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191.テロ、再び。

 翌日、ベッドから起き上がったばかりの俺に、突然スライム達から念話が入った。

 この近郊を巡回警備しているスライム達だ。


 ————まずい!

 魔物が出たらしい。


 突然魔物が現れて、兵士の一団に襲いかかっているようだ。


 どうも人間のような形をしているらしい。


 もしかして……また『死人魔物』なのか⁈


 そして襲われているのは、おそらくユーフェミア女公爵の一団だ。

 スライム達が南側から来てる一団と言っていたからね。


 スライム達は、今一緒に戦ってくれているようだ。


 精強な軍隊のようなので大丈夫だと思うが、『正義の爪痕』が絡んでいる可能性が高いし、何が起きるか分からない。

 応援に向かった方が良いだろう。


 俺はニアとリリイとチャッピーを起こし、急いで『家馬車』に向かった。

 早朝の今なら人通りも少なく、馬車を飛ばしても大丈夫だろう。


 丁度、仕事を始めたメイド達がいたので、アンナ夫人達への伝言を頼んだ。


 南門までオリョウが爆走した。

 門番の兵士達に事情を説明し、応援部隊を集めるように依頼した。

 念の為の処置として、魔物の侵入防止の為に、閉門するようにもお願いした。


 俺に指揮命令権があるわけではないが、ニアも一緒にいたせいか素直に従ってくれた。


 オリョウが再度爆走する。全力疾走だ!


 ———見えてきた!


 やはり人型だ! 『死人魔物』で間違いないようだ。 


 蛇の化物と化した者が多いが、他の魔物の化物もいる。


 …………凄い数だ。三十体くらいはいる。


 あの薬……深紅の丸いビー玉のようなものを、事件後の打ち合わせで『死人薬』という呼称に決めていたが……。

 やはり『正義の爪痕』は、『死人薬』を量産する力を持っているのだろうか……。


 ちなみに事件後の打ち合わせで、『死人魔物』になった者の呼称についても決めていた。

 魔物化の元になっている生き物の名称と合わせて、例えば蛇の化物なら『蛇死人』と呼称する事にしたのである。


 周りに一般人はいなかったようなので、前回のように一般人に強化薬と偽って飲ませたとは考えにくい。

 おそらく付近に潜んでいた『正義の爪痕』の工作員が、自爆テロ的に薬を使ったのだろう。


 標的はユーフェミア女公爵に違いない。


 自爆テロなんて……


 まったく……狂信者の考える事は理解できない。

 命を捨ててまでして、何をやろうというのだろうか……。


 『蛇死人』が多いが、俺が見たのと違うタイプがいる。

 腕が普通の蛇ではなく、コブラのようになっている者がいる。さしずめ『コブラ死人』と言ったところか……。


 その『コブラ死人』が、両腕のコブラの口から毒霧を吐いている!


 見たところ即死効果は無いようだが、殆んどの兵士達が毒に侵されている。


 一緒に戦っているスライム達は、『共有スキル』で『状態異常耐性』を持っているから大丈夫だが、兵士達はまずい状態だ。継続ダメージを受けている。


「リリイとチャッピーは、兵士達に解毒薬を飲ませるんだ。他の皆は、回復と……スライム達と協力しながら防衛陣地を作ってくれ! 」


 みんな俺の言葉に首肯しながら一斉に動き出す。


 毒を受けているにもかかわらず、公爵軍の兵士達がかなり奮戦している。


 必死で戦い『死人魔物』を倒している。


 そして一番派手に戦っているのが、なんと女公爵だ。


 剣二本で蛇腕を切り刻んでいる。

 二刀流のようだ!


 かなりの強さだ……まるで乱舞のような動きで斬りまくっている!


 俺は緊急事態なので、普段控えている『波動鑑定』でレベルの確認をした。

 安全の目安に、知っておく必要があるのだ。


 なんと………レベル48だ!


