193.テロの、波状攻撃。
なんと『死人魔物』の数が、急激に増えている!
いったいどこから……
え! ……上から降ってきてる!
空に黒い飛竜が、十体程飛んでいる。
飛竜から人が飛び降りて、空中にいる間に『死人魔物』に変わって着地しているのだ。
まるで魔物爆弾じゃないか!
おそらく飛竜を駆っているのは、『正義の爪痕』の連中だろう。
どこかに潜伏していたか、もしくは飛竜のスピードを考えるとセイバーン公爵領から一気に飛んで来たのかもしれない。
折角立て直していた公爵軍が、また混乱状況に陥っている。
まったく……次から次へと……テロの波状攻撃かよ……。
何が何でも、ユーフェミア公爵を葬るつもりのようだ。
そんな事は、絶対にさせないけどね!
あ! また新たに戦場に近づく者が…………
…………だが……今度は味方のようだ!
あの赤い飛竜……どうやらシャリアさん達が駆けつけたらしい。
飛竜から一人飛び降りて、『死人魔物』を両断した!
ユリアさんのようだ。
シャリアさんは、そのまま敵の飛竜に向かっている!
いくらシャリアさんでも、空中で一対十は厳しいだろう……
「フウ、あの飛竜達を頼む! シャリアさんの援護に行って! 」
俺は『蛇魔物』と格闘していた『スピリット・オウル』のフウに、救援指示を出した。
フウは素早く『蛇魔物』にトドメを刺すと、すぐに飛び立った!
俺もすぐに、公爵軍の方に走り出す!
『死人魔物』が二十体位増えているようだ。
まずい!
深手を負った兵士が何人かいる……。
「千手盾、傷ついた兵士を守れ! 」
俺はそう命じながら『千手盾』を公爵軍の方に投げた!
戦場近くの地面に突き刺さった『千手盾』は、盾の下の部分から腕が六本飛び出し、昆虫の足のようになって走り出した。
傷つき倒れている兵士の前に着くと、盾から無数の腕を出し『死人魔物』にパンチを繰り出している。
これであの兵士達も、大丈夫だろう。
俺は『魔法の鞭』を取り出し、走りながら構える。
『死人魔物』に向けて鞭を放とうと構えた時———
……視界の隅に落下するシャリアさんを捉えた。
まずい!
テロリスト達の攻撃を受けてしまったようだ。
俺は全力でシャリアさんのもとに飛び込んだ———
ふう……ギリギリ間に合った!
スライディングキャッチで、落下してきたシャリアさんを受け止める事が出来た。
シャリアさんは、体に力が入らないようだ……。
一体どうして……
……よく見ると、首元に小さなトゲのような物が刺さっている。
これが原因のようだ。
俺は素早く抜き取った。
シャリアさんの騎乗していた飛竜も落下して、ぐったりしている。
攻撃を受けた傷と、落下時の骨折などで瀕死の状態のようだ。
このままでは死んでしまう……
俺はシャリアさんを抱き上げ、落下した飛竜の下に駆け寄り、『癒しの風』をかけて回復させた。
シャリアさんにも、『麻痺解除薬』を口に流し込んであげた。
これで大丈夫だと思うが……
「千手盾、シャリアさんを守れ! 」
俺はそう命じ、『千手盾』にシャリアさんの護衛をさせた。
そして空のテロリスト達に目を向ける———
フウが一体で奮戦中だ!
『共有スキル』でセットしてある『状態異常耐性』スキルがあるから、麻痺攻撃は大丈夫なようだが十体に囲まれている。
フウなら力任せでも勝てそうな気がするが……なんとなく……攻めあぐねているようだ。
(マスター、この飛竜達は首輪で命じられているだけ! 殺しちゃかわいそう! )
俺の視線を感じたのか、フウが訴えてきた。
まさか『支配の首輪』……
まだわからないが…… いずれにしろどうにかしないと……
そう思って考えをめぐらせていると、テロリスト達に高速で近づく小さな人影が……
———ニアだ!
『絆通信』を使って、ここにいるメンバーをオープン回線で繋げているから、フウの話が聞こえたようだ。
「あれは……『支配の首輪』じゃないみたい! 『隷属の首輪』よ! 本で見た事がある。人を強制的に奴隷にする首輪よ。それを飛竜に使っている。意識は奪われてないけど、命令に従わないと激痛が走るはず。私に任せて! 」
ニアはそう言うと、一人天高く舞い上がった!
(フウ、やられたふりをして、下に落ちながら前方に脱出して! )
(わかった! )
オープン回線で、二人のやりとりが聞こえる。
フウの脱出を見計らっていたニアが、構えた腕を振り下ろす———
風魔法の『突風』を使ったようだ。
ニアの下方にいるテロリスト達に向けて、強烈な風が吹き降りる!
風圧に耐えきれず、飛竜達は騎乗していたテロリストごと地面に叩きつけられた!
一瞬で、飛竜もテロリストも無力化されてしまった。
かなり手荒な方法だけど……
飛竜達……死んでないよね……テロリストはどうでもいいけど……。
俺は素早く近づき、『状態異常付与』スキルでテロリスト達に麻痺と睡眠を重ね掛けした。
そして『捕縛』スキルを使って、一気に縛り上げた。
落下時に骨折している者がほとんどなので、一応回復させた。
飛竜達も落下時に怪我をしているので、『癒しの風』をかけてあげる。
そして『隷属の首輪』に触ってみる……
…………………………
『支配の首輪』と違って、俺が触っても壊れない。
無理矢理壊してもいいが……
怪我しても困るので、普通に外してみる…………おお、外せるようだ。
俺は、素早く十体の飛竜の『隷属の首輪』を外してやった。
振り返ると巨大魔物軍団を倒した仲間達が、公爵軍の方に救援に向かっている。
公爵軍もユーフェミア公爵、ユリアさん、ミリアさんを中心に奮戦しているが、一番はリリイとチャッピーだ。
闘いながら、傷ついた兵士達をフォローしているようだ。
縦横無尽に動いている。
そして巨大魔物軍団を倒した仲間達の合流で、一気に『死人魔物』は殲滅された。
全ての魔物、テロリストは片付いたと思うが…………
安心してフラグになると嫌なので、しばらく注意深く周囲を警戒した。
…………なんか近づいてくる———
……いや、大丈夫だ!
近づいて来るのは、領都からの応援部隊だった。
…………本当にテロ攻撃は終わったようだ。
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