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220.凄い資源、見つけた!

 

 しばらくしてニアたちも帰ってきた。


 ニアはなぜか……超ご機嫌だ。


 てっきり先に食べていたことの文句を言われるかと思ったのだが……


 俺たちの前にくると、ニアの合図でリンが体内から綺麗な二枚貝を大量に取り出した。


 様々な色の光沢のある綺麗な貝だ。


 大きさはビッグサイズのハマグリぐらいある。


『波動鑑定』してみると……


 ————『大シジミ』と出た。


 どうもシジミの巨大化したもののようだ。

 シジミは川で漁れるからね。


 それにしてもこの色は……


 黒、白、ピンク、赤、そして七色に輝くものもある。


 ニアが教えてくれたが、色によって呼び方があるようだ。


『黒シジミ』は、吸い込まれそうな綺麗な漆黒だ。

『白シジミ』は、真珠のような輝きがある。

『桜シジミ』は、光沢のある上品なピンクだ。

『紅シジミ』は、発色の鮮やかな赤だ。

『虹シジミ』は、光の加減で発色が変わり、七色に移り変わるように見える。


「えへん! リンと一緒に潜水の練習をしてたら、川底にいっぱい生息してたのよ! 見つけた時はびっくりしたわ。

 大昔は結構いたようだけど、今では獲れる場所は限られているはずよ。

 大シジミは、味は最高だし、貝殻は高価な装飾品になる極めて有効な資源よ!

 これを見つけちゃうなんてさすが私ね……ムフフ……妖精女神の実力ってやつよね……ムフ」


 ニアは、鼻息を荒くして胸を張った。

 なんか胸を張りすぎて、後ろにのけぞって変な感じになってる……久しぶりの残念感が……。


「なんてことでしょう……。 『大シジミ』それも色付きがこんなに……。初代様の頃には多く漁れたと文献にありました。その後乱獲され、この領にはもういないと思われていたのです。いつの間にこんなに……」


 アンナ辺境伯は驚きつつも感動し、途中から言葉が続かなくなっていた。


 どうやら二人の話を聞く限り、資源調査という名目通り……本当に凄い資源を引き当てたようだ。

 これは「ニア、グッジョブ!」と言うしかない!


 ニアの話だと、文献によれば他にも色のバリエーションがあるようで、もっと採取すれば他の色が出てくる可能性があるとのことだ。


 もしこの貝が大量に獲れるようなら、貝殻を加工して装飾品を作れるようになる。

 現状流通している装飾品はあるが数が少なく、富裕層や貴族の間で高値で取引されているらしい。


 アンナ辺境伯もユーフェミア公爵も目を輝かせて、完全に特産品にできると太鼓判を押した。


 問題はそれだけの量があるかどうか……ということのようだ。


 詳しい調査が必要だが、たとえ今の時点である程度の量があったとしても、また乱獲してしまえば激減するのは間違いない。


 そこで俺は、少し時間がかかるかもしれないが、目先の利益よりも長く資源として活用できるように養殖の研究をすることを提案した。


 この『大シジミ』を養殖することは、誰も考えていなかったようだ。

 一瞬みんなキョトンとしたが、なぜか全員で顔を見合わせて大笑いしだした。

 そしてなぜか全員でハモって「さすが!」という言葉を俺に発した。


 そして、よくわからないままに養殖事業も俺に一任されてしまった。

 すぐには成功しないかもしれないけど、やり甲斐があるし面白そうだ。


 この川は『フェアリー牧場』の予定地に面しているので、『フェアリー牧場』に養殖場を作ってみようと思う。



 この貝は熱に強く、焼いても余程の高温でない限りは変色しないとのことだ。


 俺は食欲に負けて、網焼きすることにした。


 周りの皆さんも気持ちは同じようだ。

 ゴクリとつばを飲み込んでいる人が何人もいる……。


 このぐらい大きければ、ハマグリのような感じで食べれると思う。


 本当は醤油がほしいところだが、無いので塩で我慢する。


 焼き場に網を置いて、『大シジミ』を並べる。


 ……確かに熱を加えても、光沢は落ちないし色調も変わらないようだ。


 ニアのうろ覚えの知識だが、熱を加えると少し柔らかくなって、加工がしやすくなると本に書いてあったそうだ。


 そして……貝が開いた!


 俺は軽く塩を振って……口に入れてみる!


「う、うまい! うまーーーーーーい!」


 久しぶりに叫んでしまった!


 これは美味い!

 超高級なハマグリ以上の味だ! シジミの味とは思えない。

 やはり大きくて肉厚だからか……味が濃厚だし食べ応えもある……なんか凄い!


 これは食べ物としても、凄すぎるじゃないか!


 その上、貝殻で高級装飾品を作って特産品にできるなんて……

 夢のような水産資源だ! 素晴らしすぎる!


 みんな待ち切れない状態なので、俺はすぐに振る舞った。


 そして皆さんの反応は……


 言うまでもなく凄かった!


 熱さにホフホフ言いながら、それぞれに何か叫んでる感じだった。


 まぁとにかくみんな大満足、そして感動の嵐だった。


 そして今日の記念に、皆それぞれ好きな色の貝殻を持ち帰ることになった。






  ◇






 俺たちは領城に戻って、そのまま会議室に直行した。


 予想通り議題は、再開発計画の追加修正となった。


 領都に流れている四つの川の周辺を、再整備するのである。

 遊歩道を作ったり、小川を引いて子供たちの水遊び場も作ることになった。


 前回俺が提案した『四つのブロックに分けて、各ブロックに大きな広場を作る』という構想とリンクさせ、その広場に小川も通し、子供たちの水遊び場や憩いの場所を作ることにした。


 それとは別に何箇所か大きな池を作り、釣りができる場所も作ることにした。


 普通に川で魚を釣ろうと思えば釣れるので、池を作る必要は無いともいえる。

 だが水場が多い方がいいし、場合によっては柵で区切って特定の魚を養殖してもいいと思っている。

 そして釣り堀形式で楽しむというのも一つの手だ。


 本来なら上水道や下水道も整備した方が都市計画としては良いのだが、全てが更地というわけではないので、そこまでは難しい。

 そして地下水も豊富で、井戸水での生活に特に問題がないので無理に作る必要もないと思える。

 井戸水を汲み上げること自体は重労働なようだが、使用量の多いところは清潔な樽に溜める仕組みができているので、あまり大きな問題ではないようだ。


 それから領都の外側にも四つの川は続いているわけで、水産資源を活用しようと思えば川沿いに活動範囲を広げればよいということになる。


 その範囲も含めて、先程の川と残り三つの川についても詳しい調査を行うことになった。


 ということで、なぜか明日から三日連続で残り三つの川の資源調査を行うことになった。


 そして全員ウキウキ顔になっている……水遊びにハマったようだ……。


 先程の『大シジミ』のように有望な資源があるのなら、キャラバン隊を組んで泊まりがけで水産資源を採取しに行くこともありかもしれない。


 ただ距離が遠くなるほど鮮度落ちの問題が生じるので、スキルが使える俺たちが直接やるならともかく普通の人を雇用して行うのは厳しいかもしれない。


 いずれにしろ『フェアリー商会』に水産部門を作ろうと思っている。

『大シジミ』の養殖の研究もしなきゃいけないからね。

 場合によっては川に何箇所か漁場を作って、そこを回りながら水産資源を確保するやり方もありかもしれない。


 そういうやり方なら一つの場所で乱獲しないので、永続的な水産資源の確保という意味ではより優れていると思う。








読んでいただき、誠にありがとうございます。

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次話の投稿は、28日の予定です。


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