 これって……人族の世界じゃ騎士団長クラス以上なんじゃないの……?

 文武両道というやつか……美貌まであるし……恐ろしすぎるだろ!


 そしてもう一人、若い少女が奮戦している。

 薄青色の髪をショートカットにしたボーイッシュな感じの少女は、槍を自在に操っている。

 おそらく彼女は、セイバーン家三女のミリアさんだろう。


 昨日シャリアさん達が、ユーフェミア公爵と一緒に成人したての妹ミリアさんが向かっていると言っていたからね。


 彼女のレベルも緊急事態なので確認させてもらうと……34だ!


 まだ十五歳なのに34もあるのか…… 彼女もかなり強いようだ。

 簡単にやられる事はないだろう。

 ナーナ顔負けの槍捌きだ!


 セイバーン公爵家……女傑揃いなのか……恐ろしすぎるだろ……。


 でもよく考えたら……リリイとチャッピーも八歳でレベル35だから驚いてる場合じゃ無いけど……。

 もっともリリイ達は環境が特殊だからなぁ……。


 やっぱり魔物と戦う機会の少ない普通の人族としては、レベル30以上はかなり破格のレベルだと思うんだよね。

 公爵家の女性達は、兵士並みの訓練と実戦をしているのかもしれない……。


 そして護衛部隊の兵士達……おそらく近衛兵だと思うけど、彼らも高レベルだ。

 ほとんどの者はレベル30代後半、40を超えている者もいる。


 毒攻撃にやられていながら、通常の魔物より強いであろう『死人魔物』と互角に戦って見せている。


 そうだ!

 この人達は『死人魔物』が初見のはず。

 弱点を知らない可能性が高い!


「皆さん! この化物は頭が弱点です! 頭を潰さない限り倒せません! それから体制を立て直す為に防御陣地を作りました。スライム達のところまで下がってください。解毒薬を配ります! 」


 俺は思いっきり声を張り上げたので、確実に全員に聞こえたはずだ。

 振り向ける者は、一斉に振り向いたからね。



 毒霧を出している『コブラ死人』がまだ残っているらしく、毒が消えない。


 せっかく解毒しても、また毒に侵される者が続出している。


 早く『コブラ死人』を倒してしまわないと……


 どこだ…………

 …………………いた!


 足を切断されて地面に転がったまま、毒を吐き続けていたようだ。


  一番近いのは…………


「ニア! 右側後方に倒れている『コブラ死人』を倒してくれ! 」


「オッケー! 」


 ニアは低空飛行で急接近するとそのままの勢いで、スライディング気味に『如意輪棒』を振り抜いた!


 ———ボウンッ


 ニアのフルスイングは、『コブラ死人』の頭部を砕き飛ばした!


 ピクシーホームラン……今日もナイススイングだ!


「うん、いいスピードが出てた! フフフ……トリプルスリー達成も近いわね! 」


 ニアがピクシーホームランの余韻に浸りながら、そんな事を呟いていた。


 トリプルスリーって……


 俺の知ってるトリプルスリーは、三割、三十本、三十盗塁のはずだけど……打率、ホームラン数、盗塁の事なんだけど……。


 絶対違うものになってるよね……


 情報元は種族固有スキル『ランダムチャンネル』で色々な世界の情報が入る『ライジングカープ』のキンちゃんだろう。

 歪んだ情報が伝わっている気がする……


 まぁどうでもいいけど……今度ゆっくり何がトリプルで、何がスリーなのか確認しておこう。



 ニアが倒したので、毒霧は晴れて来ている。

 もう大丈夫だろう。


 そう安心したのが、フラグだったかのように……突然、地響きが聞こえてきた————






読んでいただき、誠にありがとうございます。

ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。

評価していただいた方、ありがとうございます。

誤字報告していただいた方、ありがとうございます。助かりました。


次話の投稿は、30日の予定です。


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