。


 そして水路を作って放流した小エビたちも、しっかり生育しているようだ。


 院長先生曰く、子供たちが毎日楽しそうに卵を拾ったりする、働く姿が見られて本当によかったとのことだ。


 年嵩の子たちは、自分の興味に応じて工房などに手伝いに行っていて、みんな生き生きしているそうだ。

 メイドになりたいという子もいて、その子は俺の二号屋敷でメイド長のロッテンさんに教えを受けているらしい。

 ちなみに避難民の中にもメイドを希望している子がいて、同様にロッテンさんの教育を受けているそうだ。


 養護園の隣に作った『ぽかぽか塾』もまだ始まったばかりだが、一般の子たちも少しずつ訪れるようになっているようだ。


 院長と共に『ぽかぽか塾』の先生をお願いしている本屋の老婦人ブリーさんが、ちょうど遊びにきていた。


 サーヤによると、ブリーさんは子供たちに教えるのが楽しいようで、最近は本屋そっちのけできているようだ……本屋大丈夫なんだろうか………。


 サーヤの紹介で、本好きの女の子を一人雇用したようなのだが……。

 サーヤ曰く、講師料をそれなりに払っているので、一人雇用しても大丈夫だろうとのことだ。


 俺はブリーさんに、一つの提案をした。

 実は前から考えていたことなのだが……。


 ブリーさんが以前、近所の子供たちに教えるために作ったという手作りの本があった。

 リリイとチャッピーが貰っていたやつだ。

 あれを子供たちが文字を覚えるためのテキストとして、使わせて貰いたいと思っていたのだ。


 これから『領都』や『ナンネの街』でも子供たちに読み書きを教える塾をやりたいと思っている。

 そのテキストとして、採用したいのだ。


 そんな話をしたら、ブリーさんは快諾してくれた。


 俺はもちろん著作権料というか使用料を払うという話をした。


 ただこの世界の人には著作権という概念がないようで、自由に使ってほしいと言われた。


 そういうわけにもいかないので、今払っている講師料に上乗せして使用料に相当する分を支払おうと思っている。

 このお金があれば、本屋さんの人員の雇用費を捻出しても、ブリーさんにも十分残ると思う。


 あとは教えるのが好きなら、毎日先生をしてもらってもいいし。

 院長先生も負担が減るので、歓迎してくれるだろう。


 そして院長先生とブリーさんは、歳が近いせいもあって最近とっても仲良しのようだ。

 サーヤの話では、お茶飲み友達になっていて、教える日じゃなくてもブリーさんは毎日養護院に遊びにきているようだ。



 リリイとチャッピーも子供たちとひとしきり遊んだようなので、そろそろ帰ろうと思っている。


 俺は帰る前に、子供たちや園長先生、ブリーさんに渡し忘れていた品をプレゼントした。


 それは『マグネ一式』シリーズの防具のインナーだ。


 院長先生とブリーさんの分は、女性の大人サイズで大丈夫だが、子供たちは小さな子もいるので子供に合わせて各サイズを作ったのだ。


 薄いから服の下に、インナーウェアとして着れる。

 これで、もしなにか事故などに巻き込まれても、致命傷を防げる可能性が高くなる。



 このインナーは安全のために、『フェアリー商会』の従業員や関係者にも配ることにした。

 部門によってはユニホームを作って、それに仕込むという手もあるので、その構想もサーヤに話しておいた。

 とりあえずは、全員にインナーとして配ることにするが。






  ◇






 他にも商会の各部門に、できるだけ顔を出した。



 家具工房に寄ったときに親方のモコザイグさんが、最近完成したという『家馬車』を披露してくれた。


 なんと、以前渡した霊域の木を使って作り上げたのだそうだ。


 俺たちが使っている『家馬車』よりも、豪華な感じの仕上がりだ。

 白をベースに、金の縁取りがされている。

 なんか……王様が乗ってもおかしくないほど見事な馬車だ。


 俺のために作ったので、貰ってほしいと言われた。


 詳しく話を聞くと……


 俺から霊域の木を貰ったのはいいが、木の素晴らしさに見惚れるばかりで、何を作ればいいか全く思い浮かばなかったらしい。


 そしてサーヤに相談したところ、『家馬車』の製造を提案されたのだそうだ。


 サーヤが普段使いにしている『家馬車二号』は、俺が盗賊のアジトを潰したときに没収したものだ。

 大きめの馬車を選んだので、移動手段としては問題ないようだし、多少の魔改造もしたようだ。


 ただサーヤとしては、本来の『家馬車』タイプの馬車がほしかったらしい。

 隠しギミックのアイディアなどがいろいろあり、設計段階から組み込める新規の建造がしたかったようなのだ。


 そこで、サーヤは『家馬車』の建造を提案したのだそうだ。


 そしてサーヤが構想している隠しギミックなどを説明してるうちに、モコザイグさんの職人魂に火がついたらしい。


 ということで、『家馬車三号』を手に入れてしまった。

 この馬車は、『マグネの街』で居残り組に使ってもらおうと思う。


 サーヤとナーナは、なんとかこの『家馬車三号』をナーナ自身である家の一部として認識し、『家精霊』こと『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナが『家馬車三号』でも出現できるようにしたいと考えているようだ。

