186.究極級は、伊達じゃない!
俺は、サーヤの転移で大森林の迷宮前広場に来ている。
先程手に入れた『究極級』の『魔盾 千手盾』を試す為だ。
何が起こるか分からないので、大森林の迷宮前広場近くに俺用に作ってある実験広場でやるつもりなのだ。
試しにサーヤに魔力を流してもらう。
………………。
何も起きない。
ただの頑丈そうな重い盾という状態だ。
次に俺が魔力を流してみる……
おお……すごい勢いで魔力が消費されている……
というか……吸われている気がする。
同時に自分のステータス画面を開くと、急激に魔力が減少しているのがわかる。
え、……俺の限界を突破した膨大な魔力の半分近くが失われた……。
これじゃ普通の人には、絶対使えないじゃないか……
そして盾が発光しだした……
まさか……爆発したりしないよね?
お……大丈夫かな…… 光が落ち着いてきている。
……発光が終わり、普通の盾の状態に戻ったようだ。
ただ全体的にグレーだった盾が、朱色に変化し金色の縁取りがされている。
そして凄く軽くなってる。
大盾なのに、重量をほとんど感じない。
「あるじ殿、僭越ですが……おそらくその魔法の武具は、魔力を蓄えて稼働するタイプの武具と思われます。魔力が尽きていた為に、休眠状態だったのではないでしょうか。古い時代にそういうタイプの武具があったようです」
『アラクネ』のケニーが、そんな事を教えてくれた。
なるほど……
ということは、今は稼働状態になったという事なのか……
だったら本当に腕が出るのか確かめてみよう!
———腕よ出ろ!
念じた途端、盾から一気に朱色の腕が十本飛び出した!
人の腕の形でボクシングのパンチのような動作を繰り返している。
凄い!
なんか凄いなぁ……。
「あるじ殿、もしかすると意思の力で動きをコントロール出来るタイプかもしれません」
ケニーがそう指摘してくれたので、試してみる。
おお! 腕の動きがコントロール出来るようだ!
腕同士でジャンケンとか出来ちゃうんですけど……。
しかも腕の出る位置も調整出来る。
本当に千本出るかはわからないが、これは凄い!
そうだ! いい事を思いついた!
「向こうに走れ! 」
俺がそう命じると、盾の下の部分から腕が地面に向けて左右三本ずつ合わせて六本飛び出した。
それが昆虫の脚のように動き、自走しだした!
俺は思わず吹き出してしまった。
盾が走っている!
面白すぎるんですけど……。
「使用者を認識する機能があるのかもしれませんね」
サーヤがそんなこと言ったので、サーヤにも使ってみてもらう。
………………。
ダメだ。腕は出て来ない。
「サーヤの指示に従い、サーヤを守れ! 」
試しに俺がそう命じてみると……
サーヤの念に応じて腕が出た。
少しだけサーヤの魔力を消費したらしい。
どうも俺が認めた者の指示には従うようだ。
サーヤから一度盾を戻してもらい、もう一つ実験してみる。
「サーヤのところに行って、守るように手を広げろ!」
そう命じると、自走してサーヤの近くに行き、サーヤを守るように無数の手を伸ばした。
凄い!
凄いじゃないか!
俺が指示した相手を守ってくれるようだ。
ただ手が出すぎていて……イソギンチャクみたいで……超気持ち悪いんですけど……。
凄いものを手に入れてしまったようだ!
実験が一段落したところで、ケニーからいくつかの報告があった。
大森林の増強計画は順調に進んでいて、繁殖できる者達は数を増やし、連れてきた生き物達も何割かは既に浄魔になっているようだ。
途中から来ていた『ドライアド』のフラニーからも、霊域で霊獣が誕生しているという報告を受けた。
霊域も大森林も順調に防衛体制を増強出来ているようだ。
そして、みんな相変わらず楽しく過ごしているらしい。
『ミミック』達の『宝物召喚』も毎日のお楽しみイベントとして、みんな楽しんでいるそうだ。
一番盛り上がるのは、出た宝物が欲しい者達で行うジャンケン大会のようだ。
ジャンケンは俺が教えたのだが、手がない仲間達の為に札を作ったので誰でも参加出来るのだ。
かなり白熱するらしい。
出る宝物も回を重ねる毎に、多種多様になっているようだ。
俺に特別に報告を入れる程の凄い物は出てないようだが、面白い物はそれなりに出ているそうだ。
ここ数日で種も出ていたようで、俺に渡す為に保管してくれていた。
これは……どう見てもスイカの種だ!
ヨッシャー!
スイカが食いたかったんだよ!
もう一つは……見た目だけではわからない。
ウリ科のタネである事だけはわかるが……。
『波動鑑定』してみると……
おお! メロンの種だ!
凄い!
これでスイカもメロンも食べれるじゃないか!
『宝物召喚』優秀すぎるだろ!
俺は、今後種が出た時は俺の分をいくらか残し、残りを大森林と霊域に植えてるように頼んだ。
『ドライアド』のフラニーに任せれば問題ないし、みんなで参加する栽培イベントにしたら楽しいと思う。
このスイカとメロンの種も、霊域と大森林に植えるようにフラニーにお願いした。
『フェアリー農場』と『フェアリー牧場』にも比較の為にも植えようと思う。
後でミルキーに種子を渡して、手配してもらおうと思っている。
ちなみにシチミも毎日『宝物召喚』をやってくれている。
実は、かなりのお宝が一定の確率で出ている。
いくつかは、希望する者や相性が良さそうな者に渡してあるので、今後お披露目する事もあるだろう。
シチミの『宝物召喚』で出た物を売却する気はないが、もし売ればそれだけで十分食べていけるような物が出ているのだ。
この前なんか、そのものズバリ宝箱が出てきて金貨が大量に入っていたからね。
ただ古い時代の金貨で、普通には使えそうになかったのでお蔵入りになっているが……。
ケニーからの最後の報告は、白衣の男についてのものだった。
潜伏している迷宮の監視をスライム達が続けてくれているが、相変わらず表立った動きは見られないようだ。
ただスライム達の報告によれば、カラスが何羽か出入りしているらしい。
カラスというと、悪魔達がカラスに変化していたから悪魔が増えているのかと思ったが、違うようだ。
『使い魔』ではないかとの見立てだ。
『使い魔』のカラスを増やして、送り出しているのではないかとの事だ。
『使い魔』と視覚や聴覚を共有出来るので、各地の情勢を探っている可能性があるとの事だ。
だとすると……また何か悪企みをしているのかもしれない。
やはり早くなんとかしないと……
心に刺さったトゲのようなものが、俺を不快にさせる。
もういっそ、一か八かで突入したい気持ちに駆られるが……
焦りは禁物なので意識の力で、はやる気持ちを抑え込んだ。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ブックマークしていただいた方、ありがとうございます。
評価していただいた方、ありがとうございます。
感想いただいた方、ありがとうございます。
次話の投稿は、25日の予定です。
もしよろしければ、下の評価欄から評価をお願いします。励みになります。
よろしくお願いします。




