223.いろいろ進めた、三日間。
資源調査という名目の川遊びをしてから四日目の朝、俺は久しぶりに『マグネの街』を訪れていた。
飛竜を手に入れたので、飛竜を飛ばしてきたというかたちで、堂々と短期間の移動ができるようになったのだ。
馬車で三日かかるような道のりも、飛竜を飛ばせば半日程度で着ける。
実はスキルで強化された俺達の飛竜たちは、全力を出せばもっと早く移動することもできる。
もちろん飛竜に乗ってきたふりをしているだけで、実際にはサーヤの転移で移動している。
今回『マグネの街』にきた目的は、サーヤが紹介したいという人物に会うことと、『領都』の商会事業立ち上げの応援にサーヤとミルキーに正式に出向いてもらうためだ。
すぐにとんぼ返りする予定なので、今回は俺一人できた。
形だけだが、サーヤとミルキー用の飛竜たちも連れてきた。
二人には今後頻繁に『マグネの街』と『領都』で活動してもらうことになるが、飛竜の存在で短時間での移動を誤魔化すことができる。
もちろん実際は、転移で移動するわけだが。
それにしても今日までの三日間は、怒涛のような三日間だった。
我ながらよく働いた三日間だったと思う。
この三日間は領城での会議もなかったので、商会の事業の立ち上げ準備などを中心に活動することができた。
もっとも午前中は予定通り、資源調査という名目の川遊びだったけどね。
残り三つの川の調査を行って、魚やエビなどの水産資源がどこも豊富であることが分かった。
ただ『大シジミ』は発見できなかった。
最初の川にしか生息していないようだ。
追加調査でその川には、かなり広範囲に『大シジミ』が生息していることがわかったので、十分特産品にできそうだ。
だがやはり長い目で考えると、養殖するのが一番いいと思う。
なんとか成功させたいものだ。
全ての川で、川海苔も見つかっているので、海苔の生産も大々的にやりたいと思っている。
『おにぎり』には不可欠だからね。
もう少し詳しく調査すれば、他の水産資源も見つかりそうな感じがする。
それに大きな川は四つだが、小さな川はまだいくつもある。
今後も継続して水産資源の調査をしていけば、小さな川で『大シジミ』が見つかる可能性もありそうだ。
ということで、なぜか小さな川もリストアップして定期的に資源調査を行うことになった……。
ただこれは……どう考えてもアンナ辺境伯やユーフェミア公爵たちが水遊びしたいだけだと思うけどね……。
なぜかこの資源調査は文官に任せないで、領主が自らやることになっているからね。
それから俺が潰した『正義の爪痕』の三つのアジトに囚われていた女性たちが、みんな領都に到着した。
最初の女性たちと同様に一旦領城で聞き取り調査をした後に、問題がなければ仮設住宅に移ってもらうかたちとなった。
そして聞き取りを終え、特に問題のある者はいなかったとのことで、皆無事に仮設住宅に移ることができた。
やはり新たな情報を得ることは、できなかったようだ。
ちなみに審問官として王都から派遣された第一王女のクリスティアさんは、尋問の仕事が終わったので王都に戻るのかと思ったが、しばらくの間滞在するようだ。
護衛のエマさんとともに、復興に協力するということで許可を得たらしい。
なんとなく……川遊びをしたくて残ったのではないかと思ってしまうのは……俺の勘ぐりすぎだろうか……。
だって二人とも、回を重ねる毎にハマってる感じだからね……。
それから俺は、頼まれていた新しい『ギルド会館』の建設を行った。
そして隣に『食肉処理場』と食肉の直売店も作った。
かなりの広さの土地をいただけたので、ソーセージの加工場も作ってしまった。
通りの反対側に大面積の広場を作ったので、『フェアリー商会』での屋台の出店や他の屋台の誘致も進めて、常に賑わう場所にしたいと思っている。
また広場の大きさが十分にあるので、前にリリイとチャッピーが大好評を博した『魔物の解体ショー』を定期的に開催しようと思っている。
集客イベントとして抜群だと思うんだよね。
解体を担当するのはリリイとチャッピー、そして領軍の有志にお願いすればいいだろう。
みんなノリノリでやってくれそうな気がする。
これらの建物の建設は、レントンにやってもらった。
レントンは領城の中では、もうその存在が解禁されて自由に動きまわっている。
というか……いつも休憩の度に、ユーフェミア公爵に拉致されている……。
そういう状況なのでレントンはもう盆栽を装うのはやめて、普通に動いてもらうことにした。
『トレント』という存在は珍しい存在ではあっても、存在自体は広く知られているし『始原の中庸生物』だから大きな問題にはならないだろう。
レントンを解禁すると、建設関係の荒業が堂々とできるので、いろんなことがやりやすくなるしね。
そして『ミミック』のシチミだけが解禁されなくてカバン状態なのも可哀想なので、この際シチミも『ミミック』状態を解禁することにした。
もう俺達の存在は悪目立ちを通り越しているので、この領にいる限りは……なんでもありな気がしてきている……。
将来この領を出て旅をする場合は、目立たないようにしたいが、この領では最早手遅れだからね。
俺の『フェアリー商会』の事業についても、この三日間でかなり準備を進めた。
丸ごと一ブロック提供してもらった『中級エリア』に、『フェアリー商会』の領都支店の本部の建物と、すぐに始めるいくつかの事業の拠点となる建物を建設した。
今後、この丸ごとの一ブロックを『本部ブロック』と呼ぼうと思う。
ちなみに『フェアリー商会』の本店は、あくまで『マグネの街』に置くことにした。
規模としては領都の方が大きくなるだろうが、あくまで領都は支店というかたちにした。
始まりの地である『マグネの街』を大切にしたいし、なによりも今更変更するのが面倒くさいからだ。
必要な機材や資材も、準備できるものは全て準備を終えた。
一番の問題は、人の雇用である。
いい人材を集めたい。
特に運営を任せられる人材が必要だ。
ただ俺の中では、人材の当ては既についていた。
『正義の爪痕』に囚われていた女性たちを、採用しようと思っているのだ。
特に最初に救出した女性たちは、『厚化粧の女』をあぶり出すためとはいえ、一人一人俺が個別に面接を行ったのだ。
真剣に話を聞いたので、大体の人柄や希望もわかっている。
『フェアリー商会』は『領都』においても、雇用創出のために多様な事業展開をしていくことになる。
彼女たちの希望に合った仕事が、何かしら提供できると思う。
そしてサーヤも同じようなことを考えていたらしい。
三箇所のアジトで領軍の迎えがくるまでの間、転移が使えるサーヤに女性たちの世話を頼んでいたのだが、サーヤはそれ以上のことをやっていたのだ。
なんと領軍がくるまでの間、一人一人と個別に面談をして心情調査や就職希望などの聞き取りをしていたらしい。
そして既に、どの事業部門に雇用したらいいかという当てはめまで終わっているようだ。
話を聞いた時は、「さすがサーヤ!」と言うほかなかった……相変わらず優秀すぎる!
もちろん囚われていた人達以外にも希望者は随時面接し雇用しようと思っているが、今の状態では圧倒的に女性が多い商会になりそうだ。
『マグネの街』でもそうだったが、仕事が見つけにくい女性を中心に雇用するつもりなので特に問題はない。
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