 もちろん『家馬車二号』もそうなればより良いのだが、優先順位としては『家馬車三号』を重視しているようだ。


 そして『家馬車三号』には、追加でもう一台馬車が連結できるようになっている。

 人数が多くなったときに、連結して使えるように作ったらしい。


 色違いで『家馬車一号』用の連結車両も、作ってくれたそうだ。


 見せてもらうと……確かに『家馬車一号』と同じ色合いだ。

 そして結構大きい……『家馬車』本体とそれほど違わない気がするが……。

『家馬車』サイズは、普通の馬車に比べて大分大きい。

 それを二台連結して引くとなると、普通の荷引馬ならかなりの頭数が必要になるだろう。

 レベルアップしてるオリョウなら、一体でも引いてしまいそうだけど……。

 ただそれは常識外れな状態なので、人目があるところではやりにくい。

『スピリット・ブロンド・ ホース』のフォウと二頭で引いても、『家馬車』サイズの二連結は常識外れになっちゃうんだよねぇ……。

 単純計算で行けば、六頭かハ頭で引くのが普通なはずだからね。

 今のところハ頭引きなんて……見たことないけどね。


 実際の活用についてはあとで考えることにして、俺はありがたく頂戴することにした。

 そして魔法のカバンにしまう体で、『波動収納』に回収した。


 それにしても……隠し機能もいろいろ付けてあるようだし……一体どこに向かっているんだろうか……。

 隠し機能を聞くのが楽しみなような……怖いような……。



 こんなこともありつつ、各部門に顔を出したが、みんな本当によく働いてくれていた。

 頑張っているというか、楽しそうに働いてくれているのが一番嬉しかった。


 今後は健康を壊さないように、しっかり休みを取る習慣も付けてもらおうと思っている。


 この世界は、一週間が十日で構成されている。

 特別月の十三月以外は、一ヵ月が三十日と決まっているので、一月三週間あるということになる。

 曜日というものはなく、『3の日』とか『6の日』と呼ぶようだ。

 13日なら『3の日』、26日なら『6の日』となる。

 『0の日』は休息日とされているようだが、あまり休むことはないらしい。


 俺はその日を含めて連休になるように、休みを作ることにした。


 『フェアリー運行』などは業務の性質上『0の日』でも営業した方がいいので、一斉に休むことはできないが、交代で休む仕組みを作ろうと思う。


 俺の案としては 『9の日』と『0の日』を連休にして、それ以外に『5の日』も休日にして一週間十日のうちに三日の休日の体制を作りたいと思っている。

『フェアリー運行』のように部門によっては当てはまらないので、そこはローテーションで別日に休日を取るかたちになるだろうが……。


 これほど休む習慣はこちらの世界にはないようだが、俺的にはブラック企業にはなりたくないので率先して休む文化を作っていきたいと思っている。

 休日があって出かけてくれた方が、消費も刺激されるだろうしね。





  ◇





 もう夕方に近い時間になっているが、飛竜なので今から出発しても不自然ではない。


 俺、ニア、リリイ、チャッピー、サーヤ、ミルキーは飛竜に騎乗し、代官さんたちに見送られながら『マグネの街』を出発した。


 そして途中でサーヤの転移で、『マグネの街』のサーヤの家に戻ってきた。


 最初はそのまま『領都』に転移しようと思ったのだが、サーヤの家で武具作りをやることにしたのだ。

 それを終えてから『領都』に転移しようと思っている。


 いつものように、『家精霊』のナーナと相談しながら作ることにする。


 ナーナも考えてくれていたらしく、使う素材について提案してくれた。


 まず弓の弦については、蛇魔物の皮を細くなるまで練り込んで使うことにした。

 強いし弾力性があるので、細く練り込むことさえできれば最適とのことだ。


 大変だが地道に練り込むことにした。

 蛇魔物の皮を伸ばしながら、手で揉み込んで細くしていくのだ。

 それを三本作り、三つ編みのように編み込んでいく。

 そして更にそれを手のひらで板に転がしながら、細く練り込んでいくのだ。

 普通ならかなり時間がかかるし相当きつい仕事だが、限界突破ステータスのお陰で短時間で仕上げることができた。

 この練り込み作業は、冷静になって考えると……普通の人間が自分の腕力で行うことは、ほぼ不可能な気がする。

 俺のステータスだからできることで、普通はなにか道具を使って圧力をかけないと難しい作業だろう。


 弓本体は、コブラ魔物の肋骨を使うことにした。

 強度もあるし、ある程度の弾力も出せるので丁度いい感じだ。


 矢の方は、同じくコブラ魔物の肋骨の先の鋭利な部分を使って作った。

 矢尻と本体である矢柄が一体となった矢だ。

 羽根は、前にニアが倒した『コカトリス』の羽根を使った。


 この弓は、蛇魔物とコブラ魔物という二種類の蛇を使っているので『双蛇弓』という名前にした。

 矢は『破蛇矢』という名前にした。


 もう一つ、大型魔物用の特大の弓も作った。

 城壁の上に固定式で備え付けるような大型の物を、車輪付きで移動できるようにした。


 構造は、巨大なクロスボウのようになっている。

 弦を引いて固定し、巨大な矢をセットしてトリガーを引く形式だ。


 素材は基本的に『双蛇弓』と『破蛇矢』と同様の物を使用した。


 名前は『双蛇バリスタ』と『破蛇ロングボルト』にした。


 次に斧を作った。


 ゴリラ魔物の牙を使って斧刃を作り、反対側にはゴリラ魔物の奥歯を使ってハンマーを付けた。

 両刃の斧にしたのだ。まぁ片方はハンマーだけどね。


 柄の部分もゴリラ魔物の骨で作って、持ち手には蛇魔物の皮を巻き付けた。


 同様の構造で、長柄斧も作った。


 斧は『コングアックス』、長柄斧は『コングハルバード』という名称にした。


 他にも作ってみようと思った武具があったのだが、意外と時間がかかってしまったので、今日はここまでにした。


 『領都』に戻らないといけないからね。




読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。


次話の投稿は、7日の予定です。


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